大学院ボクサー鬼頭茉衣「研究者になるために必ずオリンピックに出たい」

写真提供全て FUKUDA NAOKI

ボクシング競技の東京五輪に向けてのアジア予選が、ヨルダンの首都アンマンで開催されている。

本日初戦を迎えるのが、女子ウェルター級(69kg)代表の鬼頭茉衣(中京大大学院)だ。

鬼頭は中京大大学院へ通い社会学の研究をしながら、東京五輪を目指している。五輪予選に向けて単独インタビューした。

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きっかけはテレビ番組

ーーー:ボクシング歴は何年になりますか。

鬼頭:5年目になります。

ーーー:ボクシングスタイルは、右構えのファイターでしょうか。

鬼頭:ファイターです。

ーーー:今までの成績は。

鬼頭:何年前かに愛媛の全日本と前回の全日本で優勝しただけで、それ以外はずっと3位ぐらいです。その間は階級も変えたりしていました。

ーーー:ボクシングを始めたきっかけはありますか。

鬼頭:ずっとバスケ部で、高校で引退して、大学で何か新しいスポーツをやろうかと思った時に、テレビで女子ボクシングを見ました。

性格的にこれは向いていそうだと思って、始めました。

ーーー:誰の試合を見たのですか。

鬼頭:テレビ番組の『アンビリバボー』で女性格闘家の特集みたいなものを見ましたね。

ーーー:ではそれを見て、ビビっと来たわけですね。

鬼頭:はい。

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自分のスタイル

ーーー:最初に始めたのは、部活ですか。

鬼頭:最初はジムでした。

ーーー:なるほど。これまでのボクシングの経歴はどのような感じでしょうか。

鬼頭:大学で始めて、最初の年に初めて全日本に出ましたが、勝てなくて…。でも「次こそは」と思って、愛媛の全日本選手権で優勝しました。

その後、もっと強い階級をと思ってライト級にいきましたが、ライト級では勝てませんでした。

始めた時は何も分からず一生懸命練習をしていましたが、ある程度レベルがついてくる中で、指導方法を疑問に思うようになりジムを辞めました。

そのあとは三好高校というところで練習していました。そこで豊田大先生という監督に出会って、すぐに結果が出ました。

ーーー:自分のボクシングの強みは何かありますか。

鬼頭:どんどん前に出て、気持ちが強いところだと思います。

特にパワーがあるとか、スピードがあるとか、技術があるわけではありません。

でも打たれても怯まないとか、気持ちの強さもあると思うので、それで何と戦えていると思います。

ボクシングは研究に似ている

ーーー:大学院に通うインテリボクサーですからね。

鬼頭:いいえ、そんなことはないですが、「考える」ことはすごくやります。感覚的なところは全然ないので、すごく考えます。

豊田先生とも、なぜその動きが必要なのか、などと話ができるので、そういう考えてやれるところも、すごくいいです。

ーーー:では頭ごなしに言われるということはなく、意見は大事にしてもらっているのですね。

鬼頭:そうです。納得しないと嫌です。自分が納得してやれて、理解してやれている分、身に付くのも速いです。そういう対話はすごく大事です。

ーーー:ボクシングの魅力はどういうところですか。

鬼頭:手で相手を殴るだけですから単純ですが、すごく考えたり、駆け引きをしたり、とても頭を使うところではないでしょうか。

ーーー:研究に似ていますか。

鬼頭:すごく似ています。

ーーー:そういう、考えて、熟考して。

鬼頭:なぜそうなるのか、とか、そういうことをすごく考えるのが好きです。そういうところが魅力かもしれません。

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恩師との出会い

ーーー:今まで挫折や苦労はありましたか。

鬼頭:昔(通っていたジム)の環境ですかね。指導も昔ながらで、「水を飲んでは駄目」とか、色々ありました。

ーーー:そこから変わったのですね

鬼頭:(ジムを)辞めたくても、アマチュアは基本、部活動です。

もう大学生だったので、今さらどこかに移るために入学などできないし、もう辞めるしかないのかなと思っていました。

その時は本当にどん底でした。結局このまま勝てずに終わるのかと思っていました。そんな時、豊田先生に出会って救われました。

ーーー:ではその先生にも恩返ししたいと。

鬼頭:そうです。(その思いが)強いです。

ーーー:逆に、今まで一番うれしかったことは何かありますか。

鬼頭:やはり先生と出会って全日本で優勝したことです。これからの試合で勝てれば、どんどん塗り替えていくと思いますが、今はこの前の全日本で勝ったことが一番うれしいです。

ーーー:楽しくなってきた感じですか。

鬼頭:楽しいです。最初に始めたころは楽しかったですが、もうどんどん嫌いになって、本当にボクシングが嫌いで、もうやりたくないなと思っていた時もありました。

でも先生に出会ったので、そこからまたすごく情熱が戻ってきて、今はすごく楽しいです。

必ずオリンピックに出たい

ーーー:自分にとってオリンピックとはどんなものですか。

鬼頭:最終的には研究者になりたいと思っていて、自分が今指導していただいている指導教官もオリンピックの研究をされている方です。

でも、オリンピックは誰でも行けるわけではないじゃないですか。

研究者だから「研究したいので」と言って、オリンピックへ行けるわけでもないです。

どんな理由があろうと絶対に無理なのです。だから、自分の将来のためでもあるし、自分の好きなことだから、叶えたい夢でもあるし、周りへの恩返しでもあります。

本当に人生の全てと言えるくらい、今はすごく熱い思いを持って取り組んでいます。

ーーー:最後に今後の目標などはありますか。

鬼頭:自分はまだキャリアも浅いですし、まだまだ全然成績も収めていないので、勝てる、勝てないはまだ分からないですが、一戦一戦全力でやって勝つことです。

「行けたらいいな」とは思っていないで、行くつもりでやっているので、必ずオリンピックには出たいです。

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鬼頭茉衣(きとう・まい)

1997年生まれ。愛知県みよし市出身。テレビでボクシングを見て大学生でボクシングを始める。現在は中京大学大学院へ通い社会学の研究に励む。新たな指導者に出会い、2019年の全日本選手権で優勝。ボクシングのかたわら、学者を目指している。