3階級王者の弟を持つ田中亮明「東京五輪は出場しないといけない」その理由とは
ボクシング競技の東京五輪に向けてのアジア予選が、ヨルダンの首都アンマンで開催されている。
日本選手団は男子6名、女子5名の選手が本戦出場を目指し、決戦の舞台に立つ。
本日初戦を迎えるのが、フライ級代表の田中亮明(26=中京高校教員)だ。田中は、弟に3階級王者の田中恒成(24=畑中)を持つ。
東京五輪に向けて、単独インタビューした。
3階級王者の弟・恒成の存在
ーーー現在は教員をされていますね。
田中:そうです。中京学院大学附属中京高校です。
ーーーボクシングの戦績はどれくらいでしょうか?
田中:だいたい110勝ぐらいで、25敗ぐらいです。2019年は全日本選手権で優勝し、2015年、2016年も日本一になりました。
ーーーボクシングを始めたきっかけを教えてください。
田中:もともと兄弟で空手をやっていたのですが、最初は弟(※)が「ボクシングをやってみたい」と言ったので始めました。
空手ありきの状態でボクシングをやってみるかという感じで、二人で多治見のイトカワボクシングジムに行って始めました。
※弟の田中恒成は、無敗の3階級王者(2020年3月1日現在)
ーーー弟さんはどういう存在ですか。
田中:昔は何とも思っていませんでしたが、彼がプロの道に進んだ今は、弟ながら尊敬すべき人だと思っています。
ーーーいい刺激になっていますか。
田中:そうですね。
ーーー亮明選手がオリンピックに挑戦できることになり、恒成選手がとても喜んでいました。結構、連絡を取ったりしますか。
田中:いえ、全くしないです。ゼロに近いですね。
勝負強さが生きた全日本選手権
ーーー昨年の予選(全日本選手権)はどうでしたか。勝ち抜く自信はありましたか。
田中:全日本は2016年に優勝してから全然いい成績を残せていませんでした。
ただ、勝負強さは持っています。昨年の全日本では、その勝負強さが生きたという感じがしました。
ーーーボクシングはこれまで10年以上されていますね。ボクシングの魅力は何でしょうか。
田中:魅力は……。
ーーーあれ。ボクシングは好きですか。
田中:ボクシングは好きです。アマチュアボクシングが好きで、単純であって奥が深いと思います。
ーーー今、学校の先生をされていますが、ボクシングと勉強を教えるということに何か共通点はありますか。
田中:ボクシングと教師ですか。今はお休みを頂いて通信制の教員をやっています。
あまり授業などはしていなくて、学校にいるときも事務的なことをやっていますので、どうですかね。
ーーーなるほど。何かボクシング以外に好きなことやハマっていることはありますか。
田中:特にありません。ただ、焼肉が好きなので、美味しいお店を食べログとかで調べて食べに行くぐらいですかね。食べ歩きは好きです。
ーーーそうですか。では、いい試合をして、勝って、いいお店へ行きたいですね。
派手さとパンチ力に自信
ーーー東京五輪目前ですが、周囲の期待は大きいのではないですか。
田中:期待は大きいですね。(周りが)本当に楽しみにしてくれているので、出場しないといけないと思っています。
ーーー東京五輪への思いは。
田中:東京に限らず、場所がどこであろうとオリンピックに出たいと思っています。
弟は「世界チャンピオンになる」と言って、本当に世界チャンピオンになりました。
僕も「オリンピックに出る」と言ってここまでやってきたので、言ったことぐらいは達成しておかなければと思っています。
ーーー海外での合宿もありましたが、ご自身のボクシングと海外の選手との差はありますか。
田中:自分のボクシングと相手のボクシングは違います。
相手がどういうボクシングをしていても、僕はあくまで自分のボクシングを貫いて、勝てるところで勝負したいですね。
テンポやうまさは、海外の選手のほうが上かもしれませんが、派手さとパンチ力には自信があります。
一戦必勝
ーーー同じ階級にライバルというか、アジア予選で「この選手は強いな」という選手はいますか。
田中:昨年の世界選手権で優勝したのがウズベキスタンのゾイロフという選手です。その選手はリオ五輪で金メダルを獲っています。
僕はリオの4年前のアジア予選でも彼と戦っています。
そこで負けて五輪に出場できなかったのですが、金メダルを獲るほど強いので、今思えば、仕方ないなと思ってはいます。
その選手や、2位のインドの選手ですね。
ーーーでは軽量級のライバルはアジアに固まっているのですね。
田中:3位はカザフスタンの選手なので、そうですね。
ーーーフライ級の選手は強いのですね。
田中:はい。ライバルは多いですね。自分が出場できることを祈ります。
ーーー金メダリストと試合をしているということは、その選手と自分は何が違うか、とか、どういうところに課題があるかが見えてくると思います。
田中:距離を取って駆け引きするようなボクシングはうまいですね。どこかで、相手の動きをつぶしにかかるようなボクシングをしないと厳しいように思います。
ーーーなるほど。今後の目標は。
田中:なんとかオリンピック出場を目指し、出場できたら、自分にとってアマチュア最後の試合だと思うので、一戦必勝です。
田中亮明(たなか・りょうめい)
1993年生まれ。岐阜県多治見市出身。幼少期に空手に出会い、のちにボクシングジム・イトカワでボクシングを始め中京高校、駒澤大学に進学。
現在は高校教員としてオリンピック出場を目指す。
高校3年生時には兄弟で国体優勝を果たしたほか、大学進学後には国体で四連覇し、2015年、2016年、2019年と全日本選手権で三度の優勝を飾る。
弟は現・WBO世界フライ級チャンピオンの田中恒成。