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体重超過の常習者 ネリはなぜ計量に失敗するのか 見せかけの自信と虚勢

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:REX/アフロ)

ボクシングのWBCシルバー・バンタム級タイトルマッチの前日計量が行われた。

前WBC世界バンタム級王者のルイス・ネリ(メキシコ)が、バンタム級のリミット118ポンド(53.52キロ)を1ポンド(約450グラム)オーバーし、計量に失敗した。

対戦相手の元IBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトルコ)は一発で計量をクリアした。

両陣営の話し合いで試合開催の検討もされたが、ロドリゲス陣営が安全面を問題視し、試合はキャンセルとなった。

これまで計量失格にドーピング疑惑と、様々な問題を起こしてきたネリだが、大一番を前にまた問題を起こしてしまった。

ロドリゲス陣営がキャンセル

今回の試合では、ロドリゲス陣営を甘く見ていた。規定の体重を作れなかった場合でも、試合が行われるケースもある。

ボクサーは、試合をすることでファイトマネーを得られる。そのため、試合が中止になることは避けたい。

プロモーターとしても、注目されるカードのキャンセルは避けたいため、両陣営の話し合いにより判断される。

また、今回の試合はWBC挑戦者決定戦で、勝った方が王者のノルディ・ウーバーリ(フランス)との対戦予定だった。

ネリも少しの体重オーバーなら、試合中止はないだろうと高を括っていたのかもしれない。

しかし、今回はロドリゲス陣営が、バンタム級を超えたネリと戦う安全面を問題視し、キャンセルを発表した。

ロドリゲス陣営も、体重超過の相手を避けた、賢明な選択だったといえる。

なぜ計量オーバーをするのか

ボクシングは階級制のスポーツだ。少しでも体重が違うだけで、相手より優位に戦える。

そのため、ボクサーとしては少しでも階級を下げて、自分が勝てる階級で勝負する。

選手によっては、10キロ以上もの減量をして、リングに上がる。

私も経験があるが、一つ階級を変えるだけで、自分のボクシングが全く通用しなくなるケースが何度もあった。

恐らくネリの場合は、相手より良い条件で戦うことで、精神的にも優位に立ちたいのだろう。

試合で最大限のパフォーマンスを発揮するために、メンタル面は重要だ。

自分の方が強い、自分の方が有利、と思い込むことが、自信に繋がっていく。

ネリのこれまでの行動から、体重超過やドーピング(疑惑)は、精神的な弱さをカバーするために虚勢を張ってきたようにもみえる。

信頼を大きく失ったネリ

減量がキツイのなら階級を上げるべきだし、決められた体重を守ることはボクサーにとってリングに上がるための条件だ。

キツイから落とせないのではなく、はなから落とそうとしない。

そんな身勝手な選手にファンも関係者も翻弄されるのはまっぴらだろう。

バンタム級は、先日のワールドボクシングシリーズ(WBSS)で優勝した井上尚弥を筆頭に、WBO王者のゾラニ・テテ(南アフリカ)、WBC王者のウーバーリが王者として君臨している。

また、五輪2連覇で元WBA・WBO世界スーパーバンタム級王者のギレルモ・リゴンドー (キューバ)が、階級を落としてくるなど、盛り上がりを見せている。

そこに加わる選手として、ネリの名前も上がっていたが、今回の問題で大きく失墜した。

またそれだけではなく、度重なる問題で関係者やファンの信用を大きく失った。

実力はあるかもしれないが、違反を犯し続ける選手の試合など誰が見たいと思うか。

前回の計量失格時に日本では、事実上の永久追放処分になっており、WBCからも6カ月間の活動停止処分を科されている。

それでも反省を見せないネリは、リングに上がるべきではないし、厳しい処分が下されるべきだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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