アマチュアボクシング界の天才 須佐勝明が語る東京五輪でメダル獲得の可能性

(写真:ロイター/アフロ)

オリンピックでもっともメダルを期待された天才ボクサーがいる。元日本代表の須佐勝明(35)だ。

須佐氏は、福島県出身のアマチュアボクサーで、国際大会でも数々のメダルを獲得した。

2012年ロンドンオリンピックにもフライ級代表で出場し、チームメイトには現在プロで活躍している、

村田諒太(33=帝拳)、清水聡(33=大橋)、井上尚弥(26=大橋)ら、そうそうたるメンバーがいた。

現在、自衛隊体育学校でコーチをしている須佐氏にインタビューした。

選手から指導者へ

ーーー現役を引退したのはいつ頃ですか?

須佐:ロンドンオリンピック後なので28歳です。

ーーー指導者になるとまた変わってくると思いますが、今の選手達はどうですか?

須佐:今の選手は我々世代よりも、はるかにナイーブですね。

ーーー先ほど施設内を見学させていただきましたが、自衛隊体育学校はすごく環境が整っていますね。

須佐:はい。コーチが8人いて、選手も少数制で食事も3食5,000カロリーぐらいまで取れます。

衣食住そろっていますし、ボクシングに集中できる環境が整っています。

減量との戦い

ーーー須佐選手はロンドンオリンピックの出場経験がありますが、当時の思い出はありますか?

須佐:減量が厳しかったことです。

ーーーたしかフライ級で出場しましたね。

須佐:はい。ロンドンオリンピックに行くときに、階級がバンタム級でした。

そしたら、オリンピックの1年前ぐらいに階級変更がありまして…

ーーーアマチュアボクシングのAIBAの変更ですか?

須佐:はい。アマチュアのAIBAの規格です。54キロ(バンタム級)がなくなって、52キロ(フライ級)に下げました。

そういった背景からオリンピックというのは「減量」というイメージが強いです。

ーーー何キロぐらい減量したのですか。

須佐:大体13キロぐらいです。

ーーー13キロはきついですね。国内予選も、アジア予選なども含めてですか?

須佐:全部フライ級で出ました。ロンドン五輪の1年前ぐらいだったのできつかったです。

ーーーオリンピックは開会式などを含めて豪勢ですけど、それを楽しむ暇もなく。

須佐:はい。頭から「減量」の文字が消えることがなく、何も食べないでいました。ですが、開会式は気晴らしになったと思います。

著者撮影
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金メダリストとの対戦

ーーー須佐選手は1回戦で金メダリストのロベイシ・ラミレス選手(キューバ)との試合でしたが、その試合はどうでしたか?

須佐:私は当時28歳で、ラミレス選手は18歳でした。

10歳下だったら、自分の経験で勝てるかなと思っていたのですが、戦ってみたら相当強かったです。

ポイントの取り方がすごくうまくて、18歳にしてもう経験が違うなと思いました。

ーーーうまかったのですか?

須佐:はい。引き出しの数が多いなと思いました。

ーーー別格という感じでしたか?

須佐:はい。

ーーートーナメントも圧勝していたのですか?

須佐:そうです。1回戦からずっと大差で勝っていました。決勝だけ僅差での勝利でした。

ーーーラミレス選手の印象はどうですか?

須佐:審判に対する見せ方がすごくうまいです。

ボディを打っても手が長いので、ガードが上になってしまって、入ったように見えないのです。

ーーーそんな、金メダリストのラミレス選手が最近プロ入りしてデビュー戦でまさかの…

須佐:負けてしまいましたね。

ーーーはい。やはりそれだけアマチュアとプロというのは別世界なのだと思いました。

日本と海外のボクシング

ーーー海外の選手と日本の選手の違いはどうですか?

須佐:個人的に、日本の選手は昔ながらの習慣、ステレオタイプなところがあって、海外の選手というのは柔軟性があると思っています。

海外の選手は、コーチに言われた事をただこなすというより、自分で考えて、組み立てられる選手が多いと思います。

ーーー今どこの国が強いですか?

須佐:今のルールでいうと、打たせるという基本的なところを具現化しているのはロシアやキューバ、ウズベキスタン、カザフスタン、モンゴルですね。

ーーーアジアではどこが強いですか?

須佐:年によって違うのですが、個人的にはウズベキスタンや、カザフスタンが二大巨頭ですね。

そこに食いついてくるのがモンゴル、タイなどです。

東京オリンピック

ーーー2020年東京オリンピック開催についてどう思いますか?

須佐:正直今の選手がうらやましいです。

ーーーうらやましいですか。

須佐:我々の時は、日本チャンピオンになっても世界予選、アジア大陸で勝ち上がって、獲得権をしのぎ削らないといけないです。

今回、東京オリンピックは開催国枠があるのでチャンスが多いではないですか。

加えて、両国国技館で試合ができることは滅多にない機会ですから。

ーーーそうですね。一生に一度あるかないかですね。

須佐:東京オリンピックは地元開催で一番注目を浴びますから、すごくうらやましいです。

ーーーうらやましいですね。

須佐:出られるものなら出たいですね。

アマチュア体制の変化

ーーーこの1年、アマチュアボクシング連盟は、いろいろ激動だったと思います。

現場の指導者として、環境が変わったというのは目に見えてありますか?

須佐:まず審判の制度ですね。今は大会前に審判長が、「われわれは絶対公平なジャッジをします」と宣誓しているのです。

ーーーそうなのですね。

須佐:本当に公平なジャッジです。そういうところが一番選手ファーストというところで、いいなというところです。

ーーー今、注目の選手はいますか?

須佐:女子では、やはり並木月海です。男子では、成松大介、岡澤セオン、森脇唯人、堤駿斗あたりでしょうか。

ーーー男子も女子も出場枠がありますけれども、メダルの可能性はどうですか?

須佐:あると思います。

ーーー日本は世界に近づいているのか、それともまだやはり差があるのかと考えるとどうですか?

須佐:かなり近いのではないかと思います。理由は成松大介(リオオリンピック代表)はもう28歳ぐらいになりますけど、

アジア大会でも、トップ選手と同等の戦いをします。また、強豪国のキューバにも勝ちました。

ーーーそうですか。

須佐:今回東京オリンピックで、もう応援はすごいではないですか。審判の見方も地元で変わってきます。

そうなれば、五分五分の試合だったら日本選手にチャンスはあります。

あとは、森脇唯人です。森脇もすごくスピードがあって練習もしますし、パンチ力もあります。

東京開催なので、初めてのところで試合するよりは慣れています。

ーーー慣れていますね。声援も背負っていますしね。

須佐:やはり緊張感もいい意味でのプラスになり、みんな練習以上のものが出るのではないかと思います。

ーーーそうですね。120%ぐらいの力が出せる可能性はありますね。

須佐:みんな応援してくれていると思ったらやはりいい影響になります。

ーーーどの階級でも出場すればメダルの可能性はありますか?

須佐:かなり高いと思います。

ーーー自国開催ということもあり、選手達も気合が入っている感じですか?

須佐:空気が違います。僕たちの時よりも空気がピリピリです。今年の全日本は半端ないと思います。

著者撮影
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プロとアマの共存

ーーー東京オリンピックもありますし、須佐選手も選手から指導者になりましたが、今後の目標はありますか?

須佐:東京オリンピックが最終目標ではなくて、その後が課題だと思います。

次回のオリンピックで、ボクシング競技が実施されるかの保証はありません。

もっと精力的に活動していかなければならないと思います。

ーーー本当にアマチュアもプロも一緒に盛り上がっていかないといけないです。

須佐:もちろんそうです。共存していかないといけません。

ーーーそういう時代になってきましたね。

須佐:今スポーツは脅かされています。今までスポーツは当たり前にあった存在ですが、そういう状況ではなくなってきています。

スポーツに携わっている者として、ボクシングはもちろん、普及していかなければと思っています。

次の記事では、チームメイトであった、3階級王者として活躍する井上尚弥について話を聞いた。

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