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衝撃KOで決勝進出!井上尚弥の対抗馬は5階級王者のドネアで決定

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の準決勝が、27日(日本時間28日)にアメリカのルイジアナ州で、開催された。

元5階級王者で、WBA世界バンタム級スーパー王者のノニト・ドネアと、同級5位ステフォン・ヤングが戦った。

この試合の勝者がWBSS決勝戦で、WBA正規王者の井上尚弥とIBF王者のロドリゲスの勝者と戦う。

日本でも人気が高いドネアが、決勝まで進めるか注目の一戦となった。

対戦相手が急遽変更

この試合は、急遽対戦相手が変更になった経緯がある。ドネアは当初、WBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)と統一戦で対戦する予定だった。

しかし、テテが右肩の負傷で出場を断念。試合の2日前に、ヤングが代役を務めることが発表された。

選手としては、急な対戦相手の変更はマイナスになる。試合が決まったら、相手を想定して、戦略や戦術を組み、トレーニング計画を立て進めていく。

相手が変更となると、今までの作戦を変えなければならない。選手の試合直前まで高まった集中が、切れてしまわないかが心配だった。

プレッシャーをかけるドネア

試合の方は、サウスポースタイルのヤングに対して、ドネアが1ラウンド目からプレッシャーをかけていく。

階級を下げてきたドネアに対して、ヤングはひと回り小さいように感じた。

序盤からドネアが、パワーを武器にヤングを攻め立てる。

ヤングの方は様子を見ながら、ドネアの打ち終わりに、カウンターのパンチを放っていた。

ドネアは防御を関係無しに正面から入るので、ヤングのパンチを被弾していた。しかし、攻撃が最大の防御とばかりに前に出続けていた。

ドネアの攻勢が目立ち、時折強いパンチが当たり、ペースを握っていった。

ヤングの方もドネアの打ち終わりに対して、パンチを返していたが、徐々に疲労の色が見えてきた。

左フック1発で衝撃的なKO

3Rの終盤にいいパンチが炸裂すると、ドネアはさらにギアを上げ、プレッシャーを掛けていった。

パンチは単発だったが、アッパーやフック、モーションがない右ストレートを放ち、パンチを散らしていった。

ヤングはだんだんと手数が減り、防戦一方になっていった。攻めてくる圧力で、受けに回ってしまうと手が出なくなるのだ。

また、ドネアは多彩なパンチを打っていたので、どのパンチがくるかわかりづらい。考えている間にパンチがくるため、防御もしづらいのだ。

そして、迎えた第6R、ドネアの右ボディから返しの左フックが炸裂した。

前の手が出ているサウスポーには、死角となる左フックは当たりやすい。ボディを打って、意識が下にいったところに、がら空きの顔面に直撃した。

ヤングはそのまま立てずに試合ストップ。ドネアは、伝家の宝刀の左フック一発で試合を決めた。6RKO勝ちで、WBSSの決勝戦に駒を進めた。

年齢も重ね、ここ最近は負けが続いたドネアだが、今回の試合で復活の兆しを見せた。

決勝戦で井上尚弥との対決なるか

このトーナメントでドネアが決勝まで進むと、誰が予想しただろうか。

優勝候補のテテが怪我で離脱、WBAスーパー王者のライアン・バーネットは、試合途中に腰を痛めて棄権、と波乱が続いた。

やはり、トーナメントは何が起こるか分からない。だからこそ、面白い。

日本でも馴染深いドネアが決勝に進んだ事で、喜ぶファンも多いだろう。

親日家で日本にも、度々訪れているドネアだが、インタビューでは井上尚弥との対戦を熱望した。

井上の準決勝は、5月18日にイギリスのグラスゴーで開催される。対戦相手のIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲスは強敵だ。

井上が決勝に勝ち進み、ドネアとの対戦が実現すれば、非常に盛り上がるだろう。

決勝の舞台でドネアとの対決が観たい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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