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チャールズ国王、Netflix騒動にかかわらずヘンリー公爵とメーガン夫人を戴冠式に招待へ 英大衆紙

木村正人在英国際ジャーナリスト
ヘンリー公爵とメーガン夫人(写真:REX/アフロ)

■戴冠式に来てくれるなら歓迎

チャールズ英国王の次男ヘンリー公爵とメーガン夫人による米ストリーミング大手ネットフリックス(Netflix)シリーズ『ハリー(ヘンリー公爵の愛称)&メーガン』が改めて波紋を広げる中、国王がヘンリー公爵とメーガン夫人を来年5月6日の戴冠式に招待すると保守系の英大衆紙デーリー・メールが報じた。

公式の招待状はまだ出されていない。しかし複数の有力な情報筋がデーリー・メール紙に明かしたところでは、チャールズ国王はヘンリー公爵とメーガン夫人に戴冠式に来てくれるなら歓迎すると伝えたという。王室を批判するNetflixシリーズが公開された後、王室支持層からヘンリー公爵とメーガン夫人の称号を剥奪するよう求める声が強まっている。

世論調査会社YouGovによると、ヘンリー公爵の人気はシリーズ配信1週間前の時点で、好感を持っている人は33%、59%が否定的な意見を持っていた。エリザベス女王の崩御に伴って一時はプラス1ポイントまで回復したヘンリー公爵のネット好感度はマイナス26ポイントで、11月以来13ポイントも下がり、過去最低レベルとなった。

メーガン夫人に好感を持っているのはわずか25%で64%が否定的な意見を持っていた。ネット好感度はマイナス39ポイントだった。65歳以上の84%がメーガン夫人に否定的な意見を持っており、70%が「非常に否定的」だった。18~24歳は、40%が肯定的で、38%が否定的とネット好感度が唯一プラスの年齢層だった。

■和解望むチャールズ国王

エリザベス女王が亡くなった時、メーガン夫人がスコットランドに向かう空軍のフライトに同乗することを拒まれたヘンリー公爵はウィリアム皇太子、アンドルー王子、エドワード王子と一緒に移動することを拒否。スコットランドのバルモラル城でのチャールズ国王とウィリアム皇太子との夕食もすっぽかしたとされる。

ヘンリー公爵とメーガン夫人にバッキンガム宮殿で行われた国賓レセプションの招待状が間違って送られてきた。招待されたのは「現役王族」だけで「引退王族」の2人は招待されていなかった。自動的に「王子」と「王女」になると考えられていた長男アーチーちゃんと長女リリベットちゃんの称号はまだ「マスター」と「ミス」のまま残されている。

しかしヘンリー公爵とメーガン夫人はウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃とウィンザー城の外に出て追悼のため駆けつけた市民に感謝の気持ちを示した。エリザベス女王の国葬ではチャールズ国王とカミラ王妃の後ろに座り、「和解」を演出した。当時、英大衆紙サンは「和解」の兆候を5つ挙げた。

(1)「ファブフォー(ウィリアム皇太子、キャサリン皇太子妃、ヘンリー公爵、メーガン夫人の4人)」の復活

(2)国葬での着席位置

(3)ヘンリー公爵とメーガン夫人がほぼ3週間子供に会っていないにもかかわらず英国滞在を延長した

(4)葬送行進では許されなかった軍服着用を弔問の際、ヘンリー公爵に認めた

(5)チャールズ国王が即位の際、わざわざ「海外で人生を歩むハリー(ヘンリー公爵の愛称)とメーガンに私の愛を伝えたい」と表明した

■王室関係者「国王が2人の王子を愛していることに変わりはない」

保守系高級紙デーリー・テレグラフによると、女王の国葬で残された王族が団結を示すことができたため、チャールズ国王は「大きな希望の光を見た」と周辺に漏らしたという。ヘンリー公爵とメーガン夫人との間にできた溝を修復できると信じているようだ。王室関係者は「国王が2人の王子を愛していることに変わりはない」と話している。

チャールズ国王はヘンリー公爵が英国に滞在している時はいつでも一緒に食事をする機会を設けるなどオープンに接するよう努めている。デーリー・テレグラフ紙は「国王がヘンリー公爵と2人きりで過ごした時間があったとしても、どの程度だったかは不明だが、2人の関係の現状を肯定的にとらえようと決意しているようだ」と伝えている。

王族がウェストミンスター・ホールで女王の棺を弔問した際、「引退王族」のヘンリー公爵とアンドルー王子に軍服着用を認めたのはチャールズ国王の要望だったと報じられている。これまで君主に対する直接の批判を避けてきたヘンリー公爵とメーガン夫人はNetflixシリーズの内容を和らげ、批判の矛先を英メディアだけに向けたとみられている。

ヘンリー公爵とメーガン夫人が今年のクリスマスをチャールズ国王らロイヤルファミリーとともに過ごす予定はない。ヘンリー公爵は新年、回顧録「スペア(Spare)」を出版する予定は変わらないが、チャールズ国王はメディアを通じて、ヘンリー公爵に関係修復のメッセージを送り続けている。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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