[ロンドン発]英イングランド南部ブライトン近郊に住むプログラマー兼エンジニア、ニコラス・D・クランチさん(56)が作った高さ8センチメートル弱のスペースインベーダーゲームがギークの間で「世界最小」と話題になっている。スペースインベーダーゲームは1978年に日本のアーケードゲーム会社タイトーが開発し、世界中で大ヒットした。

スチームパンクの愛好家ニコラス・D・クランチさん(c)Ton Janssen
スチームパンクの愛好家ニコラス・D・クランチさん(c)Ton Janssen

「科学少年」がそのまま大人になったようなクランチさんはカイゼル髭をたくわえている。レトロな蒸気(スチーム)機関を連想させるアートやデザインを楽しむ「スチームパンク」のマニアでもあるクランチさんはコスチュームだけでなく、水泡が発生するシリンダーや計器盤、煙を吐き出すミニ煙突を組み合わせた皮鞄を自作するギークの中のギーク。

手のひらサイズのスペースインベーダーゲームを作ったクランチさん(本人提供)
手のひらサイズのスペースインベーダーゲームを作ったクランチさん(本人提供)

スチームパンクはある種の冒険だ。スチームパンクのガジェット用に幅25ミリメートルのスクリーンを4ドル(約460円)で買ったクランチさんは「これでスペースインベーダーゲームのミニチュアを作ったらかなりクールだ」と思いついた。1980年代からコンピューターを扱っているクランチさんは何でも自分でやらないと気が済まない性分である。

初代スペースインベーダーが発売された時、クランチさんは12歳だった。新聞配達で週2.8ポンド(約425円)を稼ぐ新聞少年だった。ゲームセンターにはよく行ったが、母親から「くだらないビデオゲームにお金を浪費するな」と注意された。スペースインベーダーの思い出についてクランチさんはこう振り返る。

「特にありません。スペースインベーダーが発売されたとき、私はゲームに費やすお金がなかったんです」。学校が米コモドール製コンピューターを2台購入した。そのうち1台にスペースインベーダーがインストールされていた。

「すぐにゲームで遊ぶよりプログラミングをする方が好きだと気づいた」と振り返るクランチさんはオリジナルのスペースインベーダーゲームのビデオを見て、メモリーが512バイトに収まるようコード化した。1.5ミリメートルの合板を自分で切って小さなキャビネットを作った。ジョイスティックの材料は小さな皮下注射針だ。

クランチさん(本人提供)
クランチさん(本人提供)

「自分のアイデアを形にできるかどうか確認するため、自分自身に課した挑戦でした。マイクロコントローラArduinoを使って完全な機能のビデオゲームを作ることができました」という。

デザインはタイトー製ではなく、クランチさんお気に入りの米ミッドウェイ製をベースにし、カラーレーザープリンターで印刷して接着剤で貼り付けた。ゲームの合間には最高得点者のイニシャルも表示される凝りようだ。「キャビネットの前面ガラスのためのグラフィックを切り取るのに非常に鋭いナイフを使い、慎重さと正確さが必要でした」

同

本当に小さいが、実際に手に取って遊んでみると懐かしい「ドッドッドッ」というインベーダーの足音が響き、子供のような興奮を覚えた。

「これはギークが行う特別な魔法の一例だ。非常に強い意志を持ったいじり手によるギーク技術を応用した感動の物語だ」とテクノロジーのメディアプラットフォームに取り上げられたクランチさんは「日曜日の午後の気晴らしだったものが、これほどまでに関心を持たれるとは思いませんでした」と言う。

「反応はさまざまです。人に話してあまり反応がなくても、実際に見て手に取ってプレイしてもらうと、子供のようにはしゃいで、とても喜んでもらえます。最初から最後までで約3年、時間にして250~300時間かけました。費用はArduinoが3ポンド(約460円)、スクリーンが3ポンド。電子部品と木材で合計25ポンド(約3800円)ぐらいかかったと思います」

クランチさんはこれから、Arduinoを使って鳩時計の帽子と機械式日時計の2つのプロジェクトに取り組む考えだ。ギークの夢は果てしなく続く。

(おわり)