[ロンドン発]フランスで地方行政を担う地域圏と県の各議会選の第1回投票が20日行われ、即日開票の結果、エマニュエル・マクロン大統領率いる共和国前進など中道の与党連合は右派の共和党、左派の社会党、極右の国民連合(RN)、環境政党の緑の党を下回る5位に沈みました。

地域圏の議会選挙では棄権が63~70%(平均66%)に達しており、これまで最悪だった50%を16ポイントも上回りました。そうでなくても関心が低い地方選はコロナ危機で一層盛り上がりませんでした。

今回の棄権票が本番の大統領選でどう動くか予想しにくいものの、来年の大統領選の前哨戦となる地方選で惨敗したマクロン大統領の再選はかなり厳しくなったと言わざるを得ません。

マクロン大統領は「国の脈を測る」と地方行脚を始めましたが、今月8日、ワインで有名な仏南東部タンレルミタージュ村で住民に平手打ちをくらわされました。市場主義に舵を切ろうとするマクロン大統領の政策は社会主義的な傾向が強いフランスでは不人気です。

仏公共ラジオ放送局が運営するフランス・アンフォのデータをもとに主要12地域圏議会選の得票率をグラフにしてみました。右派・共和党が6地域圏、左派・社会党が5地域圏、国民連合が1地域圏で首位に立っています。

共和国前進はこのうち3地域圏で得票率10%のハードルをクリアできず、6月27日の第2回投票に進めませんでした。代わりに浮上したのが共和党です。国民連合は南東部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏で首位(36%)に立ちました。共和党と共和国前進は選挙協力で32%(グラフでは票を等分)まで追い上げており、第2回投票で他党の協力も得ることができた場合、国民連合が首位に立つのは難しいかもしれません。

フランスはコロナ危機で575万人超の感染者を出し、約11万人が亡くなりました。マクロン大統領は3月31日のテレビ演説で、アルファ(英変異)株の流行を止めるため、夜間の外出禁止、10キロメートル超の移動や地域圏を越える移動の禁止を全土に導入しました。しかしワクチンの集団接種ではイギリスやドイツ、イタリアに遅れを取りました。

移動制限は5月3日以降、段階的に解除されたものの、国民連合のマリーヌ・ルペン党首はツイッターで「私たちの自由は数カ月間にわたって制限された。政府は祖国をカオスに陥れた。有権者はこれに意見する義務を有している。国を愛しているなら、投票所に行こう。あなたの考えを表明しよう」と呼びかけましたが、投票率は伸びませんでした。

直近の世論調査ではマクロン大統領の不支持率は支持率を22%ポイントも上回っています。ジャン・カステックス首相のネット支持率もマイナス30%ポイントです。来年の大統領選の世論調査ではルペン党首がマクロン大統領を最大3%ポイントもリードしています。しかし今回の地方選でルペン党首の国民連合は思ったほど票を伸ばせませんでした。

コロナによる死者がドナルド・トランプ前大統領のアメリカで61万7千人、ジャイール・ボルソナーロ大統領のブラジルで50万1千人を超えたのを目の当たりにして、一時の気の迷いでポピュリストを政治指導者に選んでしまうと取り返しのつかないことになると思い知ったのかもしれません。

製造業の衰退とそれに伴う労働組合の弱体化で、イギリスの労働党やドイツの社会民主党(SPD)など欧州では左派政党の凋落が目立っています。フランスでも社会党を中心に環境政党・緑の党、急進左派がどのようなかたちで選挙協力して左派を立て直していくかが課題として残されています。

北部オー=ド=フランス地域圏で首位に立った共和党のグザヴィエ・ベルトラン氏は「私たちに自信を与えてくれた人々に感謝したい。私たちは国民連合のアゴを打ち砕いた」と力を込めました。ベルトラン氏は来年の大統領選でマクロン大統領に挑戦することに意欲を示しています。

イギリスの保守党が面舵(おもかじ、進行方向右に舵を転ずること)を切って総選挙で勝利したように、フランスの共和党も右に舵を切ってくるのではないでしょうか。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も秋には引退、マクロン大統領も来年退場となると、難題が山積する欧州連合(EU)の行方はますます見通せなくなってきます。

(おわり)