英最新鋭空母の極東展開、日本の受け入れで「日英同盟」が復活する?

英最新鋭空母クイーン・エリザベス(今年8月、英南部ポーツマスで筆者撮影)

小牧南工場で英のF35B整備構想も

[ロンドン発]共同通信は5日、英海軍が最新鋭空母クイーン・エリザベス(QE)を中心とする空母打撃群について沖縄県など南西諸島周辺を含む西太平洋に向け来年初めにも派遣し、長期滞在させることが分かったと独自ダネで報じました。

筆者も今年7月のエントリーで、英紙タイムズの報道をきっかけに「来年の日米軍事演習にQEが参加か 空母打撃群のインド太平洋常駐も」と書きました。イギリスには香港国家安全維持法を強行した中国を牽制する狙いがあります。共同通信の独自ダネのポイントは次の通りです。

・在日米軍の支援を受けるとみられる

・三菱重工業の小牧南工場(愛知県)で艦載の最新鋭ステルス戦闘機F35Bを整備する構想も浮上

・QEや打撃群の艦艇、航空機は自衛隊や米軍と合同演習を実施する見通し

・英軍は朝鮮戦争の国連決議に基づき定められた国連軍地位協定により横須賀(神奈川)、佐世保(長崎)、ホワイトビーチ(沖縄)など在日米軍施設・区域で補給を受けられる

1世紀ぶりの「日英同盟」復活に近づく大きな一歩になる可能性があります。

QEの公式ツイッターは11月19日「来年、QEはわが国と同盟国のタスクグループをリードする。地中海、インド洋、東アジアに及ぶ過去20年間で最も野心的な展開だ」というボリス・ジョンソン英首相の声明をリツイートしています。

19日に発表された英政府の外交・国防・安全保障・展開政策統合レビューに合わせて、欧州連合(EU)離脱を機に改めて「グローバルブリテン」を目指すジョンソン首相は下院でこう演説しました。

「2023年に両方の空母(QEとプリンス・オブ・ウェールズ)が運用可能になると空母打撃群が恒久的に利用できる。日常的にグローバルに展開され、いつでもNATO(北大西洋条約機構)や他の同盟国と一緒に戦う準備が整う」

英最新鋭空母プリンス・オブ・ウェールズ(同)
英最新鋭空母プリンス・オブ・ウェールズ(同)

「世界で最も重要な地域に海軍資産をさらに配備し、わが国に供給する航路(シーレーン)を守る。そして(原子力潜水艦による)核抑止力の更新を推し進める」

F35Bを運用する米海兵隊、日本の自衛隊、イタリア軍との相互運用

9月15日、英下院国防委員会でF35Bと空母打撃群について公聴会が開かれました。

英政府は空母に載せるF35Bについて138機という調達目標を掲げていますが、証人のジャスティン・ブロンク英王立防衛安全保障研究所(RUSI)戦闘空軍力・技術研究員は「政府は目標に固執しているが、それが資金提供される可能性が低い願望であることは誰もが知っている」と指摘しました。

保守党政権はこの10年間、国防予算を16%削減しました。その結果、ブロンク氏によると、138機の調達目標は90~138機の間か、さらに48~60機まで下がる恐れがあるそうです。

今年9月時点で調達済みなのはわずか18機で2024年末までに48機が調達される予定です。もし「極東に空母打撃群を展開するなら常時、空母に載せて展開可能なF35Bは12~24機だ。少なくとも全体で60機は必要、他のこともする場合には70機を大幅に超えるだろう」とブロンク氏は解説します。

F35Bの調達の遅れでQEのキャパシティーに余裕が生じるため、浮上しているのがF35Bを運用する米海兵隊、日本の自衛隊、イタリア軍との相互運用です。証人のニック・チャイルズ英国際戦略研究所(IISS)海軍・海洋安全保障担当上級研究員は次のような見方を示しました。

「イギリスの空母は米海軍の空母の規模ではなく、完全な機能を提供していないが、能力の点で他の誰よりも潜在的に近く、完全な補完機能を備えている。従って同盟の文脈における戦略的資産として完全に補完された空母能力を提供できることはアメリカ人にとって重要なことだ」

空母航空団の司令官を務めたダン・ステムブリッジ英王立航空協会空軍グループ副議長は「次の45~50年、空母が2隻ある。将来の無人航空機システムが空母と陸上の両方から運用できるようにするために、これらの決定が早期に行われるようにする必要がある」と証言しました。

脅威はロシアだけでなく、例えばアルジェリアはロシアの超長距離地対空ミサイルシステムS-400を運用し、中国の長距離地対空ミサイルHQ-9を調達しています。ブロンク氏は「対反乱作戦からハイエンドのNATOの戦闘のすべてに対応するとなると国防予算は対国内総生産(GDP)比で3%は必要」と警鐘を鳴らしました。

こうした懸念を一掃するため、ジョンソン首相は統合レビューで「今後4年間で国防費を241億ポンド(約3兆3343億円)増やす」と昨年12月の総選挙のマニフェスト(政権公約)よりもさらに165億ポンド上乗せました。4年間で計1900億ポンド(約26兆2867億円)を費やし、国防費の対GDP比を2.2%まで引き上げると宣言しました。

ジョンソン首相は人工知能(AI)を専門とする新しい機関のほか、国家サイバー部隊と、2022年に最初のロケットを打ち上げることができる新しい「宇宙軍」の創設をぶち上げました。ジョンソン首相は成長著しいアジアをにらんで「脱欧入亜」を進めています。

まだ輪郭がはっきりとはしないジョー・バイデン次期米政権の外交・安全保障政策が打ち出される前に、先手を取って日本やオーストラリアとの連携を固めておく狙いもあるのでしょう。最後に英空母打撃群を巡るこれまでの動きを振り返っておきましょう。

【英空母打撃群を巡るこれまでの動き】

2017年7月、ジョンソン英外相(当時)がシドニーで「2隻の新しい巨大空母で最初に行うことの1つはこの地域(南シナ海)に派遣して『航行の自由』作戦に参加させることだ。世界貿易にとって絶対的に重要な法の支配に基づく国際システムと航行の自由に対するわれわれの信念を証明するためだ」と表明

17年12月、小野寺五典防衛相(当時)が英南部ポーツマスでQE視察。海自護衛艦「いずも」との共同訓練を提案

18年7月、ギャビン・ウィリアムソン英国防相(当時)が「QEを太平洋に配備し、オーストラリアの船と並んで航海することを強く望んでおり、協力するつもりだ」と発言

19年2月、ウィリアムソン国防相がロシアや中国を念頭に「イギリスと同盟国はわれわれのグローバルな国益を支えるためにはハードパワー(軍事力)を行使する準備が必要だ」と表明。中国側が激怒し、フィリップ・ハモンド英財務相(当時)の訪中がキャンセルされる

19年11月、海自トップの山村浩海上幕僚長はアメリカ滞在中のQE艦上で米英両海軍の制服組トップと会談、協力関係を深めることを確認

今年7月13日、IISSのウェブセミナーで英海軍のジェリー・キッド副提督が「英海軍はインド太平洋に復帰しつつある。私たちの野心はそこに永続的に前進作戦基地を持つことだ」と発言。「空母打撃群は含まれるかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれ分かるだろう」「空母で運んだF35Bは同盟国アメリカや日本のハブを通じインド太平洋で作戦を維持する可能性もある」と含みを持たせる

7月14日、英下院国防委員会のトビアス・エルウッド委員長が「ファーウェイの5Gネットワークへの参入が禁止された日に私たちの空母を中国に送るという話をするのは無謀だ」とツイート。軍関係者の討論会などへの参加が制限される

(おわり)