「有効性94.5%、重症化ゼロ」モデルナ遺伝子ワクチン 日本2500万人分確保 コロナ危機出口見えた

米モデルナが開発した新型コロナウイルス感染症のワクチン(写真:ロイター/アフロ)

最後の直線に入ったワクチン開発競争

[ロンドン発]米バイオテクノロジー企業モデルナは16日、第3相試験中の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)ワクチンについて、発症を防ぐ有効性が94.5%になったとの暫定結果を発表しました。

同じメッセンジャーRNA(mRNA)テクノロジーを使う米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬ベンチャー、ビオンテックが9日、有効性は90%以上(実際には95%近く)に達したという暫定結果を発表したばかり。

両社は米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する方針で、世界で感染者5500万人以上、死者132万人超を出したコロナ危機の出口がようやく見えてきました。日米欧が有力視するコロナワクチンの開発状況をまとめてみました。

各種資料や報道をもとに筆者作成
各種資料や報道をもとに筆者作成

日本政府はモデルナと来年前半に4000万回分(2000万人分)、7~9月に1000万回分(500万人分)の計5000万回分(2500万人分)の供給を受ける契約を締結。日本国内での販売・流通は武田薬品工業が担います。

ワクチン接種組の重症者ゼロ

モデルナの広報資料によると、アメリカで3万人以上を対象に実施した第3相試験(2回接種)の結果、95人が発症。ワクチン接種組は5人で、90人はプラセボ(偽薬)を接種したグループ(有効性は94.5%)。うち重症者11人は全員プラセボ組でした。

発症者95人のうち15人は高齢者(65歳以上)。ヒスパニック・ラテン系12人、黒人・アフリカ系4人、アジア系3人、多民族系1人の計20人が多様な地域社会に属していました。

有害事象は大部分が軽症(グレード1)か中等症(グレード2)で、グレード3(重症または医学的に重大だが、直ちに生命を脅かすものではない)は1回目の接種後にみられ、頻度は2%以上、注射部位の痛み(2.7%)が含まれます。

2回目の接種後に倦怠感(9.7%)、筋肉痛(8.9%)、関節痛(5.2%)、頭痛(4.5%)、痛み(4.1%)、注射時の紅斑、発赤が報告されています。有害事象は一般的に長く続きませんでした。

モデルナは「広範囲に一貫した安全性と有効性が示唆されている」と評価しています。発症例が151人に達した時点での結果を見てFDAの緊急使用許可が承認される見通しです。

「これはコロナワクチンの開発において極めて重要な瞬間だ。重症例を含むCovid-19を予防できるという最初の臨床的検証が得られた」とステファン・バンセルCEO(最高経営責任者)は胸を張りました。

モデルナは今年末までにアメリカで約2千万回分の出荷を予定。来年に世界向けに5億~10億回分を生産する計画です。

第3相試験に参加した18歳以上のアメリカ人3万人のうち65歳以上は7千人超。65歳未満で糖尿病・重度の肥満・心臓病を患う高リスクの5千人超が含まれています。高リスクの参加者は全体の42%。非白人は1万1千人超(37%)で、ヒスパニック・ラテン系6千人超、黒人・アフリカ系3千人超でした。

冷蔵庫で最大30日間保管できる

英政府の報道官はモデルナの発表を受け「効果的なコロナワクチンを見つけるためのもう1つの重要なステップを示した。ワクチンタスクフォースの作業の一環として、より広範なわが国のポートフォリオの一部としてワクチンにアクセスできるようモデルナと高度な協議を行っている」とコメントしました。

モデルナは現在、欧州でのサプライチェーンを拡大しており、早ければイギリスでも来年春に接種可能になる見通しです。マット・ハンコック保健相は16日、モデルナのワクチンを「希望のキャンドル」と表現し、500万回分(250万人分)確保したことを明らかにしました。

しかし英最大野党・労働党は「政府による間違いがまたも繰り返された」と厳しく批判。日本やアメリカ、欧州連合(EU)はモデルナのワクチンを確保していたのに、イギリスは完全に出遅れたからです。同じmRNAテクノロジーとは言え、モデルナとファイザーのワクチンには大きな違いがあります。

「ファイザーのワクチンは摂氏マイナス70度で保存しなければならないが、モデルナのそれは摂氏マイナス20度で安定する。モデルナのワクチンはファイザーのものより非常に簡単かつ低コストで流通できる」と語るのはインペリアル・カレッジ・ロンドンのゾルタン・キシュ研究員(未来のワクチン製造ハブ)。

同じインペリアル・カレッジ・ロンドンのピーター・オープンショー教授(実験医学)は「モデルナは従来の冷凍庫(摂氏マイナス20度)で最大6カ月間保管でき、解凍後は標準冷蔵庫(摂氏2〜8度)で最大30日間保管できると発表した。 接種がはるかに簡単になる」と話しました。

医学研究を支援する英団体ウェルカム・トラストのワクチン責任者チャーリー・ウェラー博士は次のように語りました。「治験が完了して初めてワクチン候補の完全な有効性と安全性を評価できる。しかし医療施設に届けられた後、通常の冷蔵温度で最大1カ月保管できるというモデルナの発表は心強い」

「今後ロジスティクスのハードルを克服するには比類ないレベルのグローバルコラボレーションが必要だ。国民の理解、信頼を築くことの重要性を過小評価することはできない。コロナワクチンは史上最大かつ最速の製造のスケールアップと展開に直面するが、トンネルの終わりの光は明るく見えている」

HPVワクチンの接種率は70%から1%に低下

英科学雑誌ネイチャーによると、日本では2013年、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの悪影響の恐れが広く報じられた結果、70%の接種率が1%に低下したそうです。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州がん評議会と北海道大学のチームが日本のHPVワクチン接種率の低下の影響をモデル化した結果、少なくとも2万4600件の子宮頸がん症例と5千人の死亡が多く発生すると予測しています。

アイルランドとデンマークでは政府や関係者が協力してHPVワクチンへの忌避をうまく逆転させたそうです。

日本ではワクチン忌避に対する研究があまり行われていませんが、世界保健機関(WHO)は昨年、ワクチン忌避を「世界の健康に関する10の脅威」の一つに挙げています。コロナ危機でもHPVワクチンの過ちを繰り返さないよう予防接種の大切さを伝える努力が必要です。

(おわり)

参考:コロナワクチンあなたは打つ、打たない? 間もなく米英で予防接種開始

・10カ月のワープスピードを実現したファイザーの遺伝子ワクチンとは バイオテクノロジーは新時代を迎えた

・コロナ危機を終わらせるワクチンの開発者は自動車工場で働くトルコ移民労働者の息子夫婦だった

・【スクープ!】コロナ第2波 英マンチェスターは12月1日ワクチン接種開始で準備