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日本、オーストラリア、スペイン、イスラエルで新型コロナの第二波か 

木村正人在英国際ジャーナリスト
スペイン・マヨルカ島のビーチ(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]新型コロナウイルス・パンデミックで、日本だけでなく、スペインやオーストラリア、イスラエルでも第二波が広がり始めています。南米はパンデミックの新たなエピセンター(発生源)と化し、感染者は世界中で約1665万人、死者は65万6600人に達しています。

世界保健機関(WHO)でコロナ対策のテクニカルリーダーを務めるマリア・ヴァン・ケルコフ氏は27日の記者会見でこう話しました。

「多くの国々は真の危機に瀕しており、激しい感染を経験している。最初のピークをすでに経験した国の多くは感染率を低く抑えている。しかし、いくつかの国で感染者が再び増えている。特定地域で、またナイトクラブなど特定業種でクラスターやアウトブレイクが発生している」

新型コロナウイルスのホットスポットは「3つの密(密閉・密集・密接)」の条件がそろうナイトクラブやパブ、低賃金労働者が密閉空間に長時間にわたって密集する宿舎や工場というのは世界共通です。

イギリスでは7月10日からスペイン、フランス、ドイツ、イタリア、日本など59カ国から帰国しても2週間の自己隔離が必要でなくなりました。

「ホリデー解禁」に喜んだのもつかの間、スペインで第二波発生の恐れが高まったことから26日から、同国からの帰国者と渡航者を対象に2週間の自己隔離を再実施することに。

スペインはイギリス人にとって人気の渡航先で、すでに飛行機やホテルを予約していたカップルや家族はかんかん。スペインのペドロ・サンチェス首相も「スペインのほとんどの地域を訪れる観光客はイギリスより新型コロナウイルスに感染するリスクは小さい」と反論しました。

第一波を乗り切り国家緊急事態を解除したスペインですが、バルセロナやサラゴサ、マドリードで感染者が急増。バルセロナのあるカタルーニャ州政府は2週間にわたってナイトクラブや深夜バーを閉鎖しました。スペイン軍も感染が広がらないよう早期追跡システムを稼働中です。

7月23日には1日の新規感染者が2600人を超え、感染しても無症状か軽症の若者の間で「ステルス感染」が広がり、家にウイルスを持ち帰って世帯内で高齢者に感染を拡大させているようです。

ベルギーでも第一波は通り越したものの、7月26日の新規感染者は528人を記録しました。新型コロナウイルスは人が感染を広げます。経済が再開され、人と人との接触回数が増えれば、どうしても第二波、第三波が広がるリスクが再燃してきます。

オーストラリアは第一波の抑制に成功した国の一つとして称賛されましたが、7月に入ってから第二波に襲われています。早期の国境閉鎖、社会的距離、濃厚接触者の追跡、新規感染者の隔離が抑制のカギとされましたが、根絶できなかったことで第二波を許してしまいました。

新型コロナウイルスをニュージーランドのように根絶できなければ、閉鎖・距離・追跡・隔離を緩めたとたん、感染者が再び増えるのは避けようがありません。日本でも感染者が増えたのは閉鎖・距離・追跡・隔離を緩めたからです。

しかし実際にロンドンで都市封鎖を経験した筆者から見ると、感染を恐れて家の中に閉じこもり続けるのはもう限界でしょう。人と会って食事や会話を楽しんだり、どこかに出かけて息抜きしたりしなければ心の健康は保てません。政府が打てる緊急経済対策ももう限界です。

主要国で旅行や観光が国内総生産(GDP)に占める割合は下のグラフの通りです。スペインやオーストラリアはGDPのそれぞれ14.3%、10.8%を旅行や観光に依存しており、パンデミックで人の動きが完全にシャットアウトされてしまうと大打撃を受けてしまいます。

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日本の旅行や観光への依存度は7%。訪日外客数は今年上半期、前年同期比で70%も減り16万7650人。6月だけでは実に98%も減って1630人です。国境を閉じたまま、旅行や観光の需要を刺激するために考案されたのが総額約1兆7000億円の「Go Toトラベル」キャンペーンでした。

しかし7月に入って東京都内の感染者が増え、7月23日には1日の新規感染者366人を記録しました。「Go Toトラベル」キャンペーンは小池百合子都知事に「冷房と暖房の両方をかけるよう」と皮肉られる始末。

日本では新規感染者数で見た第二波の山はPCR検査の数が増えたこともあって第一波より大きくなっています。

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しかし感染拡大にブレーキをかけながら経済再開のアクセルを踏まなければならないのが今、私たちが置かれている現実です。新規感染者数ではなく、感染者病床の空き具合、重症患者の状況を見ながら、だましだまし第二波に備えるしかないようです。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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