膨張する世界の債務 MMTの成功例とされる日本は大丈夫? 中国の成長率6%割る 世銀予測

中国人民元と米ドル紙幣(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]世界銀行のフランツィスカ・オーネゾルゲ発展見通しグループ部長が8日、ロンドンでの記者会見で世界経済見通しを発表。世界全体の経済成長率を半年前に比べ0.2%ポイント下方修正し、2.5%と予測しました。

国内総生産(GDP)の成長率も、鉱工業生産も、貿易量も2010年以降で最低水準に落ち込んでいます。オーネゾルゲ氏は「貿易や投資は昨年の著しい弱々しさから次第に回復するものの、下方リスクは継続する」と強調しました。

アメリカや欧州単一通貨ユーロ圏、中国、日本、インドの経済成長見通しは下のグラフの通りです。

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中国の成長率は今年、1990年以来初めて6%を割り込むと予測。アメリカ経済に下振れリスクはあるものの、「景気後退の可能性はない」とオーネゾルゲ氏は断言しました。

世界全体の貿易量はドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争のあおりで急減速して昨年6月時点の予測より1.3%ポイントも下方修正しました。貿易戦争はアメリカ経済にもユーロ圏経済にもボディーブローのように効いています。

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オーネゾルゲ氏は「過去50年間で債務が積み上がる波が4つあり、2010年に始まった4つ目の波が最も大きく、速く、広範囲にわたっている」と指摘しました。世界の債務は政府と民間部門を合わせて対GDP比で200%をはるかに上回っています。

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現在の低金利が積み上がった債務のリスクを和らげているものの、3つ目の波は最終的に世界金融危機を引き起こしました。

世界金融危機が起きる前の2007年に今後10年の新興・途上国の成長率は平均6%というのが大方の見方でした。今同じ質問をすると4%です。「債務が急激に増えている上、長期的な経済成長見通しは減速しており、それだけ脆弱性は増している」とオーネゾルゲ氏は言います。

世銀のオーネゾルゲ氏(筆者撮影)
世銀のオーネゾルゲ氏(筆者撮影)

低所得国のインフレは柔軟な為替市場や中央銀行の独立性、低い政府債務を通じて1994年の25%から3%にまで下がりました。しかし財政が逼迫し、為替ショックのリスクが高まる中、安定して低いインフレ率を保つためには通貨政策や中央銀行を強化する必要があるそうです。

商品価格やサービス料金、賃金、利子率の決定を自由市場に任せず、政府当局が管理する価格統制は手っ取り早い方法のように見えて、投資と経済成長を損ない、貧困問題を悪化させます。社会的なセーフティネットを拡充し、競争を促す改革、しっかりした規制が必要です。

世界金融危機以降の生産性の伸びが過去40年より広範囲にかつ急激に減速しています。新興・途上国における生産性の伸びの減速は投資の弱々しさ、緩慢な効率性の改善、セクター間のリソースの再配分の停滞を反映したものです。

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世界金融危機以降、教育や職業訓練による労働生産性の改善ペースが減速し、停滞しているのが主な原因だそうです。

国際通貨基金(IMF)は昨年11月、世界の公的部門と民間部門の債務が計188兆ドル(約2京円)と過去最大を更新したことを明らかにしました。世界のGDPの約2.3倍です。債務が急速に積み上がっているのは新興・途上国で、中でも中国の民間債務が非常に大きいそうです

先進国の金融緩和で金利が低下し、借り入れがしやすいことが債務を拡大させています。しかし成長分野への投資が十分に行われていないため、生産性が一向に改善していません。日本の場合、政府債務残高は対GDP比で240%近くまで膨らんでいます。

現代貨幣理論(MMT)の主唱者ステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校教授は「巨額の財政赤字でもインフレも金利上昇も起こらない日本はMMTの成功例」と主張しています。オーネゾルゲ氏はMMTに関する筆者の質問にこう答えました。

「日本以外の先進国でも金利は非常に低く、政府の支出拡大につながっています。同じ議論が新興・途上国経済についても行われています。金利は低いものの、非常に脆弱です」

「先進国に比べ新興・途上国では金利の上昇が起こりやすい上、成長も落ち込みやすい。公的債務の拡大の方が金融危機を引き起こすリスクは民間債務の拡大よりも若干多い」

(おわり)