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1000人と関係の英王子、未成年性交疑惑で「解任」3500万円報酬も撤回 米当局の召喚迫り女王が決断

木村正人在英国際ジャーナリスト
17歳の時にアンドルー王子(左)と関係を持ったと証言しているバージニアさん(提供:Shutterstock/アフロ)

交際した女性は1000人超

[ロンドン発]交際した女性は1000人を超えると言われるプレイボーイ、アンドルー英王子(59)=英王位継承順8位=が20日、勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年性的搾取疑惑に関連して公務からしばらく退き、米捜査当局の召喚に応じる考えを表明しました。

エプスタイン被告との関係について「判断を間違ったことを深く後悔し続けている。彼の自殺は被害者にとって多くの未解明な問いを残した。私にできることは被害者の皆さんが人生を再建できることを願うだけだ」と改めて声明の中で記しています。

英紙デーリー・テレグラフなどは、米捜査当局の召喚が間近に迫り、エリザベス英女王が事実上、アンドルー王子を「解任」し、年24万9000ポンド(約3500万円)の報酬も撤回したと報じています。米国の法廷で疑惑を一掃できなければ、そのまま「引退」を余儀なくされる恐れもあります。

1982年のフォークランド紛争時、王位継承順2位だったアンドルー王子は空母インビンシブルのヘリ操縦士として戦場に向かい、国民的英雄になりました。

「疑惑の女性と会った記憶がない」

エリザベス女王の溺愛とチャールズ皇太子の「スペア」という気楽さからモデルやボンドガールと奔放な女性関係を続けてきました。元妻ファーガソンさんとの関係も良好ですが、よりを戻さないのは自由恋愛を楽しみ続けるためとも言われています。

アンドルー王子は英BBC放送の報道番組ニューズナイトのインタビュー(16日放送)に応じ、エプスタイン被告との関係を釈明。同被告の「性奴隷」だった米女性バージニア・ロバーツさん(35)が17歳の時に性的関係を持った疑惑について「彼女と会った記憶がない」とごまかしたことが大きな批判を招きました。

さらにエプスタイン被告の未成年性的暴行・搾取について「相応しくない態度」とかばうように表現したことも英国民の激しい怒りを巻き起こしました。アンドルー王子とエプスタイン被告の親しすぎる関係を英メディアの報道から振り返っておきましょう。

アンドルー王子とエプスタイン被告の危険な関係

1999年、アンドルー王子が英メディア王ロバート・マクスウェル氏(故人)の娘ギレーヌ・マクスウェル氏の紹介でエプスタイン被告に会う。90年代前半にすでに、ギレーヌ氏から恋人のエプスタイン被告を紹介されていたという疑惑も浮上。アンドルー王子の説明にすべて疑問符がつく。

2000年、アンドルー王子とギレーヌ氏がエプスタイン被告とともに米フロリダ州パームビーチにあるドナルド・トランプ米大統領の別荘マー・ア・ラゴで過ごす。

同年6月、エプスタイン被告とギレーヌ氏がエリザベス英女王主催のウィンザー城でのダンスパーティーに招かれる。

同年12月、アンドルー王子がギレーヌ氏の誕生日を祝うパーティーをエリザベス女王所有のサンドリンガムの別邸で開く。エプスタイン被告も招かれる。

01年、バージニア・ロバーツさん(当時17歳)の証言によると、アンドルー王子と3回性的な関係を持つ。最初の関係はロンドンにあるギレーヌ氏邸。あとの2回はニューヨークのエプスタイン被告邸、そしてカリブ海に同被告が所有する島でのどんちゃん騒ぎだったとされる。

06年5月、未成年者への性的暴行でエプスタイン被告に逮捕状。その2カ月後、同被告はアンドルー王子の長女ベアトリス王女の誕生日を祝ってウィンザー城で開かれた仮面舞踏会に招待される。

08年、エプスタイン被告が司法取引に応じて未成年者買春の罪を認め、禁錮1年半の有罪判決。この時の担当はフロリダ州マイアミの連邦地方検事で、後にトランプ大統領に労働長官に指名されるアレクサンダー・アコスタ氏。アコスタ長官はその後、秘密裏に行った司法取引を批判され、辞任に追い込まれる。

10年、アンドルー王子はエプスタイン被告の出所を祝ってニューヨークで開かれた身内のディナーパーティーに出席。エプスタイン被告邸で女性を見送る姿や、セントラルパークをエプスタイン被告と一緒に歩いているところを隠し撮りされる。

11年、アンドルー王子が疑惑に関連して英貿易特使を辞任。

15年、英王室が、アンドルー王子が17歳だったバージニアさんと性的関係を持ったという裁判所への訴えを否定。バージニアさんの証言は「信用できない」と退けられ、アンドルー王子に関する訴えは裁判記録から削除される。

19年7月、エプスタイン被告が性的搾取を目的とした未成年者の人身取引容疑で再逮捕される。有罪の場合、最高45年の禁錮刑が科される可能性があり、被害者の中には14歳の少女も。3週間後に自殺。

同年8月、エプスタイン被告の別の被害女性ジョアンナ・シェーベルイさんも01年にニューヨークの同被告邸でアンドルー王子に胸を触られたと証言していることが発覚。

自分の遺伝子を残す「牧場」を計画していた性豪

バージニアさんはBBCの調査報道番組パノラマの取材に応じていましたが、アンドルー王子のインタビュー前に放送されなかったことに憤慨しています。

マンハッタンの収容施設で死亡しているのが見つかったエプスタイン被告はアンドルー王子のほか米大統領就任前のトランプ氏やビル・クリントン元米大統領ら政治家、有力者、著名人らと「セレブな関係」を続けていました。

このため同被告の死は「自殺」ではなく「口封じのための他殺」との憶測もくすぶっています。

エプスタイン被告は食事と同じく1日3度オーガズムに達しないと満足できなかったと言われるほどの性豪。自分の遺伝子を残すためニューメキシコの牧場で20人の女性を妊娠させ、自分の死後は頭部と性器を冷凍保存する計画を立てていたと報道されています。

性の報酬は1回3万2500円

英王室は「アンドルー王子が人的搾取を許容し、参加し、促したと示唆されるのは耐え難い」と疑惑を全面否定。アンドルー王子も声明を発表して「逮捕や有罪につながる、いかなる行動も目撃せず、疑いもしなかった」と身の潔白を主張してきました。

しかし法廷には2000点もの証拠書類が提出され、「王子に胸を触られた」「王子が若いロシア人女性に足をマッサージしてもらっているのを目撃した」という証言が相次いでいます。同被告は自分の身を守る保険として隠しカメラで有力者やセレブの「いけない遊び」を撮影していたとも言われています。

数十人の未成年女性が性的搾取され「恐怖の館」と呼ばれていた悪名高きエプスタイン被告の居宅(時価約90億円超)に出入りしていたアンドルー王子は中で何が行われていたのかを知り得る重要な証人です。

未成年女性に与えられた性の報酬は1回300ドル(約3万2500円)程度だったと言われています。1999年半ばからエプスタイン被告に性的マッサージを強いられていた別の女性は英王室の夏の休暇地バルモラル城に滞在し、アンドルー王子と楽しんだと証言しています。

英王族だからと言って特別扱いは無用です。アンドルー王子は米捜査当局に洗いざらい証言することが求められています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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