これでは韓国になめられて当然だ 日本のビジネス環境ランキング34位から39位に転落
[ロンドン発]世界銀行は10月31日、世界190カ国・地域の起業のしやすさをランク付けした「2019年ビジネス環境ランキング」を発表しました。日本の総合順位は34位から39位に転落し、安倍晋三首相が掲げる「20年までに先進国の中で3位」という目標はさらに遠のきました。
19年版の1位ニュージーランド、2位シンガポール、3位デンマークは18年版と同じ。4位香港と5位韓国は順位が入れ替わっています。
日本は「破綻処理」は190カ国・地域中1位(韓国11位)で制度の透明性や手続きの簡便さが評価されましたが、「法人設立」93位(同11位)、「信用供与」85位(同60位)、「納税」97位(同24位)とお隣のライバル・韓国に大きく引き離されています。
英語でビジネスができない、ビジネス文化がグローバルスタンダードからかけ離れていることが大きな理由です。しかし、もっと大きな問題があるようです。
今年6月、シンクタンク・大和総研経済調査部の溝端幹雄氏が規制改革推進会議の行政手続部会で次のような指摘をしています。
「国と地方の行政手続きコストにより国内総生産(GDP)の1.16%に相当する6.2兆円の損失が発生する。行政手続きコストを2割削減すればGDPの0.24%、1.3兆円の経済効果がある」
(1)行政手続きの電子化の徹底
(2)同じ情報は1度だけの原則
(3)書式・様式の統一
の3原則を徹底して2020年3月までに行政手続きコストを20%以上削減することを目指しています。
2割削減により企業は国関連の手続きで年間7700万時間(金額に換算すると1958億円)、地方関連では1億9700万時間(5017億円)の節約が可能になるそうです。
溝端氏は16年12月のレポートでこう提案しています。
「すべての行政手続きの数と時間を3分の1に削減すれば、ビジネス環境ランキングは先進国中8位に上昇するだろう。行政手続きの手数料を半分にすれば4位に上昇する。さらに負債に関する貸し手・借り手の法的権利を強化すれば、日本のランキングは先進国中3位も射程圏内に入る」
行政手続きは放って置くとどんどん増えてしまいます。英国では「1つ新しい規制を増やしたら、古い規制を2つ撤廃する」を合言葉に規制緩和を進めてきました。
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートは8割の成果は2割の努力で生み出されるという「パレートの法則」に気づきましたが、英国では大切な2割に集中して仕事をするビジネス習慣が徹底しているそうです。
英国の欧州連合(EU)離脱の是非はさておき、日本のように行政手続きが煩雑だと、とてもEU離脱のような荒業は思いもつかないでしょう。
右肩上がりの大量生産・大量消費時代は日本のやり方でも良かったのかもしれません。今や日進月歩のデジタル時代です。いつまでも昔のやり方に縛られていては、ビジネス環境ランキングは下がっていく一方です。
ネットの対内直接投資を見ても、188億ドルの日本は先進7カ国(G7)の中で最下位。170億ドルの韓国にいつ抜かれてもおかしくない状況です。
安倍首相は「岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。しかし私は絶対に屈しません。首相である私が先頭に立ち、ドリルの刃となってあらゆる岩盤規制を打ち破っていく決意であります」と誓いました。
しかし岩盤規制は今も、がっしりと日本の桎梏となり続けているようです。
(おわり)