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【激写】ヘンリー王子はアガっていた? 結婚式で「愛の力」「スタンド・バイ・ミー」を世界に発信

木村正人在英国際ジャーナリスト
新婦のメーガンさんはなぜか馬車の左に乗っていた(筆者撮影)

メーガンさんを撮らえた

[ウィンザー発]英王位継承順位6位のヘンリー王子(33)と米人気女優メーガン・マークルさん(36)の結婚式は何から何まで型破りでした。シカゴのマイケル・カリー主教の説教13分は長く感じましたが、公民権運動を指導した故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師から引用しながら「愛の力」について語りました。

結婚式当日、筆者は午前1時半(日本時間同日午前9時半)に起きてシャワーを浴び、大枚70ポンド(1万500円)を張り込んでハイヤーで午前3時半に出発。1時間後、ウィンザー城に到着するとカナダや米国からの観光客が一番写真を撮りやすいコーナーを占拠していました。

泊まり込みで特等席を押さえる観光客や市民(筆者撮影)
泊まり込みで特等席を押さえる観光客や市民(筆者撮影)

2011年、ウィリアム王子(35)とキャサリン妃(36)の結婚式を新聞社のロンドン特派員として取材した時は支局で原稿処理に追われていたので、現場に出ることができませんでした。

今回は『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント』の著者で、筆者が主宰していた「つぶやいたろうメディアラボ」メンバー、浅見実花さんの協力で、筆者はウィンザー城につながるザ・ロング・ウォーク、浅見さんはウィンザー城から2人が出てくるルートを押さえました。

この日ばかりは列を作るのが大好きな英国人も、し烈な場所取り合戦を繰り広げました。3段脚立を持参した筆者はタケノコのようにニョキニョキ伸びてくる自撮り棒のスマートフォンをかいくぐって、午前11時50分過ぎ、母親ドリア・ラグランドさん(61)と一緒に車でウィンザー城に入るメーガンさんの「透かし撮り」に何とか成功。

母親ドリアさんとメーガンさんの「透かし撮り」に成功(筆者撮影)
母親ドリアさんとメーガンさんの「透かし撮り」に成功(筆者撮影)

「透かし撮り」とは窓越しに撮影するテクニックです。車は予想していたより速いスピードで一気にザ・ロング・ウォークを走り抜けましたが、愛機のニコンD7200が頑張ってくれました。

「メーガンさんが馬車の左に乗ってる?」

すぐにYahoo!ニュース個人に写真をアップしようとしましたが、10万人のツイッターが飛び交っているのか、スマホの4Gがなかなかつながりません。でもティアラのダイヤモンドと笑顔のメーガンさんが写っていて思わずガッツポーズ。

浅見実花さん撮影
浅見実花さん撮影

写真と原稿を何とかアップ。次のシャッターチャンスは2人の馬車パレードです。パレードが始まると、浅見さんからワッツアップで「左に乗っている」とテキストが。「ええッ、ウソでしょう」と声が上ずりました。過去の馬車パレードを3つ調べると、新婦は必ず馬車の進行方向に向かって右側に座っています。

浅見実花さん撮影
浅見実花さん撮影

ロイヤルプロトコルとは前例を踏襲すること。この日の主役は何と言ってもメーガンさん。だから2人とも道路の右側に陣取っていたのです。今更、道路の左側には渡れない。もう右側で全力を尽くすしかありません。車と違って馬車はぱかぱか走ってくれるので、ファインダーでしっかり確認してから連写しました。

メーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)
メーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)

親しいイタリアの女性フォトグラファーに「どうだった」と尋ねると、やっぱり右から狙っていたとの返事。「なぜ?」という筆者の疑問に彼女いわく「ヘンリー王子、結婚式でメーガンさんのベールを上げるのを10分も忘れていたぐらいよ」と解説してくれました。

あごひげもそらず堂々とメーガンさんと熱い口づけを交わしたヘンリー王子ですが、結構、アガっていたのかもしれません。メーガンさん目がこぼれ落ちそうなぐらいくりくりしていて、筆者のメーガン・マニア度もさらに上昇。ヘンリー王子もデレデレなんでしょうね。

ザ・ロング・ウォークを埋めた市民や観光客(筆者撮影)
ザ・ロング・ウォークを埋めた市民や観光客(筆者撮影)

ウェディングドレスもロイヤルプロトコルの英国ではなくフランスブランドのジバンシィ。欧州連合(EU)から出ていくのでフランスに気遣ったのでしょうか。

皆それぞれ着飾っている(筆者撮影)
皆それぞれ着飾っている(筆者撮影)

スタンド・バイ・ミーに涙

結婚式はオプラ・ウィンフリー、ジョージ・クルーニー夫妻、セリーナ・ウィリアムズとアレクシス・オハニアン夫妻、デービッド・ベッカム、ビクトリア夫妻、亡き母ダイアナ元皇太子妃の親友だったエルトン・ジョンらが顔をそろえ、大西洋をまたいで米英のセレブリティが勢揃いした感じでした。

筆者は黒人聖歌隊による「スタンド・バイ・ミー」のゴスペル(黒人霊歌)に思わず落涙してしまいました。メーガンさんは父親トーマスさん(72)方の異母姉兄から心無い攻撃を受けています。自力でキャリアをアップし、幸せになるメーガンさんがどうしても許せないのです。

今、世界は白人・男性・シニア・保守と、非白人・女性・若者・リベラルに分断されています。バラク・オバマ前米大統領や民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏に対するドナルド・トランプ米大統領の執拗な攻撃やメーガンさんへの異母姉兄の嫌がらせはその象徴です。

肌の色、言語や文化、伝統の違いを超えて「スタンド・バイ・ミー」とメーガンさんとヘンリー王子が世界に呼びかけていると思うと、涙を抑えることができませんでした。「愛の力」「スタンド・バイ・ミー」が今の世界に一番必要な言葉なのでしょう。

ウィンザーの街中を行進する衛兵(浅見実花さん撮影)
ウィンザーの街中を行進する衛兵(浅見実花さん撮影)

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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