フェイスブック英国法人の法人税は昨年わずか80万円

英国での過度の法人税節税が明らかになったフェイスブック(写真:ロイター/アフロ)

給与やボーナスは1人3900万円

米大手ソーシャルメディアのフェイスブックが昨年、英国の従業員に自社株の上昇分を含め、給与やボーナスを平均で21万ポンド(3866万円)も支払っていたのに、法人税は4327ポンド(約80万円)しか納めていなかったと英メディアが一斉に報じた。

多国籍企業の税逃れ防止に取り組んできた経済協力開発機構(OECD)は今月5日、行き過ぎた節税の抜け道を塞ぐ「税源侵食と利益移転(BEPS)」をめぐる新ルールを発表し、8日の主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で承認されたばかり。

世界的人気サッカー選手、メッシやネイマール(いずれもバルセロナ)が相次いで脱税で摘発されるなど、国際的な課税は強化されている。

法人税率の低い国や租税回避地(タックスヘイブン)を利用した過度の節税で企業利益の最大化を図ってきた多国籍企業はビジネスモデルの見直しを迫られている。

サンデー・タイムズ紙によると、フェイスブック英国法人は昨年、1億500万ポンドの売上を計上。ロンドンの従業員362人に3540万ポンドに相当する株式を大盤振る舞いしていた。

その一方で法人としては2850万ポンドの損失を計上し、英税務当局の歳入関税庁にはたった4327ポンドしか納付していなかった。

平均的な英国の労働者は年収2万6500ポンド(約487万円)で、3180ポンド(約58万5400円)の所得税と2213ポンド(約40万円)の社会保険料を納めている。

節税の手口

フェイスブックの節税の手口はこうだ。

英国の顧客から得た利益を法人税が12.5%と低いアイルランドに置く国際本社に送る。英国の法人税は20%だ。さらにタックスヘイブンとして知られる英国の海外領土・ケイマン諸島(カリブ海)に移転する。ケイマン諸島では法人税はかからない。

フェイスブックは昨年、世界全体で125億ドルの売上があり、29億ドルの利益を上げた。英国の売上はその1割とみられている。

多国籍企業の行き過ぎた節税が英国で大きな問題になったのは3年前の秋。コーヒー店の国際チェーン、スターバックス英国法人が過去3年間で計12億ポンドの売り上げがあったにもかかわらず、法人税をまったく納めていないとロイター通信がスクープした。

2008年の世界金融危機で財政赤字が膨らみ、英国も厳しい財政再建が強いられた。スターバックスに対して怒った納税者は不買運動を起こした。

課税の公正さを求める声が高まり、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック、コカ・コーラ、半導体メーカーのインテルなどが俎上にあげられた。過度の節税を行っていた米多国籍企業への批判は英国だけでなく、ドイツ、フランスにも広がった。

スターバックスが行っていた節税のからくりは。

【手口その1】スターバックス英国法人は11年、コーヒー1杯につき代金の6%の知的財産使用料を英国の会社に支払っており、その額は2600万ポンドにのぼっていた。

【手口その2】コーヒー豆をスイスの会社を通して購入、オランダで煎った後、英国に持ち込んでおり、法人税が英国(当時の法人税率は26%)の約半分のスイスに利益を分散させていた。

【手口その3】子会社や関連会社間で融資を行い、スターバックス英国法人はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に4%を上乗せした利息を支払っていた。

ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ

米国の多国籍企業は、たとえば「ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ」と称される手法を使って、法人税の税率が低いアイルランドやオランダの子会社を組み合わせて、所得を高税率の国から低税率の国に移して、法人税の納付を可能な限り低く抑えていた。

アップルは特許権の使用料などの名目で、アイルランドの子会社やタックスヘイブンとして有名なカリブ海の英領バージン諸島の子会社に利益を移し、法人税を大幅に回避。12年9月末までの1年間に海外で納めた法人税率は平均1.93%だった。

米カリフォルニア州の場合、連邦法人税率は35%、州法人税率は8.84%。アイルランドの法人税率12.5%と比べるとかなり高い。

複数の国にまたがって活動する多国籍企業の場合、子会社や関連会社との取引を利用して、法人税の高い国で経費を計上し、「タックスヘイブン」と呼ばれる法人税の低い国で所得を申告する租税回避行為が行われてきた。

各国の税務当局は法人税を取り損ねないよう、まったく関係のない会社の取引と同じ価格で子会社・関連会社間の取引を計上するよう定めている。しかし、情報通信技術(ICT)やソーシャルメディアの発達に伴って知的財産やサービスといった無形資産が取引されるようになり、価格の算定が難しくなっている。

このため、各国とも法人税率を引き下げて多国籍企業が自分の国で法人所得を申告し、法人税を納めるよう促している。しかし、財政難の折、法人税率引き下げの穴を所得税や付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)の増税で埋めるわけにもいかず、にっちもさっちもいかない状態になっていた。

税源侵食と利益移転

OECDは12年6月、こうした「税源侵食と利益移転(BEPS)」の問題に取り組むためプロジェクトを立ち上げ、13年7月、行動計画を公表した。

問題をそのまま放置すれば、(1)タックスヘイブンなどの抜け道を利用できる多国籍企業の方が国内企業に比べ有利になる(2)多国籍企業が合法的に法人税の支払いを回避できれば納税者の不公平感が高まる(3)税引後利益が高い活動に投資が振り向けられる――などの歪みが拡大する。

このため行動計画では(1)法人税の国際的な一貫性(2)税制と経済活動の実体の整合性(3)透明性――が3つの柱に置かれ、二重非課税の解消に取り組んできた。多国籍企業が活動するそれぞれの国でどれぐらいの利益があり、法人税を納めているのか、透明性を確保することで、経済活動の実体に応じた納税を行わせるのが狙いだ。

OECDの試算では多国籍企業の税逃れの規模は年1000億~2400億ドルにのぼり、世界の法人税収入の4~10%に相当する。この問題を主導してきた英国のオズボーン財務相は「人々は巨大多国籍企業が納税を回避していることにうんざりしている。これは税金が低いか、高いかの問題ではない。納税の問題なのだ」という。

トムソン・ロイターの調査によると、欧州の企業の59%が租税回避を行って企業利益を最大化するビジネスモデルを変更すると答えた。米州やアジア・太平洋の企業の48%が同様に回答した。アマゾンやスターバックスはすでにビジネスモデルを変える方針を明らかにしている。

節税天国になっていたアイルランドも2020年までに抜け道を塞ぐ方針だ。グローバリゼーションに伴って国際課税も大きなターニングポイントを迎えた。

(おわり)

参考:「OECD/G20 BEPSプロジェクトの現状-2014年報告書等」