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プリンセスの名は「シャーロット」、アナ雪越えを期待

木村正人在英国際ジャーナリスト

「シャーロット・エリザベス・ダイアナ」の意味

ウィリアム王子(32)とキャサリン妃(33)の第2子、プリンセスの名前は「シャーロット・エリザベス・ダイアナ」――と、ケンジントン宮殿が4日午後、発表しました。

シャーロット王女とキャサリン妃、ウィリアム王子(ケンジントン宮殿のツィッター)
シャーロット王女とキャサリン妃、ウィリアム王子(ケンジントン宮殿のツィッター)

正式には「ハー・ロイヤル・ハイネス・プリンセス・シャーロット・オブ・ケンブリッジ」、略して「シャーロット王女」「プリンセス・シャーロット」と呼ばれることになります。

ケンジントン宮殿によると、「シャーロット・エリザベス・ダイアナ」と名付けた理由について、ウィリアム王子とキャサリン妃の2人は「名前に語ってもらおうと思っています」と話しているそうです。

英国の賭け屋スカイベットによると、性別がわからなかった誕生前は女の子ならアリスが「本命」の名前でした。それが誕生後はシャーロットがアリスを逆転して一番人気になっていました。

賭け金は十数億円

プリンセスが誕生した土曜日(2日)、日曜日(3日)に名前を当てる賭けが殺到し、一説では数百万ポンド、日本円にして2億円から十数億円の掛け金が飛び交ったと言われています。

スカイベットによると、名前の倍率は――。

(1)シャーロット、3.25倍

(2)アリス、4倍

(3)オリビア、5倍

(4)ビクトリア、6倍

(5)エリザベス、8倍

(6)ダイアナ、9倍

アリスを逆転して本命になった「シャーロット」にプリンセスの名前が決まったことで、配当金の支払いに追われる賭け屋が破綻しないか少し心配です。

「ダイアナ」に驚き

筆者は4日の発表直前、東京のFM局に電話出演し、「プリンセスの名前はシャーロットになるのでは」と個人的な予想を述べました。しかし、名前の一部に「ダイアナ」が入るとは予想もしませんでした。

男の子の名前の「チャールズ」が女の子になると「シャーロット」に変化するそうです。ジョージ王子の名前は「ジョージ・アレクサンダー・ルイス」。エリザベス女王の父親はジョージ6世です。

お世継ぎには英国王室で伝統的な「ジョージ」という名前をつけた2人はきっと第2子のプリンセスにはプライベイートな名前をつけるはず、と筆者は考えました。

父親のチャールズ皇太子の「チャールズ」を女の子の名前にした「シャーロット」にするところまでは予想できました。

しかし、ダイアナという名前について、FM局には「2人は形見のサファイアの指輪など必ずどこかに故ダイアナ元皇太子妃の面影をしのばせています。しかしダイアナという名前にフォーカスが当たることを避けるのでは」と述べました。

ウィリアム王子とキャサリン妃は、シャーロット王女の重荷になるかもしれない「ダイアナ」の名前をあえて加えました。

受け継がれるダイアナの優しさ

ウィリアム王子にとって、最愛の母ダイアナ妃の名前がロイヤルファミリーの歴史から完全に消えてしまわないようどこかに残しておきたかったのでしょう。

エリザベス女王が名前を気に入らなければ首をヨコに振るかもしれません。「シャーロット・エリザベス・ダイアナ」と3つの名前を組み合わせることで、ウィリアム王子はチャールズ皇太子もエリザベス女王も「ノー」とは言えないように配慮したのだと思います。

ジョージ王子は「ジョージ・オブ・ケンブリッジ」。シャーロット王女は「シャーロット・オブ・ケンブリッジ」と呼ばれます。

優しい心を持っていたダイアナ妃は英国赤十字社の地雷除去キャンペーンでボスニアを訪問、サラエボの墓地で息子の墓参りをする女性と抱き合い、世界を驚かせました。

こうした精神はロイヤルファミリーに受け継がれ、チャールズ皇太子とカミラ夫人、ウィリアム王子とキャサリン妃もチャリティーに力を入れています。

アナ雪越えなるか

4日、ロンドン市内では観光名所のハイドパークやロンドン塔、シティー・オブ・ロンドンで祝砲124発が鳴らされました。観光客も大喜びです。中国でもウィリアム王子、キャサリン妃は大人気だそうです。

ジョージ王子を抱くウィリアム王子(ケンジントン宮殿のツィッター)
ジョージ王子を抱くウィリアム王子(ケンジントン宮殿のツィッター)

ジョージ王子誕生の経済効果は4億ポンド(約730億円)。

シャーロット王女誕生の経済効果はケーキ、プロセッコ、マグカップ、プレート、Tシャツの売り上げなど、すでに8千万ポンド(約145億6千万円)。10歳になるまでに10億ポンド(約1820億円)の経済効果があると予想されています。

大ヒット作『アナと雪の女王』に恵まれたディズニーは昨年9月の通期決算で488億1300万ドル(5兆6300億円)の売り上げを記録しました。プリンセス効果は「アナ雪」で実証済みです。英国は、シャーロット王女の経済効果に大いに期待しています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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