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あなたの2015年大予測は?

木村正人在英国際ジャーナリスト

みなさん、明けましておめでとうございます。さて、2015年はどんな年になるでしょうか? 英誌エコノミスト、英紙フィナンシャル・タイムズ、日経新聞が分析した予測をみながら、新年を占ってみたいと思います。

ちなみに予測はよく外れます。3メディアの予測に【筆者の見方】も加えてみました。みなさんも自分の大予測を立ててみてください。

エコノミスト誌の大予測

(1)安倍晋三首相の経済政策アベノミクスは時間切れ

日銀の黒田東彦総裁が掲げた「2年程度で2%の安定インフレ」が15年には期限を迎えるが、達成は難しい状況だ。15年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字額の対GDP(国内総生産)比を10年度の半分にするという目標達成も不可能だ。

国会で審議される安保法制への抵抗も強く、終戦70周年に合わせて中国や韓国の反発がエスカレートしそう。15年も14年の繰り返しになる恐れがある。

【筆者の見方】エコノミスト誌の予測が書かれた時期が早かったため、前提がいくつか崩れている。

消費税の再増税を先送りした上で解散・総選挙に踏み切り、自民・公明の連立与党で衆院の3分の2以上の議席を維持。安倍首相は時間切れにならないよう4年の時間を確保した。

15年9月の自民党総裁選での再選も問題なさそう。安倍首相が国家色を弱め、経済政策に専念できるかどうかが大きな分かれ目になる。

(2)中国の経済成長は減速するが、さらにパワーアップ

為替の影響を排除した購買力平価(PPP)ベースでは世界一の経済大国として15年を迎える中国。経済の減速は中国の領土的野心を抑えることはない。

16年には宇宙実験船「天宮2号」も打ち上げられる。15年に中国のインターネット利用者は、米国と日本の利用者を足した数の倍に相当する7億5千万人に。当局によるネット監視が強化されるのは必至だ。

【筆者の見方】人口ボーナス期のピークを過ぎた中国は輸出主導型経済から内需型経済への転換が急務になっている。中流階級が拡大すれば、いずれ中国共産党に民主的な改革を突きつけるようになる。

それが20年後になるか、30年後になるか。経済成長が持続する間はすべての問題を覆い隠す。政策金利の引き下げで高利回り商品が破綻し、来年は金融危機が発生するリスクが膨らみそうだ。

(3)インターネットの大憲章を

15年6月15日にマグナ・カルタ(大憲章)の800周年を迎える。国家も巨大ネット企業も無断で個人情報を利用できないようにするため、インターネットの自由と開放性を守る大憲章が必要だ。

【筆者の見方】インターネットが無法地帯にならないよう国際的なガバナンスが必要だ。国家アクター、犯罪組織、テロ組織、ハッカーがサイバー空間を暗躍する中、統一したルールが不可欠なのに、米国、欧州、ロシア、中国の利害が激しく対立し、協議は難航している。

(4)ナショナリズムが復活

企業活動や技術、金融が世界の結びつきを強めているにもかかわらず、欧州からアジア、米国にかけ、ナショナリズムが台頭していることが顕著になっている。21世紀の統合モデルである欧州連合(EU)も不協和音を奏でている。

アジアでは、インドのモディ首相、日本の安倍首相、中国の習近平国家主席は国内改革を進めるためナショナリズムを使っている。しかし、3人のナショナリズムは外向きの面も持ち合わせている。原則では譲らないものの、違いをコントロールするよう努めるだろう。

フィナンシャル・タイムズ紙の大予測

(1)英総選挙で「挙国一致政府」は誕生するか?

スコットランド地方の地域政党・スコットランド民族党(SNP)と、欧州連合(EU)からの離脱を唱える英国独立党(UKIP)の台頭を受けて、保守・労働両党の大連立による「挙国一致政府」が誕生する可能性がある。

【筆者の見方】世論調査の推移をみると、あってもおかしくないシナリオだ。欧州では極右・極左政党の台頭で、中道右派と中道左派による大連立が目立ち始めている。

筆者は、UKIPはたたけばホコリがたくさん出てくるので総選挙前に失速、保守・自由民主の両党が少数政権かもしれないが連立を維持するとみている。政局が暗礁に乗り上げれば、再び総選挙が行われるだろう。

(2)原油価格は1バレル=50ドル以下まで下がる?

供給は増える見通しで、中国や新興国の需要が戻るまで数カ月はかかる。50ドルを下回るだろう。しかし、原油生産への投資が被害を受ければ受けるほど価格の戻しも急激になる。

(3)欧州中央銀行(ECB)はフルスケールの量的緩和に踏み切るか?

ECBはバランスシートを約1兆ユーロに拡大するとみられている。反対はあってもECBが量的緩和に追い込まれるのはほぼ確実だ。

(4)ロシアはウクライナや欧州で新しい領土を併合するか?

経済危機や欧米諸国による経済制裁のため、ロシアのプーチン大統領は少なくとも15年は拡張主義を止めることになる。しかし、経済危機から国民の目をそらせるため、ウクライナ危機でナショナリズムをあおり国内の人気取りに走る恐れがある。

(5)米国はイラクやシリアのイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」をたたくため地上部隊を派遣する?

空爆を支援する特殊部隊はすでに派遣されている。バグダッドへの軍事顧問を増やすことになるが、欧米諸国が戦闘のためイラクやシリアに地上部隊を派遣することはない。

(6)中国の経済成長は7%を下回る?

下回るだろう。中国は低インフレを防ぐため、おそらく金融政策を一段と緩和する。

(7)モディ首相下でインドの経済成長率は加速する?

13年に5%を下回った経済成長がモディ首相になって5.7%まで回復。しかし、7~9%の経済成長に戻すには労働市場や税制、直接投資の構造改革が必要だ。

日経大予測2015

(1)アベノミクスは失速するの?

安倍政権が経済最優先の基本線を守り、引き続き機動的な政策対応を進めるならば、2015年も市場を味方につけることが可能だろう。

【筆者の見方】安倍首相には株価にらみの政策は卒業してほしい。日銀の黒田バズーカ2、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用拡大の決定、補正予算といったカンフル剤で庶民の暮らしは良くならない。

(2)日経平均株価は2万円を超えるの?

世界各地の地政学リスクが落ち着き、米国の景気も順調に拡大し、欧州経済が深刻な低迷期に入らなければ、日経平均が15年中に2万円台を回復する局面がくるかもしれない。

【筆者の見方】米国の景気は順調に拡大しても、ドイツのメルケル首相が緊縮財政策を放棄して緩和路線に転換しない限り欧州経済が深刻な景気低迷を回避するのは難しい。ロシアのプーチン大統領や中国の習主席は経済への影響を懸念して現実路線にカジを切り始めているように見える。

世界経済のリスクが大きくなれば円や日本国債が買われ、円高になり、日経株価平均は下がる。

(3)15年に日本を待ち受ける3つの嵐とは?

15年は第二次大戦の終結70周年、日韓国交正常化50周年。1つ目の嵐は「歴史包囲網」。2つ目の嵐は領土問題。3つ目の嵐は中露の軍事協力。

【筆者の見方】先の大戦で日本は侵略国家ではなかったという政治家がいるから歴史問題が争点化する。

終戦50年の村山談話、河野談話とアジア女性基金の取り組みを踏まえ、安倍政権が近隣諸国の心情に配慮した戦後70年談話を出せるかが最大のポイント。

中国VS米国という対立構造の中で日本が歴史問題で少々強く出ても米国や欧州は黙認せざるを得ないと高をくくっていると大変なことになる。安倍首相と周辺が頑なな態度を取れば、欧米の気持ちも次第に日本から離れていく。

(4)中国経済大改革の行方は?

内需を拡大し、成長を持続させるためには富の偏在を改める必要がある。中国の経済改革は効率性と公平性という二兎を追わなくてはならない。中国の構造改革は始まったが、本当の答えが出るのは随分と先になる。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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