アベノミクスで開いた日本と中国の国力「さまよえる靖国」(17) 

「たった1人のジャーナリストよりも、読者は多くのことを知っている」という米著名ブロガー、ダン・ギルモア氏の言葉を肝に命じてインターネットで情報発信している筆者だが、本当にその通りだと痛感する。

BLOGOSに寄せられたコメントから拾ってみる。

yahoo user 89aaeさん

「2010年に日本のGDPを抜き、昨年度は日本の倍のGDPである。どこの国も中国を快く思っているわけではないが、その市場や発展性を見て、それなりにつき合っているのである」

これは核心を突いている。購買力平価(PPP、国際ドル)ベースで見るとさらに顕著になる。昨年10月の国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでは、中国の国内総生産(GDP)は2002年に日本を追い越し、09年2.18倍、14年2.99倍、18年には3.75倍になる。

4倍以上、経済規模が開けば、中国にとって日本はもはや取るに足りない存在だ。

安倍晋三首相の経済政策アベノミクスは円を対ドルで最大で27%強も減価した。日本企業は「過去最高益を更新」と大はしゃぎだが、中国と日本の国力はそれだけ開いたことになる。

自衛隊が島嶼防衛力を増強すると言ったって自ずと限界がある。弱い通貨を求めることは国力を減じ、地域を不安定にすることを意味するからだ。

『大国の興亡』で有名な英国出身の歴史学者ポール・ケネディは、世界金融危機後、超金融緩和策(QE)を続けた米国について国内景気は回復するかもしれないが、対外的な国力を大幅に落とすことになると警鐘を鳴らした。

南シナ海や東シナ海、インドとの国境問題で中国が大胆に行動し始めたのは2008年の世界金融危機が分水嶺になったことはすでにお伝えした通りである。「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が中東・北アフリカを不安定にしたことと米国のQEは決して無縁ではない。

中曽根康弘首相が靖国神社に公式参拝した1985年、安倍首相が前回、靖国参拝を見送った2006~07年と現在とでは中国の国力が違いすぎるのだ。中国は米国が尻込みするほど力をつけている。

パピガニさんのコメントも興味深い。

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英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のマーク・フィッツパトリック元国務次官補代理が指摘した通り、東アジアの安全保障を考える上で、いかに米国が日米韓のトライアングを重視しているかをパピガニさんはわかりやすく図解している。

この中で面白いのは、日米中のトライアングルだ。

オバマ大統領に外交政策はない。北朝鮮の核・ミサイル問題に関する米国の「戦略的忍耐」は実は韓国の朴槿恵大統領にお任せ。シリア内戦・化学兵器使用問題ではプーチン露大統領の助け舟に飛び乗り、イラン核開発ではロウハニ・イラン大統領に頼むところが大きい。

対中外交はバイデン副大統領国に丸投げの状態だ。中国の習近平国家主席とバイデン副大統領は過去数年の間に極めて親密な関係になったという(米紙ウォールストリート・ジャーナル)。

クリントン前国務長官、キャンベル前東アジア・太平洋担当国務次官補が政権を去り、日米中トライアングルにおける米国の立ち位置は、日本側というより、緊張する日中間の行司役になってしまっている。

そんな状況下での安倍首相の靖国参拝は、これまで北朝鮮の核・ミサイル問題でくすぶり続けてきた米国への不信感、日本の独自路線志向の発露と分析することもできるだろう。しかし、これこそ日米同盟にヒビを入れようとあぶり出し作戦を続ける中国の思う壺だ。

従軍慰安婦問題で日本側が騒げば騒ぐほど日韓関係は悪くなり、日米韓の安全保障トライアングルは機能しなくなる。靖国参拝も同じ効果を持つ上、中国の外交攻勢に新たな口実を与えてしまった。

日韓の罵り合いで笑いが止まらないのは習国家主席なのか、それとも英メディアが勘ぐるように中韓との緊張を高めて日本国内のナショナリズムをあおり、憲法改正の原動力にすることを目論む安倍首相なのか。

紛争を起こさずに尖閣を今後、数十年にわたって守り抜かねばならない日本にとっては地域の緊張を和らげる方向に動くのが上策と筆者は思うのだが。

(つづく)

Main Endoさんのコメント

「ただのコメントを集めるプラットフォームではなく、そこから(1)インタビューというアクションに繋がって、(2)ほぼリアルタイムにフィードバックがあって、(3)さらに議論が発展。もちろんテーマ的には限られてますけれど、このスタイルは非常に興味深く思います」

欧米メディアはインターネットの特性を活かしてフロンティアを切り拓いています。つぶやいたろうも、微力ながらロンドンでがんばります。次回は『アメリカの時代の終わり』をいち早く指摘した米国際政治学者チャールズ・カプチャン氏らに質問しています。