最近、肉食者は肩身が狭い。日本ではまったくそう感じないが、スペインではそうだ。「動物虐待者だ」とか「持続不可能な人」だと思われているのだ。

もともと、スペインは日本に比べ動物虐待にセンシティブだ。

例えば、数年前あるJリーグの試合でお猿がキックオフをした、というニュースがあった。これを報じたスペインのスポーツ紙への反応には、日本ではなかなか見られないものがあった。

「動物虐待」だと言うのだ。猿まわしは日本だと伝統芸能だが、スペインでは動物虐待として非難の対象になり得る。

■温泉に入る猿は大好きなのに

スペイン人は温泉に入る猿は大好きで、長野県の地獄谷は人気観光スポットだが、キックオフする猿は嫌う。

最近のニュースに、温泉の湯もみをする猿、というのがあったが、あれにも眉をひそめる者はいるだろう。人間が動物に芸を教えお金を稼いでいる→動物搾取→動物虐待、という発想である。

昔「クジラは可愛いが、おいしい」と言ったら総スカンを喰った
昔「クジラは可愛いが、おいしい」と言ったら総スカンを喰った

同じ文脈で、私の大好きなシャチのショーとかイルカのショーとか、ひいては水族館一般、動物園一般を嫌う人は一定数いる(全員でも多数派でもない。念のため)。私は人を動物に近づける教育効果も大きいと思うが、虐待と考える人も少なくない。

よく知られているように日本の生け作りを残酷とする人もいる。スペインでは最近、虐待批判から一歩進んで「動物の幸福具合」が重視されるようになり、スーパーの肉のパックには“動物が苦しまず幸せな生活を送った”旨のステッカーが貼られるようになった。

■闘牛が本場で禁止される時代に

闘牛の国で何を偉そうに、と思うかもしれないが、その闘牛が動物愛護派によって禁止されるのが、今という時代なのである。禁止令のあるカタルーニャ州、バルセロナの闘牛場モニュメンタルではもう10年以上闘牛が開催されていない。

私は闘牛は好きではないが禁止しようとも思わない。

夫婦円満のためにも“肉食”は良い
夫婦円満のためにも“肉食”は良い

私は肉は大好きなのだが、動物虐待の文脈で肉食を残酷だとし、肉食者を残酷な人、と見なす人はいる。そうして、肉食を禁止しようとか妨害しようとする動きもある。

映画『バーベキュー』には、血(ペンキ?)を掛けたりショーウインドを壊したりの精肉店への破壊活動が出てくる。

■昆虫食推薦と牛肉批判はセット

さらに、肉食者の肩身が狭いことに、最近はエコロジーの観点からも批判されるようになった。

いわく、牛肉は肥育効率が悪い、牛のゲップは温室効果ガスだ……。昆虫食を薦める物言いには、牛を太らせるのにいかに大量の水や飼料が必要かを訴えることと、必ずセットになっている。

狩猟も批判の的。これはちょっと悪ふざけが過ぎた、と私も思う
狩猟も批判の的。これはちょっと悪ふざけが過ぎた、と私も思う

昨年7月、消費省の大臣が個人の健康と「地球の健康」のために肉食の抑制を訴えて大騒ぎになった。

生ハムで有名なスペインは、牧畜業、食肉加工業が重要な産業であるからだ。直ちに、サンチェス首相は「私はほど良く焼けたステーキに目がない」と発言、火消しに走らねばならなかった。

■作品よりも深い、肉食をめぐる背景

『バーベキュー』は、こんな昨今の逆風に暴力的に反撃する夫婦の話だ。

どんな方法で反撃するかは書かない。そこがおそらく唯一の、この作品の肝だから。予告編も見ない方がいい(ところで最近はネタバレ歓迎という若者もいるようだ。そういう人は動画を検索してほしい)。

以前紹介した『LAMB/ラム』と同じ問題を抱えている。サプライズ以外に発展がない。これさえわかってしまえば、後に見どころがない。

まあ、こんな映画を作るから、肉食者は野蛮なんて言われるのかも
まあ、こんな映画を作るから、肉食者は野蛮なんて言われるのかも

最初のうちは、過激な菜食主義者&アンチ肉食主義者への反発、という大義名分もあって笑えるのだが、そのうちそんなことはどうでもよくなり、モラル的に笑えなくなる。そこがブラックコメディとしては致命的だ。

それよりも、この作品の背景にある、肉食の倫理的&環境的是非について考える方が楽しい。

※『LAMB/ラム』についてはここ。

シッチェス、最優秀映画賞『LAMB/ラム』。過去の受賞作と比べると……

※写真はシッチェス映画祭提供。クレジットは(C) Cin france Studios