映画業界に明るい希望がはっきり見えた。去年とは大違いだ。

9月にサン・セバスティアン映画祭、10月にシッチェス映画祭を取材してきた。去年は厳戒下での開催だったが、今年は違った。

今年の感染対策は以下の通り。

①収容人数に対する入場人数は、サン・セバスティアン50~60%、シッチェス66%

②ファンのレッドカーペットへの接近禁止

スターが通る時は、ファンは接近禁止のレッドカーペット
スターが通る時は、ファンは接近禁止のレッドカーペット

③マスク着用

④全席予約制で席の移動は禁止

⑤入室前にジェルで手を消毒

⑥上映間隔が1時間から2時間で、この間に座席を消毒

⑦感染対策を守りましょう、というスポットを流す

これらは去年と共通だが、今年違ったのは以下の点。

まず、街の空気が違う。

昨年は屋外でも100%マスクで違反すれば罰金だったが、今年はソーシャルディスタンス(以下SD。1.5メートル)が守れればノーマスクでOK。街を歩いている人の半分ほどはマスクをしていない。あちこちに警察官がいて、監視されている感じはなくなった。

次に、厳格さの違い。

去年は「SDを守れ」とうるさかったが、今年は大人数が殺到してなければOK、という認識に変わったようで、間隔を詰めて列を作っていても何も言われない。シッチェスでは記者席は自由席となり、隣との間に空席を置かなくても良くなった。つまり、実質的にSDは廃止されていた。

シッチェスでは恒例の「ゾンビウォーク」が復活した。これはゾンビのメーキャップ、扮装で街を練り歩くイベント。去年は中止されていた。

筆者による2015年のゾンビウォークのレポート。

※ゾンビが中止を悲しむ昨年の粋なビデオ。

ついでに言えば、映画祭中に取材したサッカー、ソシエダ対セビージャでは記者は1つおきに座っていたが、応援席のファンはSDなど関係なく集団で声を張り上げていた。感染の脅威が下がって、「マスクかつSD」だった認識が「マスクまたはSD。どっちか一つでOK」に変わりつつあるようだ。

ソーシャルディスタンスを守りましょう、という上映前のアナウンス。だが実際は守られてなかった
ソーシャルディスタンスを守りましょう、という上映前のアナウンス。だが実際は守られてなかった

最後に、今後の見通しの違い。

去年の9月、10月と言えば、クリスマス後にピークを迎える第二波に向けて感染者が増加傾向にあった頃。対して今年は、ワクチンの効果で感染者数は減少の一途で、毎日、最少記録を更新している。

去年と今年の差を象徴するエピソードを紹介する。

シッチェス映画祭では昨年10月15日、入場者をキャパの50%に厳しくし、夜11時以降の上映を中止した。飲食店は終日営業中止になった。数週間後には、夜の外出禁止令が出ることになる。

今年の10月15日は入場制限が撤廃され、満席が許されることになった。開催が1週間ずれていれば、満員での通常開催ができるところだった(マスク着用は強制だが)。

そして、去年と同じく合わせて10万人以上を動員したイベントにもかかわらずクラスターは報告されていない。去年はちゃんと追跡調査をやったのかと疑ったが、今年は本当になかったのだろう、と推測する。

スペインの映画館は、去年3月の非常事態宣言からの1年間で5億4600万ユーロ(約730億円)の減収となった。今は全土で100%稼働可能。人の大移動があるクリスマス、年末が迫っているが、このまま何もなかったかのように月日が過ぎていくことを願うばかりだ。

※本文中の写真はすべて筆者撮影。

※両映画祭で68本の映画を見て来たので、次回からは個々の作品について書いていきます。下は、サン・セバスティアンでもシッチェスでも上映された衝撃作『タイタン』のポスター。

シッチェス映画祭提供
シッチェス映画祭提供