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WBC韓国代表のエース投手は“おじさん”?“日本キラー”キム・グァンヒョンらベテランが重要なワケ

金明昱スポーツライター
3月開催のWBCで韓国代表に選出されたキム・グァンヒョン(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「まだいるのか」と思った日本の野球ファンも多いかもしれない。

 3月に行われるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)韓国代表のメンバー30人が4日に発表されたのだが、投手陣に北京五輪などで日本と対戦し、かつて“日本キラー”と呼ばれたキム・グァンヒョン(SSGランダーズ)、2019年プレミア12でも代表に選ばれたヤン・ヒョンジョン(KIAタイガース)の名があったことに少し驚いた。

 韓国のメンバーには若手投手もいるが、スポーツ・芸能専門サイト「スターニュース」は「投手陣はまだ過去のエースに匹敵する若い選手が出てきていない」と世代交代の遅れについて指摘している。

 というのも共に34歳で、選手としてはベテラン。代表としての出場は今大会が最後になるとも言われているが、韓国語で言えば「アジョシ(おじさん)」的な存在にも映る。

 しかし、国際大会で経験豊富な2人のベテラン投手が代表入りしたことに、世論は好意的だ。キム・グァンヒョンは2008年北京五輪で日本と2度の対戦で好投し、金メダル獲得の立役者として有名。ヤン・ヒョンジョンも代表ではエース格の投手として国際大会で活躍してきたが、2人の経験、活躍によってはチームの士気がさらに高まるという見方が大半だ。

 WBC出場経験のある元千葉ロッテのキム・テギュンは「スターニュース」とのインタビューで「国際大会では一つの試合に勝たなくてはならない確実なエース、中継ぎ、抑えにも的確なカードが必要だ」と指摘している。つまりはベテランの2人がエースとてしての役割を果たすことで、勝利の形が見えてくるということだろう。

昨季13勝で防御率2.13のキム・グァンヒョン

 では、近年のキム・グァンヒョンの実力はどうなのか。

 2019年12月にメジャーのカージナルスと2年契約し、20年と21年の2年間で35試合に出場し10勝7敗、防御率2.97。22年から韓国プロ野球界に復帰しSSGランダーズ(旧・SKワイバーンズ)でプレー。34歳にして13勝3敗、防御率2.13と結果を残して、チームを12年ぶりのレギュラーシーズン優勝に導いただけでなく、韓国シリーズでは4年ぶり5度目の優勝の立役者となった。これだけの結果を残して迎えるWBCだけに、再び日本戦での好投を期待せずにはいられない。

 しかし、かつて日本を苦しめた時代の韓国のエースの存在感は健在とはいえ、1次ラウンド突破はそう簡単なことではない。

現役のメジャーは3人

 今回のWBC韓国代表には現役のメジャー選手が3人いるのも話題だ。ダルビッシュ有とチームメイトのキム・ハソン(パドレス)、一塁手のチェ・ジマン(パイレーツ)、2021年メジャーのゴールドグラブ賞を獲得し、父親がアメリカ人で母親が韓国人のトミー・エドマン(カージナルス)が代表入りした。WBCでは本人の国籍のほか、両親の国籍、出生地が当該国の場合でも出場資格がある。韓国系アメリカ人選手のWBC韓国代表入りは史上初だ。

 また、かつて中日ドラゴンズでプレーしていたイ・ジョンボム氏の息子で、昨季の首位打者、打点王でリーグMVPの外野手イ・ジョンフ(キウム)への注目度も高い。メジャー挑戦も公言していることもあり、特にWBCでの日本戦は力が入ることだろう。

 韓国代表が侍ジャパンと対戦するのは、3月10日の第1次ラウンドの第2戦。試合は2カ月後とかなり先だが、WBCでの日韓戦は2009年の決勝戦以来、14年ぶりとあって日韓では大きな注目を集めそうだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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