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イ・ボミらが“黄金世代”ならアマ15歳リ・ヒョソンは“新・黄金世代”「呪術廻戦が好き」最年少Vの衝撃

金明昱スポーツライター
今季韓国ツアー開幕戦に出場した韓国アマのリ・ヒョソン(写真・KLPGA)

 なんという結末だろうか。国内女子ツアーのメジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で優勝したのは韓国15歳のアマチュア、リ・ヒョソンだった。

 最終日を10位から出て、5バーディ、2ボギーで迎えた最終18番パー5。ここで起死回生のイーグルを奪って「67」、通算8アンダーでフィニッシュした。首位から出た昨季韓国ツアー賞金女王のイ・イェウォンと2位から出た山下美夢有を抜き去って逆転優勝。「15歳176日」での優勝は、勝みなみが2014年「KKT杯バンテリンレディス」でマークした「15歳293日」を更新し、ツアー史上最年少記録となった。

 何者かと思った人も多いだろう。実は韓国では“新・黄金世代”と呼ばれる世代の1人。いずれ世界に飛び出す逸材として注目されている。

韓国アマ2連覇の逸材

「1度の優勝も難しい」と言われる「韓国女子アマチュア選手権」を2022、23年に2連覇し、“勝負師”との異名を持つ。昨年の世界女子アマチュアゴルフチーム選手権では韓国を7年ぶりの優勝に導いたほか、今年は2月「アジアパシフィック女子アマ」で2位、3月の「クイーンシリキットカップ」でも韓国が個人(イ・ヒョソンは3位)と団体を5年ぶりに制覇。さらに4月の「ネイバーズトロフィー選手権」では団体、個人ともに優勝するなど、数々のタイトルを手中に収めている。

 ただ、昨年に初めて出場した「ワールドレディスサロンパスカップ」(茨城ゴルフ倶楽部・西コース)は通算21オーバーの113位で予選落ちしており、今回は雪辱を果たす場所でもあった。

 最終18番のイーグル狙いの2打目は、“失うものは何もない”とも言わんばかりのアマチュアらしい攻撃的な一打で、試合中に随所に見られた精度の高いショットは、難しいメジャーのセッティングでも十分に通用することを証明してみせた。

 試合後には「日本の大きな大会で優勝できて本当にうれしい。将来的にはぜひ日本ツアーに参加できたらいいなと思っています」と笑顔を見せていた。

イ・ボミら旧“黄金世代”の再来か

 彼女のほかにも韓国アマチュアには注目株がいる。世界アマチュアランキング4位のキム・ミンソル(17歳)、同14位のオ・スミン(15歳)、同23位が今回優勝したリ・ヒョソンと続く。つまりリ・ヒョソンよりももっとうまい選手が韓国にはいるということだが、その下のランクにもいずれプロで活躍できる選手が多く待機していると聞く。

リ・ヒョソンと共に“新・黄金世代”と呼ばれる韓国のオ・スミン(写真・KPGA)
リ・ヒョソンと共に“新・黄金世代”と呼ばれる韓国のオ・スミン(写真・KPGA)

 前述した通り、彼女たちは“新・黄金世代”との呼び名がある。元祖“黄金世代”は、韓国のレジェンドでもあるパク・セリを見て育った1988年生まれの申ジエ、パク・インビ、イ・ボミ、キム・ハヌルなどがそうだ。

 韓国女子は世界ランキング上位を席巻していた時代が長く続いていたが、現在トップ10には同5位のコ・ジンヨンしかいない。ようやく新たな強い世代が登場したことで、韓国女子ゴルフの復権が期待されている。

韓国は18歳からプロ入り…日本ツアーメンバー登録は?

 リ・ヒョソンの今回の優勝で、日本ツアーメンバーに登録するのかは気になるところ。ところが、彼女は「韓国では18歳にならないとプロになれない」と説明。現状では今後3年は韓国の高校でゴルフを続け、ナショナルチームの一員としての活動を継続するというのが現実的な道になりそうだ。

 それに今年1月には「ハナ銀行」とメインスポンサー契約を結び、今季韓国ツアー開幕戦の「ハナファイナンシャルグループ シンガポール女子オープン」に推薦出場を果たしたばかり。まずは韓国ツアーで認知度を高め、実力をつけるのが規定路線だが、日本ツアー優勝者のメンバーの登録(申請期限は11月25日)に関しては「家族と相談する」とのことだ。

 その先に描くのは「いずれ米女子ツアーに出て世界ランキング1位になるのが夢」と壮大。とはいえ、いずれ日本のゴルフファンの前に姿を見せる機会も大いにあり得る。「元々、日本が好き。漫画が好きで、漫画を通して日本語を勉強していました。日本に来るたびに印象がいい。『呪術廻戦』が好きです」と日本に親しみを持つ。

 いずれにしても“リ・ヒョソン”の名を憶えておいても損はないだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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