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インドネシアに“衝撃”敗戦で見えた韓国“エリート”スポーツの危機…パリ五輪で金メダルは最少予想?

金明昱スポーツライター
ベスト8でインドネシアに敗れた韓国はパリ五輪出場を逃した(写真:REX/アフロ)

 誰も予想していなかった衝撃的な敗戦だった。

 パリ五輪アジア最終予選を兼ねるAFC U-23サッカーアジアカップの準々決勝(25日)で、韓国はインドネシアと対戦。韓国は立ち上がりは悪くなかったが、1-2とリードされ後半へ。一進一退の攻防が続くなか、後半22分にFWイ・ヨンジュンが、相手のクリアをブロックしようとしたところで足を踏みつけてしまい、VARの確認でレッドカードが提示されて一発退場。韓国は10人と数的不利の状況で劣勢を強いられるなか、後半38分にスルーパスから抜け出したMFチョン・サンビンが右足で決めて2-2の同点に。

 後半アディショナルタイムに入ると、インドネシアの接触プレーに対してファン・ソンホン監督が猛抗議。ここでレッドカードが出されてファン監督がベンチから退席。指揮官がいないまま試合が進み、延長戦でも決着がつかずにPK戦へ。最終的に10-11でインドネシアが劇的な勝利を収めた。

 韓国は1988年のソウル五輪から続いていた連続出場記録が9回でストップするという屈辱を味わい、韓国メディアは今回の敗戦に対する批判を繰り返している。

「W杯チームと2つ指揮のファン・ソンホン…準備怠ったツケが呼び起こしたドーハの惨劇」(朝鮮日報)

「“適当”の韓国vs緻密なインドネシア…韓国はすでに負けていた」(スポーツ京郷)

「インドネシアに凄まじい勢いで押された…戦略対決で完敗」(ファイナンシャルニュース)

「チョン・モンギュ体制が生んだ韓国サッカーの大災害…40年積み上げた塔が崩れ去る」(聯合ニュース)

 かなり刺激的な見出しが多いが、こうした批判はしばらく続くものと見られる。というのも、韓国スポーツ界では今回の男子サッカーのみならず、団体の球技種目のほとんどがパリ五輪出場権獲得に失敗しているからだ。

韓国のパリ五輪出場球技は女子ハンドボールのみ

 サッカーは男女ともにパリ五輪出場権を獲得できなかったわけだが、他の種目でも男女バレーボール、男女バスケットボール、男女ホッケー、男女水球、男子ハンドボール、男子ラグビーがパリ行きのチケットを手に入れられなかった。

 結果的に韓国代表としては、11大会連続の女子ハンドボールがパリ五輪で唯一の球技競技の出場チームということになる。「由々しき事態だ」と言われても仕方がない。

 なぜこんな事になったのか?ーー。そんな問いに対して、韓国の「聯合ニュース」は「最少人員、最少金メダル…韓国エリートスポーツは重大な分かれ道」という見出しで、韓国スポーツ界の現状についてこう報じている。

「大韓体育会が予想するパリ五輪出場選手の最大値は170~180人の水準だ。これは50人を派遣した1976年モントリオール五輪以来、48年ぶりの最少人数だ」

 五輪に参加する韓国選手は200人を切ったわけだが、「夏季出場選手が200人を切ったという“崩壊”は、韓国スポーツの現住所を如実に表している」と悲観的だ。

韓国のパリ五輪予想金メダル数は5~6個?

 韓国は1984年のロサンゼルス五輪に210人の選手が参加し、「韓国スポーツ史に新たな1ページを開いた」(聯合ニュース)。そこからコンスタントに200人以上の選手が五輪に参加。2021年に開催された東京五輪には232人の韓国選手が参加しているが、パリ五輪ではやや規模の小ささを感じるかもしれない。

 こうなるとメダル獲得の数にも影響が出てくる。記事では「選手もメダルも同時に減少する局面に入った。大韓体育会がパリ五輪を前に保守的に算出した予想金メダル数も5~6個。最悪の場合、40年前のロサンゼルス大会のメダル数にも満たない成果で終わるかもしれない」と伝えている。

 韓国で期待される金メダルの種目は、アーチェリーとフェンシング。さらにバドミントン、射撃、テコンドー、水泳も金メダル候補とされているが、それも試合が始まってみなければ分からないところはある。

人材の流入減少や成績至上主義が招いた結果?

 また、これだけ韓国のスポーツ界が後退している背景については、こう分析している。

「人口の減少によるエリートスポーツの人材流入が大きく減っていること。学校での教育課程としての体育は、依然として漂流中だ。近年の一部種目で見られる時代にそぐわない選手に対する人権の蹂躙、八百長の波紋などでエリートスポーツ全体が、成績至上主義に染まった集団へと変わってしまった。国民の関心は薄く、時には専門スポーツを見る視線も冷たいものとなった。国を代表するという選手たちの誇りも欠けている」

 さらに「これまでメダル獲得をしてきた柔道、ボクシング、レスリングにおいても国際競争力が落ちており、新たなスターを育成できない種目の責任も大きい」と批判している。

 いずれにしても韓国のサッカーが五輪に出場できず、アジアでベスト8止まりという現実は、いずれU-23選手たちが中心選手となっていく今後のA代表の実力にも大きく影響してくる。これですべてが終わったわけではない。敗因を分析し、ここからさらなる成長に期待したいところだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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