日本を離れ、長らく海外にいると、無性に日本の味噌汁が恋しくなり、帰ったらラーメンを食べよう――。海外旅行者ならば、一度は感じたことがあるに違いない。

 東京オリンピックに参加する各国・地域の選手たちもまた、慣れ親しんだ母国の食事がもっとも口に合うはず。毎日の食事は最大限にパフォーマンスを発揮するための、大事な要素でもある。

 冒頭からこんなことを書くのは、大韓体育会が「東京五輪の選手村の食事で使われる福島県産の食材を摂取しないように注意喚起している」ことが表に出たことで、日本の反発を買っているというニュースを見たからだ。

 これには日本国内から批判をあっても、しょうがないと感じたものだった。

 大韓体育会は20日から、千葉県浦安市にある「変なホテル」に給食支援センターを設置した。調理師や栄養士が作ったお弁当を希望する選手たちに届けるという。

 これまでも韓国は選手の栄養管理を徹底させるために過去の五輪でも同センターを設置している。だが、今回の東京五輪では「福島県産食材を避けるため」だけに、同センターを設置したかのように報じられているのが引っかかっていた。

 日本国内で福島県産の農産物は、放射線物質検査を経て安全なものだけが出荷されているが、韓国は同県を含む8県の水産物などを今も禁輸している。国の方針が選手団の食事にも影響しているのだろう。

 また、韓国のみならず依然として中国、香港、マカオ、台湾、米国が日本の一部の地域から輸入を受け入れておらず、福島第一原発事故による放射性物質への懸念を拭いきれていないのが現状だ。

「栄養を考えて食事を提供するのが第一目的」

 そもそも、五輪で各国の選手団のために食事を提供する独自の施設を用意するのは当たり前の光景となった。

 2018年の平昌冬季五輪では、日本代表が選手村の近くに日本食が食べられる「G-Road Station」が作られた。

 当時の新聞やネットニュースでは、献立を考える管理栄養士が炊き込みご飯や汁物、納豆、梅干し、麺類などの日本食を提供したと伝えている。

 また米誌「USAトゥデイ」は21日、東京五輪に参加するアメリカ選手団に向けて、東京・世田谷区の大蔵運動公園に給食支援センターを設置し、約32トン、7000食を用意していると報じていた。

 では、大韓体育会が準備した「給食支援センター」はどのような所なのかが個人的に気になり、足を運んでみた。

 東京五輪の取材に来ている韓国記者に事前に確認してもらったのだが、新型コロナウイルス防疫のため、関係者以外は当然立ち入り禁止。そのためほぼ外観の様子しか見られなかったが、確かにホテルは完全に支援センターに代わっていた。

 特に物々しい雰囲気はなく、周辺も穏やか。駐車場にはプレハブで簡易的に作られた3つの調理場が確認でき、中では調理師が食事の仕込みをしていた。

 韓国の五輪担当記者に聞くと、ここには韓国のナショナルトレーニングセンターで働く栄養士や調理師など28人が来日し 、日々、仕事をこなしているという。

 韓国の「聯合ニュース」は「午前6時30分、午前10時30分、午後4時30分の3回、弁当を選手村に運ぶ。一日の平均配送料は、425食分になる」と伝えている。

 ちなみに弁当メニューで外せないのは「プルコギ、カルビチム(牛カルビの蒸し煮)、チェユクポックム(豚肉炒め)」などの人気の肉類だという。

 また、同センター関係者は、日本メディアで報じられている食材の検査や回避についての集中的な報道に対し「東京五輪だけ運営しているのではない(2008年北京五輪から運営)。選手たちの栄養を考えて食事を提供するのが第一の目的」と強調している。

 それぞれに国の事情があり、韓国もあえて日本を刺激しているわけではないだろう。ただ、やはり日本としては韓国が気になり、また韓国も日本が気になるは確かだ。

 東京五輪はスポーツの祭典。日韓が対戦することがあるならば、“競技外”の話題でやりあうよりも、試合で名勝負を期待したいものだ。