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「昔よりも今のほうが上手くなっている」全英で6位と大健闘の上田桃子 日本ツアー復帰に苦悩した過去も

金明昱スポーツライター
全英女子オープンを単独6位でフィニッシュした上田桃子(写真:REX/アフロ)

 最近は渋野日向子ら“黄金世代”の話題が何かと多い女子ゴルフ界。

 米ツアーのメジャー「AIG(全英)女子オープン」(8月20~23日、スコットランド・ロイヤルトゥルーンGC)では、ディフェンディングチャンピオンとして2連覇に挑戦した渋野にスポットライトが当たった。

 だが、リンクスコース特有の海沿いの強風と長いラフに苦しめられ、2日間で通算12オーバーの105位で予選落ち。

 一方で、ほぼ注目されていなかった一人のベテランが全英で奮闘した。34歳の上田桃子だ。

 上田は大会3日目に「68」をマーク。最終日を19位からスタートし、4バーディー、ノーボギーの「67」とスコアを伸ばし、通算1オーバーの単独6位でフィニッシュ。「キャリアハイの成績を出したい」と2008年の自己最高の7位を上回った。

 ホールアウト後は「正直、疲れました。今日は風がないからスコアを伸ばさないと順位が下がってしまうという緊張感の中でプレーしたので。タフな4日間でした」とすがすがしい笑顔を見せていた。

 主にリンクスコースが舞台となる全英で、渋野とは経験の差が出た。

 それも当然だろう。上田は全英に10度目の出場で、戦い方を熟知していた。

 3日目終了後、上田は「(予選)2日間は風に乗せて打っていたけど、きょうは風にぶつけて打っていた。全英はパワーだけじゃないところで戦える。全米女子オープンはパワー系の選手が球を止めてスコアを出す。全英はいろんな技術を使えば、アジア人でも戦える」と語っていた。

 貫禄のある言葉。伊達に6年も米ツアーで戦っていない。

崖っぷちに立たされた上田の執念

 上田は2007年に日本女子ツアーで年間5勝して、21歳の史上最年少で賞金女王となった。

 2008年からは米ツアーに参戦。2011年には日米ツアー共催の「ミズノクラシック」で米ツアー初優勝したが、米本土での優勝は成し遂げられないまま、2012年には日米ツアーのシードを喪失している。

 2013年、上田はどん底の状態から這い上がらねばならなかった。米ツアーはおろか、日本ツアーには限られた試合しか出られなかったからだ。

 いわば米国から出戻りの形で、日本ツアーでの再起をかけた戦いを強いられていた。

 崖っぷちに立たされた上田の執念を見たのは、2013年の最終戦となった11月の「大王製紙エリエールレディス」最終日だった。

 当時、筆者は現場にいた。上田が賞金シードを獲得するためには、最低でも単独首位7位以内でのフィニッシュが必要だった。

 そんな中、のしかかる重圧を乗り越え、上田は通算12アンダーの3位タイでフィニッシュ。賞金ランキングを55位から47位にまで上げて、同50位までに与えられる翌年のツアー出場権を獲得した。

「気が張り詰めていて、朝は食事も喉を通らなかったです」と張り詰めた緊張感の中で戦っていた思いを吐露し、ホールアウト後に安堵の表情を浮かべていたのは今も忘れられない。

「もっと向上したい気持ちが強い」

 それに上田は日本の“元賞金女王”でもある。

 米ツアー本土でも優勝を成し遂げたかったに違いない。それでも14年以降、日本に軸足を置くことを決心した。

 そこからの復活劇には目を見張るものがあった。

 再び日本ツアー出場権を得た2014年に2勝し、2017年も2勝して完全復活をアピール。

 さらに2019年も2勝して、いまだに衰えを知らない。むしろ成長を続けているようにも感じる。

 そんな彼女に「なぜそこまでモチベーションを保つことができるのか」と、聞いたことがあった。すると、こんな言葉が返ってきた。

「私が2007年に賞金女王になったあと、追われる立場になり、それはそれで辛いかもしれない。でもそれなら、もっと上を目指していけばいいんじゃないかなと思っていました。下の子たちを意識するのではなく、私は賞金女王になってからすぐに米ツアーに行ったので、もっとレベルの高い人たちがいることを体感しました。だから停滞せずにもっと上を目指していこうと思えたんです。もちろん、結果を出さなきゃいけない苦しみはありましたけど、それよりも、もっと向上したいという気持ちの方が強かったです。それに昔よりも今の方が上手くなっている自信はあります」

 一般的には米ツアーから日本ツアーへ戻ってきたとなれば、“都落ち”のような見方もできるだろう。だが、上田は「今のほうが上手い」と言い切っていた。

「年を重ねていろんなことを実践できるように」

 2013年当時の取材ノートを開くと、上田が日本ツアー通算50勝の不動裕理と同組でラウンドしたときのコメントが残っていた。

「不動さんは子どものころからの大スターで、3日間で心技体のすべてが勉強になりました。ミスしても次のプレーでカバーする集中力はすごい。以前は不動さんの真似をしようとしても、できなかったのですが、年を重ね、経験を積むことでいろいろなことを実践できるようになりました」

 上田のゴルフに対するひたむきな姿勢と向上心がよくわかる言葉だが、年齢を重ね、経験を積むことで、プレーの引き出しが増えたのは確かだ。

 酸いも甘いも噛み分けて、今の自分があると自負している。だからこそ、今回の全英女子オープンでもこうした結果を残せたのだろう。

 これからも上田から若手が学ぶべき部分は多いはずだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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