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来日した韓国のユン・イナを直撃!全米女子オープン日本予選突破ならずも「いつか日本ツアー挑戦も」

金明昱スポーツライター
韓国のユン・イナ。出場停止処分が解け2年ぶりの復帰で再起を図る(筆者撮影)

 全米女子オープンの日本予選会(22日、千葉・房総カントリークラブ房総ゴルフ場)にある韓国女子ゴルフ(KLPGA)ツアー選手が出場していた。その名前を見て驚いたのは、韓国で注目のユン・イナだったからだ。36ホールのストロークプレーを通算1アンダーで回ったが、上位5人に与えられる全米女子オープンの出場権は得られなかった。

「体力的にすごく疲れた一日でした。満足のいく結果ではありませんでしたが、それでもたくさん学ぶことができました」と清々しい笑顔を見せていた。

 来月に21歳になるユン・イナは、今季韓国ツアーの国内開幕戦から1年8カ月ぶりに復帰を果たしたばかり。長らく試合から遠ざかっていたのは、2022年の「韓国女子オープン」で“誤球”を隠した不正行為が発覚し、ツアー出場停止処分を言い渡されていたからだ。

 しかしその後、社会貢献活動や米ミニツアーの獲得賞金を全額寄付するなどの行動が認められ、大韓ゴルフ協会(KGA)と韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は3年の処分期間を1年半に軽減。先月20日に懲戒処分が満了となり、今季から晴れてツアー復帰に至ったわけだ。

260ヤードのドライバーが武器

 ネガティブな印象が先行しがちだが、デビュー当時から実力とスター性は認められており、今季は復帰戦から話題性も十分だった。2022年に韓国ツアールーキーとしてデビューすると数回のトップ10入りから、同年7月の「エバーコラーゲンクイーンズクラウン」で初日から最終日まで一度も首位を譲らず、通算20アンダーでツアー初優勝。

 新たなスター誕生と女子ゴルフ界は沸いていたところでの不正行為の発覚で今に至るわけだが、170センチの恵まれた体格を生かし、ブランクを感じさせない豪快なドライバーショットは日本予選会でも健在だった。2年前に残るツアー記録では約263ヤードで1位だったこともある。

 今季も韓国ツアー3試合すべてを予選通過。特に2戦目「メディヒール・韓国日報チャンピオンシップ」の初日に「63」をたたき出し首位タイ発進。最終的には11位タイに食い込んでいる。将来的には韓国だけでなく、海外でのプレーも視野にあるというユン・イナ。日本予選会に参加したきっかけや現在の心境などについて聞いた。

今年2月には日本予選会エントリーを決めていた

――全米女子オープンの日本予選会に出場してみて、どうでしたか?

韓国での同予選以来、久しぶりに36ホールを1日で回ったのですが、体力的にすごくきつかったです。満足できる結果ではありませんでしたが、それでも日本の選手と一緒にプレーしながら、学ぶこともたくさんありました。

――日本のゴルフ場では何度かプレーしたことがあると聞きました。

私がアマチュア時代に韓国代表としてプレーした2019年のネイバーズトロフィーチーム選手権(宮崎のトム・ワトソンゴルフコース)や日韓チーム対抗戦も思い出します。

――今大会のコースの印象は?

雨が降る中でのプレーでしたが、芝の状態が良くて管理も行き届いていて、自然を感じることができるいいコースでプレーしやすかったです。

――日本の予選会には以前から出場を決めていたのでしょうか?

今オフの2月にオーストラリアで合宿をしたのですが、そこに日本の選手が数名いたんです。そしたら全米女子オープンの日本予選会にエントリーするというので、私も受けてみようと。去年から韓国で同予選会が開催されなくなったのも大きいです。

――アメリカや日本など海外ツアー進出の計画は?

国内ツアーにも復帰したばかりなので、これから実力も向上させ、体力もつけてしっかり準備が整った段階で米ツアーに行く気持ちはあります。日本ツアーにも行きたい気持ちはあります。ただ、現状では時期的に早いのではないかとも思いました。今はしっかりと国内ツアーで力をつけ、応援してくれるファンの前でプレーしたいという思いがあります。

【参考】:「誤球」不正を隠した韓国女子ゴルファーが国内開幕戦から涙の復帰…申ジエが伝えた“刺さる”言葉とは?

力強くも温かい申ジエの助言「これからが重要」

――韓国では1年8カ月ぶりのツアー復帰となりましたが、ゴルフの状態はどうでしょうか?

(出場停止処分の期間に)ゴルフに懐疑心を持つことがあり、悩みも多く、練習もそこまでたくさんできずにいたのですが、実際に復帰後は試合勘も鈍り、技術的にも落ちた部分がたくさんあると感じています。今もまだ自分が納得できる状態にゴルフが戻ってきているのかといえば、そうではありません。もう少し時間をかけて練習する必要があります。

――オフのオーストラリア合宿では、日本ツアーを主戦場にしている申ジエ選手と一緒に練習したそうですが、どのような会話をしましたか?

申ジエさんと過ごした時間は本当に貴重で、いいアドバイスをたくさんしてくれました。ゴルフや生活に関することもそうですが、これから続く人生についての話が響きました。もっとも記憶に残っているのは、「自分の悪い部分や罪は認めたうえで、これからどのように行動するのかが重要。これから模範的な人間になること」という言葉。本当に申ジエさんのような選手にならないといけないと思いました。もちろん簡単なことではありませんが頑張っていきたいです。

――海外ツアー挑戦はまだ先になりそうですが、もし日本ツアーから推薦の話があれば出たいですか?

もちろんです。日本のトーナメントに招待してくれる機会があれば、すぐにでも飛んで行きたいです!

――今季の目標は?

目標というよりも、今の正直な気持ちは試合ができることに感謝しています。復帰できたことで、1試合1試合が本当に貴重な機会でありがたいことだと感じています。結果にとらわれず、毎試合ベストを尽くすこと。それだけを考えてプレーしています。慕われる選手になれるように努力すること、偉大な選手ではなくても、ゴルフの発展に少しでも貢献できる選手になりたいです。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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