Yahoo!ニュース

マスク姿のイ・ボミも…KLPGAカメラマンが見た韓国女子ゴルフツアー開幕前の“コロナ対策”の様子とは

金明昱スポーツライター
開幕前日の様子。イ・ボミの姿も(写真・KLPGA/Park Jun-seok)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界のゴルフツアーも中止や延期が続く中、韓国では女子ツアーの「KLPGAチャンピオンシップ」が5月14日から4日間にかけて、京畿道・楊州(ヤンジュ)のレイクウッドCCで行われる。

 本来なら韓国女子ツアーは4月9日から開幕を迎える予定だったが、新型コロナウイルスの感染者数が増え続け、中止を余儀なくされていた。

 明日から開催される「KLPGAチャンピオンシップ」も、元々は4月26日に開催する予定だったが中止を発表していた。だが、再び開催にこぎつけた。

 すでに韓国では5月5日にプロ野球が開幕し、5月8日にはプロサッカーのKリーグが開幕。その流れで韓国女子プロゴルフツアーが幕を開ける。

 感染者数が一桁台に推移していることも、プロスポーツを安心して開始できる要因でもあるが、先週、梨泰院のクラブで集団感染が発生したばかりだ。

 完全に懸念が払しょくされたわけではないが、徹底した対策を講じて試合の開催に至った。

 今大会は出場人数も従来よりも増やして144人に。方式は「MDF(セカンドカット)」を採用した。102人が決勝ラウンドへ進み、その中の上位70人が最終ラウンドへ進出するが、出場したすべての選手が賞金をもらえる。

 これまで試合の中止で、収入がない選手への配慮でもある。世界ランキング1位のコ・ジンヨンやパク・インビは、「若手に出場機会を与えたい」と辞退している。

マスクをして互いに距離を取る選手たち(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
マスクをして互いに距離を取る選手たち(写真・KLPGA/Park Jun-seok)

マスク姿が“リアル”

 大会前日には試合に挑む選手たちの会見や公式フォトセッションなどが行われ、その様子を現地メディアが一斉に報じている。

 ちょうどKLPGAオフィシャルカメラマンのパク・ジュンソク氏が、現地の様子を収めた写真を提供してくれた。

 そこからは選手たちの徹底した“コロナ対策”と「無事に大会を開催しよう」という選手たちの笑顔も見られ、いよいよ試合が始まるのだと実感させてくれた。

「KLPGAチャンピオンシップ」のサブタイトルは「コロナ克服、韓国ファイト!」。コロナに打ち勝ち、元気な姿を見せようというのがテーマだ。

 前日には日本ツアープレーヤーのイ・ボミのほか、米ツアーを主戦場にする世界10位のイ・ジョンウン、世界3位のパク・ソンヒョン、世界6位のキム・セヨン、世界13位のキム・ヒョージュ、チェ・ヘジンらがフォトセッションに参加。

 医療従事者への感謝を表し、選手たちがマスク姿で手を取り合うポーズのほか、「SWING THE WORLD」のパネルを掲げるなど、世界へ向けて元気な姿をアピールしていた。

 会場の入り口にはウォークスルーの「UV殺菌消毒装置」と体温を測るサーモグラフィーが設置され、マスクをした選手がそこを通って消毒する様子もうかがえた。

 今後もこうした形でトーナメントを開催するという意気込みと、コロナと共存しながら試合に挑まざるを得ない選手たちのリアルな姿が見えてくる。

画像
ウォークスルーの「UV殺菌消毒装置」と体温を測るサーモグラフィーの前を通る選手(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
ウォークスルーの「UV殺菌消毒装置」と体温を測るサーモグラフィーの前を通る選手(写真・KLPGA/Park Jun-seok)

細部にわたる「コロナ対応マニュアル」

 大会を取材するメディアの姿も確認できた。注目選手の会見は、コロナ対策として屋外で行われ、マスクをした取材陣の数は想像以上に多かった。

 後方のテレビカメラマンに関しては“密”の状態のような気もするが、国内のみならず、世界から注目されている大会だけに、やむを得ないといったところだろうか。

 KLPGAは30ページにも及ぶ「コロナウイルス統合対応マニュアル」を作成し、4月22日までに出場選手や関係者に配布している。法律や医療の専門家などと対策を練り、今後のツアーを成立させるための指針を取りまとめた。

 その内容も事細かい。特に選手と関係者への予防規則に関しては、14の項目にまとめられている。

主な内容は

・毎日の体温チェックと問診票の作成

・家族や同居人にも密集場所に行かないように勧告

・選手のロッカールームや練習場などは2メートル間隔を維持すること

・選手や関係者の会食も自粛

・選手と大会関係者の空間と動線を分けて最大限に接触を抑える

などだ。

 こうした防疫対策を行うなかで、大会を無事に終えることができれば、世界のゴルフツアーに向けた一つの指針となるのは間違いない。

国内の多くのメディアが取材に駆け付けた(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
国内の多くのメディアが取材に駆け付けた(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
レストランでは選手一人ずつでの食事が決まりとなっていた(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
レストランでは選手一人ずつでの食事が決まりとなっていた(写真・KLPGA/Park Jun-seok)

イ・ボミ「日本ツアーにもいい影響与えられれば」

 そんななか、今季初戦に挑むイ・ボミと直接話をすることができた。大会前の心境についてこう語っている。

「初めての状況なので、とても複雑な心境ではあります。無観客での試合は、昨年のスタンレーレディスで経験しましたし、日本女子オープンの予選会に出場したこともあり、どのような雰囲気なのかは分かるので、そのあたりは心配はしていません。とにかく、久しぶりの試合ですし、これまでの練習の成果を出せるようにいい結果を残したいです。いい形で試合を終えることができれば、次の試合の開催にもこぎつけられると思いますし、中止が続いている日本ツアーにもいい影響を与えられるきっかけになればいいと思います」

 十分な実戦練習はできていないが、それでも自宅でできる限りのトレーニングは続けてきたという。

 

 イ・ボミに今大会の目標について聞くと「ゴルフファンの方はテレビ中継しか見られないので、テレビに映れるようにがんばりたい(笑)」と笑っていた。

 ちなみに韓国内では中継権を持つSBSテレビが生中継を担当する。初日と二日目は午前9時から午後6時までの9時間を生中継するという力の入れようだ。

 選手のプレーとともにどのような雰囲気の中で試合が開催されるのか――。日本女子ゴルフツアーの開催に向けたヒントがあるのかも探っていきたい。

ハングルで「コロナ克服 大韓民国ファイト!」と書かれている(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
ハングルで「コロナ克服 大韓民国ファイト!」と書かれている(写真・KLPGA/Park Jun-seok)
スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事