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なぜ渋野日向子の口から“しぶこ節”が次々と生まれてくるのか

金明昱スポーツライター
(写真:REX/アフロ)

 頭の回転が速いのか、元々言葉の返しがうまいのか――。

 女子プロゴルファーの渋野日向子が18日に行われたLPGAの年間表彰式「LPGAアワード」で、「年間最優秀選手賞」、「ビューティー・オブ・ザ・イヤー」、「LPGA輝き賞」、「メディア賞『ベストコメント部門』」の4冠を獲得し、4度も登壇した。

 個人的な感想を言えば、渋野のためにこの日があったと言わんばかりの表彰式だったが、それだけ今年の女子ゴルフ界で残したインパクトがもっとも強かった選手であることに間違いない。

 AIG全英女子オープンで日本人選手として42年ぶりのメジャー制覇を果たしたことで、一躍、時の人となり、国内ツアー4勝で賞金ランキング2位の結果を残した。

 ゴルフの実力に加えて、彼女の魅力の一つとして注目されているのがコメント力だ。

 4冠の中にメディア賞の「ベストコメント」部門があるが、選ばれた渋野の言葉はメジャーのワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップでの発言だ。

「新元号、令和になった実感は少ない。でも、日本人のメジャー優勝は久々です。ただ、私で良かったのでしょうか」

 そんな渋野が、表彰式の壇上で司会の徳光和夫氏に「いつも何を言うか考えているんですか」と聞かれる一幕があった。

「私は思ったことを言った方が良い」

 記事の見出しになりそうなコメントを次々と発する理由について、公の場で聞かれるのは、これが初めてのはずだ。

 すると渋野は間髪入れず、こう答えた。

「台本を読むと棒読みになってしまう。だから私は思ったことを言った方が良いんです」

 パッと思いついたり、考えていることをその場で言っているという。あえて面白いことを言おうともしていない。

 表彰式が終わったあと、渋野はメディアの取材に応じた。

「もしかしたら、ここでもまた何か話してくれるんじゃないか」と考えている自分がいたが、渋野は見事、その期待に応えてくれた。

 黒のワンピースのドレスのコンセプトについて聞かれると「宇宙系?ですかね。宇宙に羽ばたこうかな。いや、ウソです(笑)」。

 また、年間最優秀選手を決める合計ポイントが「555.5」とゾロ目だったこと聞かされると「え、本当ですか?」と目を丸くして、すかさずこう言った。

「来年もゴーゴーゴーゴーですね!」

 そして最後にオフの予定を聞かれ、クリスマスイブの12月24日に親知らずを抜く予定について話すと「メリー親知らずです(笑)」と周囲を笑わせた。

 どうやらこうした“しぶこ節”は狙っているわけでもなく、本当に自然体だ。

 取材する側にとっては、話すたびに何かが出てきそうな感じがする選手で、そもそも会話自体が楽しく、その場がとても和んでいることがほとんどだ。

 渋野には多くの人を味方につけられる力が確かにある――それを強く感じた日だった。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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