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「韓国とポーランドのサッカーは少し似ている。日本のサッカーは…」大邱FC西翼が語った3カ国の違い

金明昱スポーツライター
大邱FCの西翼(中央)。ホームスタジアム「DGB大邱銀行パーク」で(筆者撮影)

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージFの第4節で、サンフレッチェ広島に0-1で敗れた大邱FC。

 前半34分決まったDF荒木隼人のゴールが決勝点になり、3連勝で勝ち点を9とした広島がグループ首位に立った。

 一方、ホームとアウェーで広島に2連敗を喫した大邱は、勝ち点6でグループ3位。ラウンド16への進出にはまだ望みをつないでいるが、残りの試合は厳しい戦いを強いられること必至だ。

 試合後、大邱FCの選手たちは硬い表情を見せる中、同クラブ所属の日本人選手、MF西翼(29歳)に話を聞くことができた。

「今日はセットプレーの一本でやられて、アウェーの試合よりもチャンスをたくさん作れたんですけれど、ゴールに結びつかなかったので悔しいですね」と試合を振り返る西。

 広島に2連敗を喫した悔しさをにじませつつも、西自身はKリーグで好調を維持している。

今季Kリーグで初ゴール

 20日に行われたKリーグ第8節、浦項スティーラーズとの試合で、初ゴールを決めて3-0の勝利に貢献した。

 セジーニャ、キム・デウォン、キム・ジンヒョクが中盤から前線へダイレクトパスをつないでぺナルティエリア内に切り込み、その後ろから走りこんできた西がボールをつないで、ゴール右隅に決めた。

 Kリーグで初得点したときはどんな気持ちだったのだろうか。

「自分がゴールしたというよりも、チームとしてコンビネーションで取ったゴール。ダイレクトプレーからの得点は、自分も好きなプレー。ゴールにからめてうれしかったですね」

韓国でコンディションは上々

 3-4-3の中盤でプレーする西は、中盤の底でパスを回しながら、ゲームの流れを調整する役目を担っている。

 西が大邱FCに加入したのは昨年6月だが、当時は目立った活躍はできていなかった。

「去年はハムストリングのケガが何回かあり、コンディションが上がらない状態でのシーズンでした。今年はキャンプからしっかりとコンディションを作って開幕を迎えられたので、いい状態を保てています」

 韓国に来て、もうすぐで1年が経とうとしているが、徐々に韓国サッカーにフィットしてきているのだろう。

スタジアム周辺で西翼のポスターを先着500名に配っていた。大邱FCでの人気がうかがえる(筆者撮影)
スタジアム周辺で西翼のポスターを先着500名に配っていた。大邱FCでの人気がうかがえる(筆者撮影)

 西は韓国に来る前、ポーランドでプレーしていた。Jリーグでプレーしたことは一度もない。

 ただ、学生時代はそれなりの実績があった。ルーテル学院中学校在籍時に全国中学校サッカー大会で優勝し、同高校時代は2年の時に第86回全国高校選手権大会にも出場している。

 専修大学時代はサッカー部に所属したのだが、Jリーグ行きは果たせていない。

 大学卒業後の2013年にポーランド4部リーグからプロ生活をスタートさせた。その後もポーランドのクラブを転々とし、一時はレンタルで4カ月ほどスロバキアでプレーしている。

 欧州とはいえ、世間が注目するようなクラブではないため、日本でもその名はほとんど知られていない。

 ただ、実力の劣る4部リーグからとはいえ、ポーランドで鍛えられたたくましさは、着実にKリーグで生かされていた。

共通点は球際とフィジカル

 そんな彼に韓国、ポーランド、日本のサッカーの違いについて聞いてみた。

「ポーランドと韓国でプレーしてみて感じるのは、若干ですが似ているところがあるということです」

 それはどういうところなのか。

「一つは球際の強さ。ACLでJリーグチームと対戦すると、日本の選手から見ると少し荒いなと感じる人も多いと思うのですが、フィジカル的な当たりでいうと、欧州や韓国ではそれが普通なんです。自分もポーランドで長らくプレーしてきたので、フィジカル面での激しい当たりには慣れていますし、逆にそこでバチっと当たっていけないと“ダメな選手”と評価されてしまうんです。その辺はやはりJリーグとは違うなと感じるところです」

 やはり球際やフィジカルは、欧州や韓国に比べて、日本のほうがやや劣るという印象なのだろう。

 ただ一方で、西はJリーグの良さと強さについても語っていた。

「Jリーグチームのほうがやはり技術があります。だからこそ勝つのが難しい。普段はKリーグでは通るようなパスが、読まれてカットされたりしますし、組織的なプレーも質が高い。とにかくJリーグには頭がいい選手が多いと思います」

 まだ日本でプレーしたことがない西だが、ACLを通してJクラブと対戦することで、そのレベルを肌で体感していた。

 今季の活躍次第では、いずれJリーグも視野に入る可能性もあるかもしれない。

 今回は特にスタジアムのスタンドからは、サポーターやファンから「ツバサー!」との声援が何度も送られていたのが印象的だった。韓国での人気や知名度も、徐々に上がりつつあるのだろう。

 今や大邱FCに欠かせない選手へと成長した西の戦いは続く。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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