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セリエAの北朝鮮代表FWハン・グァンソン、アジアカップ初戦のスタメン濃厚!?

金明昱スポーツライター
北朝鮮代表キム・ヨンジュン監督とFWチョン・イルグァン(筆者撮影)

 今月からUAEで開催されているアジアカップ。現地時間の8日の20時から(日本時間9日1時)、北朝鮮代表がサウジアラビアとのグループステージ初戦に挑む。

 前日の7日に北朝鮮代表の前日会見と冒頭15分の公開練習が行われた。

 会見に登場したのはキム・ヨンジュン監督とFWチョン・イルグァン。

 神妙な面持ちで会見に登場した二人の表情は少し硬かったが、話が進むにつれて表情もほぐれ、各国記者の質問に一つ一つ丁寧に答えていた。

(参考:サッカーアジアカップ出場の北朝鮮代表にユベントスが狙ったあのFWが選出!?東京Vの李栄直も期待

 キム監督は前代表監督のヨルン・アンデルセン氏(現・Kリーグの仁川ユナイテッド監督)の契約満了に伴い、新たに代表監督に就任。

 年齢は35歳と若く、現役時代はMFの中心選手として在日コリアンの安英学や鄭大世などと共にプレーした。現役を退いてからは国内でコーチを経験し、代表監督に抜てきされた。

ポゼッションサッカーはしない?

 会見では監督に質問が集中。ただ、質問に対する回答はとても短く、チームの戦い方やチーム状況の詳細が見える内容ではなかった。

 ただ、初戦のサウジアラビア戦に関してキム監督は「自分たちがやってきたことを出すこと。勝ち点を1試合1試合ベストを尽くしていくだけです」と語っており、大会の目標についても「グループリーグ突破が第一目標」と明確ではあった。

 キム監督が目指すサッカースタイルがどのようなものなのかを聞いたが、「サッカーで勝つために必要なのは、攻撃と守備の双方ともにバランスがとれていないといけない」と話していた。

 攻撃や守備の一方に偏る戦い方はしないということだろうか。北朝鮮サッカー関係者によれば「ポゼッションサッカーではない」という。

 つまり自分たちでボールを支配しながらゲームを進めるよりかは、ボールを奪ってからのカウンターが北朝鮮のゲームスタイルになりそうだ。

ハン・グァンソンの能力に期待

 気になるのはイタリアセリエAのカリアリでプレーする20歳のFWハン・グァンソンだ。現在はセリエBのペルージャにレンタル移籍中だが、19試合に出場して7得点3アシストと才能を発揮。会見でも彼に対する質問が飛んだ。

 キム監督は「彼の高い能力は誰もが認めるところ。スピード、フィジカル面で優れており、とても期待している」と語っていた。

 ただ、大会前に行われたベトナム戦で1-1、バーレーン戦で0-4と大敗しており、明確な戦術やスタイルは未完成といったところ。

 冒頭15分の公開練習を見たが、選手たちはリラックスした表情を見せていて、コンディションは悪くないようだった。

 全体練習ではビブス着用していない選手11人の顔ぶれを確認したところ、ハン・グァンソンのスタメン入りはほぼ間違いないだろう。

 ただ、彼はAマッチに2試合しか出場しておらず、連携面に不安を残す。それでも、彼のスピードと能力をどれだけ生かせるかが、サウジアラビア戦のポイントになりそうだ。

東京Vの李栄直「なんとか勝ち点を」

 また、在日Jリーガーの李栄直(東京ヴェルディ)も今では北朝鮮代表には欠かせない選手へと成長。

「厳しい試合になることは覚悟している。なんとか勝ち点を取りにいきたい」と意気込む。

 北朝鮮が入ったグループEは中東の強豪ばかり。サウジアラビア戦のあとは、カタール(13日)、レバノン(17日)と続く。

 実力的にも劣勢は否めないが、いずれにしても今日勝ち点1を取れれば、グループリーグ突破が見えてくるだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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