サッカーアジアカップ出場の北朝鮮代表にユベントスが狙ったあのFWが選出!?東京Vの李栄直も期待

カリアリからセリエBのペルージャにレンタル移籍中のFWハン・グァンソン(写真:ロイター/アフロ)

 来年1月5日からUAEで開幕するAFCアジアカップ。同大会に出場する朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮代表)の輪郭が少しずつ見えてきた。

 と言っても、ほとんどが北朝鮮代表には注目していないだろう。

 2010年南アフリカW杯に出場してから、14年ブラジル大会と18年ロシア大会では本大会出場に失敗し、昨年12月に日本で開催されたEAFF E-1サッカー選手権(東アジア選手権大会)で、日本のサッカーファンの前に姿を見せたが、4カ国中(日本、韓国、オーストラリア、北朝鮮)4位に終わった。

 現在のFIFAランキングは109位で、アジアカップに出場する24カ国中、下から6番目。客観的に見れば、厳しい戦いになるのは明らかだ。

 だが、実は少し期待が持てる部分があるというのだ。

欧州と日本から海外組が合流

 在日本朝鮮人蹴球協会理事長で北朝鮮サッカー協会副書記長の李康弘氏が、現在のチーム状況を教えてくれた。

「去年、E-1選手権で来日した北朝鮮選手は国内選手が主軸のメンバーでした。ですが、今回は欧州と日本から選手を呼びよせ、以前のチームとはガラリとメンバーが変わります」

 つまり、海外組によって戦力が大きく上がるというのだ。

「イタリアセリエAのFWハン・グァンソン(カリアリ所属。現在はペルージャにレンタル移籍)、オーストリアリーグのFWパク・クァンリョン(SKNザンクトペルテン)、それに日本のJリーグからは、東京ヴェルディのMF李栄直、藤枝MYFCのDF金聖基にも招集がかかりました」

 現在20歳のFWハン・グァンソンは、セリエAでも注目のFWだ。2014年のU-16アジア選手権では主将とエースとして、6試合4得点で優勝に貢献。15年のU-17W杯でもグループステージを突破し、1得点を決めている。

1980年アジアカップの4位が最高位の北朝鮮代表(写真:ロイター/アフロ)
1980年アジアカップの4位が最高位の北朝鮮代表(写真:ロイター/アフロ)

ユーベも狙ったハン・グァンソンへの期待度

 カリアリではテスト生からスタートしたが、高い能力と結果を残すことで評価を受けて契約までこぎつけると、昨年4月のセリエA第31節のトリノ戦で、81分に途中出場して初ゴールを決めた。

 現在はカリアリからセリエBのペルージャにレンタル移籍しているが、19試合に出場して7得点3アシストと才能を発揮。

 ちなみにカリアリはハン・グァンソンと2023年まで契約を締結したが、それだけ将来性が高く、手塩にかけて育てたい選手なのだろう。

 それに今季途中「ユベントスが獲得に動いたが、クラブ間で合意に至らなかった」というニュースがイタリアで出回ったことも、ハン・グァンソンの能力をアピールする材料にもなった。

「ハン・グァンソンがA代表にデビューしたのは今年3月、平壌で行われたアジアカップ最終予選の香港戦です。彼のスピードと突破能力、ゴール前でのヘディングも強力で、グループステージの相手はかなり警戒することでしょう」(李康弘理事長)

 彼の能力がアジアでどの程度通用するのか。北朝鮮代表のエースとしての役割が期待されている。

東京V李栄直の覚悟「4年前の雪辱を」

 ただ、北朝鮮が入るグループEは強豪ぞろい。サウジアラビア、カタール、レバノンと同組で、中東でも比較的力のあるチームとの対戦が続く。

 それでも「決してグループを突破できなくはない」と話すのは東京ヴェルディのMF李栄直だ。李はオーストラリアで開催された2015年アジアカップにも出場しているが、グループステージ(3敗)で敗退した。

「15年大会のときは、世代別代表とA代表との違いを感じた大会だったので、4年間でどれだけ力が埋まっているのかを確かめるにはいい機会だと思っています。前回大会はサウジアラビア、ウズベキスタン、中国と戦いましたが、個人的な能力で差があるのを痛感させられました。でも今は当時とは違って、自分も成長しているのでどれだけ通用するか試したいですね」

 李は今季、東京ヴェルディでプレーしたが、「得たものが大きな1年だった」という。リーグ戦には26試合出場して4得点を記録。J1参入プレーオフ決定戦まで進み、惜しくもジュビロ磐田に敗れたが、そこまで戦った経験が大きな自信となったという。

「ロティーナ監督は、1年間でサッカー観とプレースタイルを確信させてくれました。自分の攻撃の新しいスタイルを見出してくれたことで、プレーの幅は確実に広まりましたよ」

 もちろん、今年得たJリーグでの経験をアジアカップでも生かすつもりだ。

「試合ではシンプルに球際で負けない。ボールを奪取したら、周りに散らしてリズムを作りたい。日本でプレーしているものをどれだけ出せるのか楽しみだし、アジア各国が見ている大会でもあるので、自分をアピールするいい機会にしたいです」

北朝鮮代表として2度目のアジアカップに出場する東京ヴェルディの李栄直(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
北朝鮮代表として2度目のアジアカップに出場する東京ヴェルディの李栄直(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

若手新監督への期待

 そして、いま北朝鮮代表は新指揮官の下、チーム作りに励んでいる。元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセン監督(現・仁川ユナイテッド監督)に変わったのが、35歳のキム・ヨンジュン監督だ。

 かつて2006年ドイツW杯のアジア最終予選などの国際試合で、在日コリアンの安英学(アン・ヨンハ)や李漢宰(リ・ハンジェ/町田ゼルビア)、鄭大世(チョン・テセ/清水エスパルス)などと共に戦っており、2001年から2011年まで北朝鮮代表として59試合に出場し、7得点を記録した人物。

 長らく、安英学や李漢宰ら在日選手と共に代表でプレーしただけに、東京ヴェルディの李栄直にとっても朗報だろう。

 李栄直が監督の印象についてこう語る。

「2014年の仁川アジア大会のときに、キム・ヨンジュン監督は、当時コーチとして帯同していました。自分のプレーも見てくれていて、会話もしているので、覚えてくれているとは思います。現役のころのプレースタイルが、フィジカルが強い朝鮮の選手のイメージとはまた違い、柔軟なプレースタイルの選手だったので、どのようなチームを作るのか今から楽しみです」

 海外組と新監督指揮の下、アジアカップでまずはグループステージ突破を目指す北朝鮮代表。

 李康弘理事長も「どれも難しい試合なのは間違いない。ただ、海外組も入ることでプレースタイルも変わる。他国を驚かせる結果になる可能性もある」と期待を込める。心情的にベスト8入りは果たしてもらいたいところだろうか。

ベトナム代表と親善試合も

 高い目標を達成するためには綿密な準備も必要なのだが、今回は周到な計画で本番を迎えるという。

 北朝鮮代表はUAEに入る前に北京経由でベトナム入りしており、現地でベトナム代表(25日)、バーレーン代表(29日)とのテストマッチを予定している。

 ベトナム代表といえば近年、メキメキと力をつけており東南アジア王者を決めるスズキカップ(東南アジア選手権)で優勝したばかり。アジアカップにも出場するチームとあって、力を試すにはいい機会だろう。

 アジアカップの優勝候補は、ロシアW杯にも出場した日本、韓国、オーストラリア、イランあたりと予想する人が多いに違いない。

 ただ、日本のサッカーファンには、イタリアでプレーするFWハン・グァンソンや2人のJリーガーがいる北朝鮮代表にもぜひ注目してもらいたい。