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Jリーグ連覇の川崎フロンターレGKチョン・ソンリョンをなぜ韓国代表に招集しないのか!?

金明昱スポーツライター
Jリーグを連覇した川崎フロンターレ不動のGKチョン・ソンリョン(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 J1リーグはすでに川崎フロンターレの連覇が決まり、残り2試合(第33、34節)で今シーズンも終了を迎える。

 先週からの2週間は“代表ウィーク”。日本代表はベネズエラに1-1で引き分け、キルギスに4-0で大勝。森保一監督が就任してから5戦負けなし(4勝1分)だった。

 一方の韓国代表もオーストラリア代表に1-1、ウズベキスタンに4-0で圧勝し、パウロ・ベント監督就任後、6戦負けなし(3勝3分)の成績を残した。

 日韓ともに新監督の下、敗れることなく来年1月のアジアカップを迎えるわけだが、韓国内では強さが際立つ日本と韓国の対決を楽しみに待つサッカーファンの声も少なくない。

 こうした代表の躍進を日本でジッと見守る韓国人GKがいる。川崎フロンターレのチョン・ソンリョンだ。

「もちろんチャンスがあれば、また韓国代表には選ばれたいですよ。そのためにも残りの試合でしっかりと準備をして結果を残さないといけないですよね」

 そう言って笑ったが、その目は少し寂しげだった。

 というのも、彼は2016年9月に行われたロシアW杯アジア最終予選の中国戦を最後に約2年、代表のピッチに立っていない。現在はヴィッセル神戸のキム・スンギュ、セレッソ大阪のキム・ジンヒョン、大邱FCのチョ・ヒョヌの3人が代表正GKの座を争っている状況だ。

連覇達成した翌日にトークショー参加

 川崎フロンターレのリーグ連覇が決まった今月10日。チョン・ソンリョンは翌11日、新宿・歌舞伎町で開催された「ONE EAST 東アジア文化祭り」のトークショーに出席していた。

 FC東京などでプレーした元日本代表の石川直宏、元北朝鮮代表の安英学、そして川崎のチョン・ソンリョンのという豪華メンバーの3人が、それぞれが各国代表への熱い想いや印象などについて語りあった。軽快なトークで真剣な中にも笑いあり。聞く人の心に残る話ばかりで、とても好評だった。

 当日、筆者がそのトークショーの司会を任されたこともあり、話の最中にチョン・ソンリョンに「まだ韓国代表は諦めていませんよね?」と聞くと、「もちろんです。チャンスがあれば選ばれたい」とハッキリと言っていた。

 試合が終わった翌日とあって、体は疲れていたはずだ。休養にあてて体のコンディションも整えることもプロとして大事な仕事。それにも関わらず、翌日のイベントに駆け付けるチョン・ソンリョンのその心意気に感服した。

 川崎が地域密着クラブとして、数々のイベントをこなしているのは有名だが、チョン・ソンリョンはそうしたイベントにも積極的に参加している。

 同クラブでチョン・ソンリョンの通訳を務める金明豪(キム・ミョンホ)氏も「(チョン・)ソンリョンは本当にいい選手だし、人柄も抜群。要請があれば嫌な顔一つせず、すぐ飛んでいきますよ」と太鼓判を押す。

11日に新宿で開催された「ONE EAST 東アジア文化祭り」のトークショーに出席したチョン・ソンリョン、安英学、石川直弘の3人(筆者撮影)
11日に新宿で開催された「ONE EAST 東アジア文化祭り」のトークショーに出席したチョン・ソンリョン、安英学、石川直弘の3人(筆者撮影)

 実際、彼とトークショーの打ち合わせをしたときも、「自分のほうが後輩なので気軽にソンリョンって呼んでください」と返してきた。

 W杯も経験し、優勝クラブのGKであるが、横柄な態度をとることは絶対にない。常に物腰が低く、誰にでも謙虚な姿勢を見せるため、彼のファンになる人も少なくないだろうと感じた。

 ただ、話してみて感じたのは、決して「派手」なタイプではないということ。通訳の金も「プレースタイルも言動も派手ではないですが、でもそれが彼の良さでもあるんですよ」と話す。

 外見が奇抜だったり、全身全霊で激を飛ばしてプレーするスタイルではないため、目立つタイプではないかもしれない。しかしながら、2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯で試合に出場した経験もある彼の評価は、Jリーグに来てから確実に高まっている。

出場した試合の無失点比率は1位

 Jリーグで連覇を成し遂げたこともあり、韓国メディアからもより注目が集まるようになった。

 韓国紙「毎日経済」は「Jリーグとチョン・ソンリョンの再発見」という見出しを打ち、「チョン・ソンリョンがゴールを守った2016年シーズン、川崎の守備は大きく変化した。それに彼は元々、瞬発力と敏捷性、そして安定感に優れたGK。歳を重ねて多少の衰えがあるかもしれないが、守備を統率し、ビルドアップの能力も優れている。Jリーグで活躍することで、もう一段階、レベルが上がっている」と称賛を送っている。

 実際、2016年から川崎は失点が減り、リーグ2位でシーズンを終えた。15年シーズンは48失点だったが、16年は39失点。17年は32失点、今季26失点と年を重ねるごとに安定した守備が光っている。

 個人の実績も申し分ない。今季、チョン・ソンリョンは29試合に出場して、23失点。無失点(クリーンシート)で抑えたのは13試合でリーグ2位。

 さらに出場した試合と対比した無失点比率は44.8%で単独1位。守備に不安を残していたチームが、3年間で失点を減らしているのは、チョン・ソンリョンの貢献度が高いと言っても、大げさではないだろう。

名GKイ・ウンジェも37歳でW杯メンバーに

 今や33歳になるベテランGKだが、2016年に川崎にやってきたこの男は、昨年と今年、リーグ連覇を達成して存在感を示してきた。

 もちろん、そのニュースが韓国に届いていないわけがない。未来のある若いGKを使うことが、今後の韓国代表にとっては良いことかもしれない。

 ただ、長らく韓国代表GKを務めたイ・ウンジェ(現・水原三星GKコーチ)が、2010年南アフリカW杯にメンバー入りしたときは37歳だった。

 だからこそ、代表入りの可能性はまだ残されている。Jリーグ屈指のパフォーマンスを発揮している彼をもう一度、韓国代表に呼んでみてはどうだろうか。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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