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北とのパイプ役にもノリノリ!?北朝鮮代表前監督のアンデルセン氏がKリーグの仁川U監督に就任!

金明昱スポーツライター
今夏からKリーグの仁川ユナイテッド監督就任が決まったアンデルセン監督(写真:ロイター/アフロ)

 サッカー朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮代表)を約2年間、監督として指揮した元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセン氏が、今夏から韓国Kリーグ・仁川ユナイテッドの監督に就任することが決まった。

 10日、仁川空港に降り立ったアンデルセン監督は、韓国メディアの前で正式に就任したことを発表。

『スポーツ朝鮮』によれば「個人的に仁川監督就任は、とても小さな一歩に過ぎないが、単純な就任以上の意味がある」と述べたという。

 さらに「北朝鮮代表監督として2年間を過ごし、今回、こうして1部リーグのプロチーム監督を引き受けることができて、歴史的に初めて南と北のサッカーチームを指揮することができて光栄」と、新たな挑戦への意気込みを語っていた。

先月中旬から仁川Uと交渉開始

 アンデルセン監督は2016年5月から北朝鮮代表監督に就任し、昨年12月には東京で開催されたEAFF E-1選手権で日本代表とも対戦。

 今年3月、平壌で行われたアジアカップ予選の香港戦で勝利し、来年1月にUAEで開催される本大会出場を決めてチームを去った。

 その後は、「香港代表や他クラブと接触している」という報道が出回っていたが、水面下ではKリーグとの交渉が進んでいた。

 『スポーツ朝鮮』は「仁川ユナイテッドと交渉を始めたのは先月中旬からだった。仲介人は家族と共に休暇を楽しんでいたアンデルセン監督とトルコで会い、交渉のテーブルについた。仁川が市民クラブなので、高額な年俸でアンデルセン監督の心をつかむような立場ではなかった。幸い、アンデルセン監督は仁川の懐事情をよく知っていることから、『勝利手当は一銭ももらわない』と語り、Kリーグで自身の能力を示さず、お金だけを必要とする姿がクローズアップされることを望んでなかった」と報じている。

北朝鮮をアジアカップ出場に導く

 アンデルセン監督は北朝鮮代表の指揮官を務めていたころから「国際試合が自身のアピールの場」と考えていたのは間違いない。

 というのも、私も昨年11月、“第3国”のタイで行われたアジアカップ予選のマレーシア戦の取材に行き、アンデルセン監督をインタビューしたが、その時「アジアサッカーの発展に貢献したい」という強い意気込みを感じていたし、段階的に自身のキャリアアップも想定していただろう。

 ただ、情熱はあっても結果が伴わなければ、どこからも声はかからないもの。実際にその手腕について、北朝鮮協会内部で疑念があったのは確かで、関係者からは選手やスタッフとのコミュニケーションや意思疎通がうまくいっていないとも聞いた。

 昨年12月のEAFF E-1選手権こそ日本と韓国に敗れ最下位の4位と結果を残せなかったが、アンデルセン監督は最後にアジアカップ出場を決めて、北朝鮮を去った。

 彼と昨年11月にタイで会ったあとき、こんなことを語っていた。

「北朝鮮選手たちのフィジカルや戦術理解力はこの2年間で確実に上がった。素質のある選手は多いので、あとはどれだけ国際試合で経験を積み、段階的な国内リーグ運営と強化が進めば2020年のワールドカップにも出場できる」と。

Kリーグに北朝鮮選手を呼ぶ!?

 これまでの経験や手腕を仁川ユナイテッドは高く評価したということだろう。現在、Kリーグで12チーム中11位(1勝8敗5分)と低迷するチームを救うことができるだろうか。

 一方で、仁川ユナイテッドはアンデルセン監督が北朝鮮代表を務めたことで、北側とのパイプについても少なからず期待している。

 アンデルセン監督もそのあたりを意識してか、韓国メディアに向けて「今後、仁川と北朝鮮代表、もしくは北朝鮮リーグのチームとの交流戦、北朝鮮選手をKリーグへ呼ぶなど、具体的な交流を始められればいい」と明かした。

 チームにとっては大きな話題作りになったが、まずはリーグで低迷する仁川を勝利に導くことがアンデルセン監督に課された使命だ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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