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ナイキの広告批判が全米で展開中 それでも選手の膝つきを抑えることに失敗したNFL

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズンも厳しい舵取りが迫られそうなロジャー・グッデル=コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NFLの2018年シーズンがいよいよ今週末に開幕したが、世界一の収益を誇るプロリーグを取り巻く環境は今なお騒然とした状態が続いている。

 開幕直前にナイキが今年30周年を迎える「just do it」キャンペーンの顔に、国歌斉唱時に膝つきを始めた元NFL選手のコリン・キャパニック氏を起用したことが判明し、ドナルド・トランプ大統領をはじめ様々ところから批判を浴び、ナイキの株価にも影響を及ぼし、市民から不買運動が巻き起こるほどの騒ぎになった。そんな中ESPNが現地9日付けで、NFLが今シーズンから導入予定だった国歌斉唱に関する新ルールが当面は取り止めになったと報じているのだ。

 2016年シーズンに国内に広がる人種差別への抗議活動として、キャパニック氏が始めた国歌斉唱時の膝つきは他選手にも徐々に波及。キャパニック氏がNFLから離れた2017年シーズンも同行為が続いていたことに、トランプ大統領が国、国歌、軍人を侮辱する行為だとして猛烈な批判を展開し、一時は他競技のアスリートを巻き込んでの一大抗争にまで発展したのは記憶に新しいところだ。

 結局この問題を引きずったままシーズンを終えたNFLは解決に動きだし、このオフに開かれたオーナー会議で国歌斉唱に関する新ルールを策定し、今シーズンから導入することを決定していた。ちなみに新ルールは、グラウンドに立つ選手を含めすべてのリーグ、チーム関係者は国歌斉唱時に起立しなければならないが、その一方で起立したくないものはロッカールームで待機できるという折衷案になっていた。

 だが本欄でも報告している通り、この新ルールに選手会がオーナー会議の勝手な決定事項と異議を唱えたことで、その後NFLが選手会の了承を得るべく両者の間で話し合いが続けられていた。この話し合いが開幕を迎えてもずっと平行線を辿ってしまったため、リーグ関係者がESPNに語ったところでは、新ルールの今シーズン導入は取り止めになったということだ。

 これにより今シーズンも何の制約も受けることがなくなった選手たちは、今なお膝つきを実施している。そしてシーズン開幕戦で膝つきを行ったドルフィンズの選手対し、キャパニック氏が支持するツイートを投稿。同行為が沈静化する気配は一向に見られない。

 もちろんこうした流れをトランプ大統領が黙って見過ごすはずもなく、早速ツイートで批判を展開。視聴率が落ち込んだ昨シーズンよりさらに下がっていると指摘した上で、「選手たちが国旗、国歌の前で誇らしく起立するところがTV中継されれば、たぶん視聴率は回復する?さもなければもっと悪化するだろう」と警告している。

 シーズン開幕から一触即発の状態のNFL。ロジャー・グッデル=コミッショナーは今シーズンも難しい舵取りを迫られることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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