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野球ゲーム「プロ野球スピリッツ」最新作のPV話題に 現実のスポーツを再現する苦労

河村鳴紘サブカル専門ライター
「プロ野球スピリッツ2024-2025」

 リアル系の野球ゲーム「プロ野球スピリッツ(プロスピ)」シリーズの最新作「プロ野球スピリッツ2024-2025」が年内に発売されることが、コナミデジタルエンタテインメントから発表されました。公開されたPV(映像)を受けて、ゲームファンの間では、グラフィックの出来の良さが話題になっています。もはや本物と仮想(ゲーム)の境界がつかない……という状態です。

 「プロスピ」は、人気野球ゲーム「パワフルプロ野球(パワプロ)」シリーズから“枝分かれ”した作品です。「パワプロ」は二頭身キャラクターですが、「プロスピ」は実際の野球選手と同じ頭身で、本物の野球中継のようなゲームが楽しめます。「プロスピ」最新作は、PS5とSteam対応であることから、ゲーム機のパワーが要求されることが推察されます。

 今回の発表でもポイントになるのは、リリースでも触れられている通りでしょう。「球場で見るような打球の軌道、選手たちの必死な動作、歓喜を爆発させる大観衆など、スタジアム内のあらゆるモーションとサウンドを演出……」とあります。「プロスピ」も「パワプロ」も、野球ゲームとしては既に完成されていますから、さらに突き詰めるとなると、本物の雰囲気をどこまで再現できるか……になるでしょう。本物と仮想の区別がつかないというのは、最高の誉め言葉といえます。

 そしてPVに、米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が登場。野球ゲームは、(ゲーマーもプレーはしますが)野球ファンが繰り返しプレーするもので、ゲームファン以外を捕まえるためにも、大谷選手の存在は大きいでしょう。ついでに言えば、大谷選手がコナミの野球アンバサダーになると発表されたときは、ゲームファンですらも驚きがありました。ただし、コナミはサッカーゲームでも、世界的なスター選手たちを起用した実績もあります。昔に同社から「(ゲームのプロモーションとして)ネイマール選手を取材しませんか」と打診があったときは、大変驚いたものですし、それだけ力を入れていたということでもあります。

 野球に限らず、スポーツのテレビゲームに言えることですが、本物スポーツの雰囲気をゲームで再現するのは、相当に大変です。人間の目は、わずかな違和感も察知してしまうからです。言い換えれば、その違和感をいかにしてつぶすかがポイントになるわけです。

 野球の場合であれば、選手の顔の再現、投球・打者のフォームもそうなのですが、やっかいなのはスポーツ選手の試合中の些細なしぐさです。野球であれば、塁上のランナーの立ち振る舞い、中継プレーのカットイン、塁間のランダウンプレーなど、すべてがかかわってきます。それを一つ一つつぶしていくからこそ、プロ野球選手も驚くようなゲームに仕上がるのです。

 話は飛びますが、大変なのはスポーツのアニメです。ゲームはプログラムで、その瞬間に選手のしぐさを再現し、臨場感のある画面を出す仕組みですが、スポーツのアニメはなかなか……。大ヒットしたアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」では、ボールを持つ選手のプレーの様子だけでなく、周囲の選手の動きもしっかり描かれていて本物のバスケットボールさながらに見せていますが、それを再現するには制作側に相当の負荷がかかります。

 そして昔であれば、ゲームもリアルな野球に近づけるのは大変だったのです。野球は他のスポーツよりもルールが複雑ですし、そのルールをゲームで再現した上で、的確に操作させるのはこれまた一苦労だったからです。

 ちなみに、コナミの野球ゲームの開発チームに取材させていただいたこともありますが、野球に精通しているのはもちろん、ゲームから見た野球観、見立てもしっかりしており、普通の野球解説者よりも鋭い指摘があり、驚かされたことがあります。

【関連】「『負け運』は良い投手につく能力なんですよ」野球ゲームの選手データどう決める? コナミに聞いてみた。(文春オンライン)

 現実の野球は、ルールの複雑さ、試合時間の長さなどから、敬遠されているのでは……と指摘する声もあります。しかし、一人の「野球好き」としては、ぜひ「プロスピ」最新作が野球の魅力を伝えることに貢献し、「野球しようぜ」というきっかけになればと願っています。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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