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アニメ「鬼滅の刃」 来春放送の「柱稽古編」は正念場?

河村鳴紘サブカル専門ライター
アニメ「鬼滅の刃」の公式サイト

 人気アニメ「鬼滅の刃」シリーズの新編「柱稽古編」が2024年春からフジテレビ系で放送されることが10日、発表されました。今回の発表のポイントについて考えてみます。

 アニメ「鬼滅の刃」は、週刊少年ジャンプ(集英社)で2016~2020年に連載された吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんのマンガが原作。人を食う鬼を倒す「鬼殺隊」になった少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼になった妹を人に戻そうと奮闘するダークファンタジーです。2020年に公開されたアニメ映画「無限列車編」は、興行収入が400億円を突破するなど社会的なブームとなりました。

 「柱稽古編」は、今年4~6月に放送された「刀鍛冶の里編」の続きです。原作マンガでは、敵との決戦に向けて主人公や仲間たちが厳しい修行をするという内容でした。

◇「柱稽古編」の発表内容
・2024年春にフジテレビ系でテレビ放送(1話は1時間SP)
・2024年2月2日から「ワールドツアー」を上映
・国内427館、世界は140カ国以上で上映
・内容は「刀鍛冶の里編」の第11話と「柱稽古編」第1話の先行公開

 今回の発表を一言で言うと「スキのない展開」です。「柱稽古編」の第1話の放送前に、先行上映することでビジネスでの売り上げが立ちます。日本については既にブームになった分、大きな上積みが難しい側面があるわけですが、市場の大きな海外展開に力を入れているのも見事です。またニンテンドースイッチ用ソフト「鬼滅の刃 目指せ!最強隊士!」も来年4月に発売されますが、放送のタイミングを考えるとビジネスとして理想的です。

 ただし、原作マンガの連載終了時や、アニメ映画「無限列車編」の公開直後のような再度の盛り上がりは、時間の経過もあるので、大変ではないでしょうか。とはいえ、「遊郭編」や「刀鍛冶の里編」では日曜23時15分という深い時間の放送でありながら、リアルタイムと録画視聴率を合わせた「総合視聴率」は、人気ドラマに匹敵するほど。ただし、そうした人気の度合いは記事にしづらく、以前の盛り上がりを考えるとインパクトに欠ける分、メディアもさほど熱心に報じません。

 もう一つ言えば、「柱稽古編」は、「無限列車編」や「遊郭編」などのように強敵とのヒリヒリする戦闘があるわけではなく、クライマックスへ向けての導線というべきお話です。コンテンツの展開には緩急があり、「柱稽古編」は「緩」であり「つなぎ」ですから、どちらかと言えば以後の展開に期待する人が多いのは事実でしょう。そのため「柱稽古編」は、ある意味、正念場かもしれません。

 ちなみに、日本リサーチセンターが2021年に発表した「全国キャラクター調査」によると「鬼滅の刃」の認知度は81%でした。「ドラえもん」(98%)や「サザエさん」(97%)のような、毎週放送される長寿作にはさすがに及びませんが、ここ10年で登場した“新参者”としては驚異的な数値です。「機動戦士ガンダム」(81%)と同じで、「ONE PIECE」(75%)や「進撃の巨人」(66%)「新世紀エヴァンゲリオン」(65%)「プリキュアシリーズ」(63%)よりも上。特に15~29歳の男女、30歳代の女性、40歳代女性の認知度は、それぞれ9割以上もあります。

 SNSで関連用語が次々にトレンド入りするような以前のような「分かりやすさ」は薄れつつあるものの、これまでの視聴率を維持して次につなげれば、クライマックスでの再度の盛り上がりに期待が持てるのではないでしょうか。

 アニメ「鬼滅の刃」シリーズは、知名度や実績を考えれば、一定レベルの成功は既に約束されている作品です。競馬に例えるとスーパーホースですから「レースに勝って当たり前」で、「派手に分かりやすく圧勝できるか」が求められるのです。市場の大きな、かつ新規の掘り起こしが可能であろう海外で、さらに盛り上がるのかを含めて、注目したいと思います。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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