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アニプレックスが気鋭のコンテンツ企業を子会社化 実写ドラマでも世界進出へ

河村鳴紘サブカル専門ライター
アニプレックスの公式サイト

 アニメ「鬼滅の刃」などで知られるアニプレックスが、コンテンツのプロダクション事業を展開するオリガミクスパートナーズ(東京都渋谷区)を完全子会社化することが明らかになりました。オリガミクスは、社名をミリアゴンスタジオに変更します。株式の取得は6月1日の予定で、買収額は未公表です。

 オリガミクスは、監督・脚本家などのマネージメントや、映画やマンガ、ゲームなどのプロダクション事業を展開する気鋭の会社です。ネットフリックスで配信された実写ドラマ「今際の国のアリス」シリーズや、映画「キングダム」シリーズを手掛けた佐藤信介監督、映画「妖怪大戦争 ガーディアンズ」や映画「ザ・ファブル」の脚本を担当した渡辺雄介さんらが同社に所属しています。

 また新会社(ミリアゴン)として、韓国のドラマ制作会社「スタジオドラゴン」の前代表チェ・ジニさんが2021年に設立した「IMAGINUS(イマジナス)」と戦略的パートナーシップを締結。チェさんはミリアゴンのエグゼクティブ・アドバイザーに就任し、両社で世界に向けたアジア発のドラマシリーズの企画プロデュースをします。

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 なお「ミリアゴンスタジオ」の名付け親は佐藤監督で、「一万角形=無限の可能性」という意味があり、さらに「折り紙では作れない形」ということで、オリガミクスではできないことをできる会社に……という希望を込めているそうです。

 今回の子会社化のポイントは、「鬼滅の刃」や「Fate」シリーズなど多くの人気アニメを世に送り出したアニプレックスが、実写コンテンツの制作にも力を入れ、それも世界展開を意識しているということです。そして、ありがちなアニメ作品の実写化……という方向ではなく、既に実績のある人材(クリエーター)・企業と手を組み、新たにコンテンツを作り上げるという意思表示をしていることです。そして、アニメの実写化も、オリジナルの実写も、どちらも「できる」という選択肢があるのは、強いといえます。

 アニプレックスは、ソニー・ミュージックの子会社ではありますが、自社の通期売上高で2000億円を超えることも。人気マンガ原作のアニメを次々とヒットさせる手腕が注目される一方で、オリジナルストーリーのアニメ制作にも意欲的で、海外展開にも力を入れています。同時に、ソニーグループ内に巨大なゲーム会社(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がありながらも、スマホゲームを展開してヒットさせて、収益力が低いアニメビジネスの弱点を巧みにカバーしています。

 もちろん、アニメやゲームもそうですが、コンテンツ制作はヒットするかは出してみないとわからない「水もの」で、「絶対の成功」などはありませんが、「ベット(賭け)」をしなければ、成功の可能性はゼロです。その一方で世界でヒットしたときの成功時の果実は大きく……挑戦する意味は大きいのではないでしょうか。アニメだけでなく、実写でも人気作を抱えるようになれば、さらにゲームと組み合わせれば、戦略の幅はさらに広がりそうです。

 帝国データバンクによると、業種別売上高ランキング(映画・ビデオ制作)で、アニプレックスの順位は1位です。しかし裏返せば、これだけの成功をしているだけに、さらなる成長は大変なのも確か。そのためにも今回のような挑戦は必要だったとも言えます。

 アニプレックスとミリアゴンスタジオが、どんな実写コンテンツを世界に送り出せるか。今後に注目したいと思います。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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