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ゲーム動画の利用状況 インフルエンサーとゲーム会社 ゲームメディアの差は

河村鳴紘サブカル専門ライター
(提供:イメージマート)

 若い世代では、テレビよりもインターネットのほうが利用時間が長いのは、肌感覚でも思うところですが、データからも判明しています。そしてゲームをプレーしてその様子を解説・実況する「ゲーム実況」などが人気ですが、ゲームの動画は、どのようにして消費者に見られているのでしょうか。

◇若い世代はテレビよりネット動画

 ネットとテレビの利用時間ですが、総務省が2022年8月に発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、主なメディアの平均利用時間(平日)への質問があり、40歳代以下の世代では、ネットの時間がテレビを上回ります。そして若い世代になると、ネットの利用時間が明らかに増えています。

赤いグラフがテレビの利用時間で、青がネットの利用時間。40代からネットが上回り、若い世代はネットの利用時間が圧倒的に長いのがわかります=「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より
赤いグラフがテレビの利用時間で、青がネットの利用時間。40代からネットが上回り、若い世代はネットの利用時間が圧倒的に長いのがわかります=「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より

 調査では「動画系メディアの比較」もあります。全年代でこそ、ネット動画よりもテレビの利用時間が上ですが、10歳代・20歳代になると逆転します。前年の調査では若い世代でも、テレビとネット動画の時間がもっと拮抗していましたから、今後はネット動画の時間が拡大し、テレビとの差が広がる……と考えるのが自然です。

10代と20代では、ネット系動画のほうが、テレビ系動画を上回っています。=「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より
10代と20代では、ネット系動画のほうが、テレビ系動画を上回っています。=「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」より

 そしてゲームは、今や自分でプレーするだけではなく、第三者のゲームプレーもコンテンツとして、あたかも番組のように多くの人に楽しまれています。もはや子供たちも、テレビのタレントよりもYouTuberの名前を挙げ、彼らがアップする動画「ゲーム実況」を熱心に見ています。

 LINEリサーチが15~24歳の男女に対して実施している調査で、「いちばん信頼している/参考にしているインフルエンサー・有名人」を自由記述で質問すると、テレビでおなじみのタレントを押しのけ、YouTuberの強さが際立ちます。

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◇公式超えるインフルエンサーの影響力

 ゲーム業界団体の「コンピュータエンターテインメント協会」が発行する書籍「2023CESA一般生活者調査報告書」では、ゲームを継続的に遊ぶ人を対象に「あなたが見たことのあるゲーム関連動画は?」という質問(複数回答可)があります。

 トップは「YouTuber・VTuber・有名人の動画」で61.6%。続いて「ゲームメーカー公式の動画」の37.4%、「一般の個人による動画」が31.8%となります。インフルエンサーの存在感が突出しており、公式(ゲーム会社)よりも見られている事実が浮かび上がります。YouTuberとVTuber、有名人(俳優・タレント)は、それぞれ別々の回答にして、どの人たちが影響力があるかも知りたいところです。

 ゲーム動画の配信について、今でこそ積極的に活用する流れになっていますが、もともとの話を言えば、ゲーム会社はどちらかといえば前向きではなく、結果として追認する流れになったという経緯があります。ネット動画が優勢になった時代に取材をしたとき「(動画配信を)止めるのはもはや無理」というものでした。今や動画抜きでゲームのプロモーションは考えられません。

◇ゲームメディアの立ち位置難しく

 ゲーム配信もビジネスであり、ビジネスにおいて先にサービスに手を付けた「先行者」は優位になりますが、この流れで厳しくなったのは、ゲームメディアでしょう。上記の質問で「ゲーム情報メディア公式の動画」を見たことがある人は、21.0%。「一般の個人による動画」よりも少なかったのです。ゲームメディアは、ゲーム会社とつながりがありますから、ネット動画を制作するにしても、いろいろな配慮が必要になるでしょう。そうなると、面白い動画は生み出しづらくなります。

 さらに言えば今ではゲーム会社が、自社でゲームの最新情報を紹介できてしまい、そこで完結します。そのため、最新ゲームの情報を紹介するという、従来のメディアとして活用していた手法も有効でなくなります。かといって、独自色を強めれば、YouTuberの動画と競合します。

 つまり現在は、ゲーム好きが動画を発信し、その動画を他のゲーム好きが楽しむ「ゲームの消費サイクル」が確立しています。ゲームソフトが核にはなっているものの、主導権はゲームファンにあるといえ、さらに言えばゲームメディアは抜きで、循環している見方も成り立ちます。ただし、これはゲーム以外のメディアにも似た悩みでして、SNSを活用して消費者がメディアになっていることも関係しているでしょう。

 ただし、ゲームには、メディアの力が必要になりそうな分野があります。「一般生活者調査報告書」の調査で「eスポーツ関連の動画」は、8.4%でした。巨額の賞金の世界大会もあり、プロのプレーヤーも存在しますが、データから見ると「まだまだ」「伸びしろがある」のです。そして、集客に課題のある今だからこそ、メディアの力が発揮される余地がありそうに見えますが、今後どうなるのか注目したいところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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