ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation Plus(PSプラス)」がリニューアルされ、2日から新サービスがスタートしました。そして任天堂とマイクロソフトも同様に「ゲームのサブスク(定額使い放題)」に力を入れています。なぜでしょうか。

◇3社のサブスク 異なる部分は

 「PSプラス」は、ソニーのゲーム機をオンラインで対戦・協力プレーで遊ぶための有料サービス(月額850円)です。今回は、PS3などの昔のソフトが遊べる「PS Now」(月額1180円、現在は廃止)を統合して再編成。3種類(850円、1300円、1550円)から選べるようになりました。「PS Now」の立て直しと、顧客単価のアップが狙いで、ソニーグループの説明会でもリニューアルへの期待が言及されました。

 そして任天堂は「Nintendo Switch Online」、マイクロソフト(MS)は「Xbox Game Pass」という類似のサブスクを展開しています。3社のサービスは似通う面もありますが、異なる部分もあります。

 最も攻めているのはMSで、サービスに加入すれば、自社の新作ゲームが発売日から遊べるとアピール。同様にPC向けの「PC Game Pass」もあり、最初の3カ月は100円で遊べます。課題はブランディングの弱さで、サービスに分かりづらい面もあります。

 ソニーは、PS5の有力タイトルを一定期間経過すれば、サブスクに加えるとしています。ただしMSのように、新作ゲームを発売日から、サブスクに投入することは、否定的です。MSと同タイプのサービスでもあり、特にMSとの分かりやすい差別化については、課題となりそうです。

 任天堂は、追加パックを購入すれば「マリオカート8」のコース大幅追加などのサービスはありますが、遊べるゲームは、ファミコンやスーパーファミコン、ニンテンドウ64などの懐かしの名作ソフトが遊べるまでにとどめています。「ソフトを安売りしない」という姿勢でして、MSやソニーのように「ニンテンドースイッチのタイトルでサブスクを」という声はあるでしょう。

 なおサブスクの会員数ですが、トップはソニーの4740万。続いて任天堂の3200万以上、そしてMSの2500万。3社とも相当数の有料会員を獲得しており、ゲーム機の出荷数、規模で考えると、いずれも「成功」と言って差し支えないでしょう。携帯電話のビジネスでも同様ですが、一度会員を獲得すれば、重大な不手際がない限り、大量の離脱者は考えづらいところです。

 なお、ソニーとMSは高性能ゲーム機を発売して似た路線ですから、ライバル意識は強いと言えます。そして先行するソニーに対抗するためMSは、「発売日から新作ゲームが遊べる」という超強力なサービスを繰り出した面はあります。それもMSがかなりの高収益体質だからこそできるわけです。

◇ゲームビジネスの弱点をカバー

 3社とも、なぜサブスクに力を入れるか?といえば、ヒット作頼みで安定しづらいゲームビジネスの弱点をカバーできるからです。過去のコンテンツを活用できるから効率的でもありますし、同時にサブスクの持つコミュニティーが今後のビジネスで活用できる可能性もあるからです。

 ゲーム機を生産するハードメーカーは、そもそも、新型機の世代交代で失敗の可能性がある……という弱点を抱えています。実際、Wiiで成功した任天堂がWii Uで失敗し、PS2で成功したソニーがPS3で大苦戦を強いられました。

 交代期の新型機へのシフトチェンジですが、発売後1~2年は、ゲーム機も普及しておらず、ソフトも売れない傾向にあり、赤字も珍しくありません。一度は“天下”を取っても、交代に失敗すれば“地獄”を味わうこともありえたのです。ゆえに新型機の投入について「ギャンブル」という表現をした関係者もいました。

 ところがサブスクの安定収益のおかげで、PS4からPS5の世代交代の2020年度を、ソニーグループがかなりの黒字で乗り切りました。新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり需要」があったとはいえ、従来では考えられないことでした。ゲーム機の出荷数とパッケージソフトの売り上げだけで、ゲームビジネスの成否が決まるのは過去の話です。

ソニーグループのゲーム事業の売上高と営業利益。PS2とPS3、PS4のスタート時とは異なり、PS5は利益が落ち込んでいないのが分かる=ソニーグループ説明会資料から
ソニーグループのゲーム事業の売上高と営業利益。PS2とPS3、PS4のスタート時とは異なり、PS5は利益が落ち込んでいないのが分かる=ソニーグループ説明会資料から

 そして今後ですが、「ニンテンドースイッチ」の世代交代を迫られるであろう任天堂が、どう乗り切るかです。収益面でもそうですし、「Nintendo Switch Online」の会員数を新型機に移行させてくるでしょう。そうすれば3200万台(サブスクの会員数)の売り上げが立つ可能性が高いのです。

 ソニーのゲーム事業は、ネットワークがらみで4半期(3カ月)ごとに約1000億円(つまり年間で計約4000億円)の安定収益があります。ちなみにダウンロード配信や、追加コンテンツはその数倍あります。任天堂もサブスクの安定収益はありがたいでしょう。そして課題とされる新型機の移行について、成功かつ好業績で乗り切る「武器」があるのも心強いはずです。

 ただし、サブスクも万能ではありません。任天堂とソニー、MSのサブスクですが、複数もしくは全部を利用している人もいるのではないでしょうか。顧客単価のアップは大事ですが、王道は新しいゲームファンを獲得していくことです。

 そしてサービス充実の裏返しでもあるのですが、サブスクの内容が複雑になるとライト層には理解しづらくなります。今のサブスクは、ゲーム初心者に理解してもらうのは一苦労です。実際、あるゲーム機の購入者にサブスクの説明を求められて、ホームページを見せながら説明しましたが「よくわからないから、今はいいや」ということが何度かありました。入らないのも一つの選択肢ですが、入ってもらうための努力や工夫は必要でしょう。

 そしてサブスクでも異なる路線を取る3社ですが、どの戦略が正解なのか。今後の動きを注視したいと思います。