「ドラゴンボール」や「スラムダンク」「セーラームーン」「うる星やつら」などかつての名作が、映画やテレビを問わず、アニメとして復活・展開することが続いており、近年その流れがさらに強まっています。なぜでしょうか。

◇アニメの作品数多くネタ不足

 アニメ市場は、新型コロナウイルスの影響をうけたものの、見通しは明るい状況です。日本動画協会の「アニメ産業レポート」によると、2020年のアニメ市場は、前年比3.5%減の約2兆4300億円でした。新型コロナの影響を受けたものの、「鬼滅の刃」は興行収入400億円を突破し、ネット配信なども好調でした。テレビ局がアニメビジネスに、さらに力を入れるほどです。

 しかしアニメは作品数が多く、ネタがない……つまり原作不足の状況にあります。アニメの原作になるマンガは、話題になれば当然、中には第1話が出ると映像化のオファーがあるほどです。要するに、ネタは狩りつくされていて、行き着いた先が、かつての名作を復活なのですね。

 上記以外にも「フルーツバスケット」や「シャーマンキング」「銀河英雄伝説」「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」「シュート!」など「名作の復活もの」を挙げていけばキリがありません。

◇名作の復活はメリットだらけ

 リメーク……「名作の復活」は、ビジネスから見るとメリットだらけです。まず、知名度、話題性ともあり、特別な販促をせずとも一定数の客層を確保できます。既に世界観も完成されており、制作工程も省略できる可能性があるので、コスト圧縮も見込めます。

 何よりヒットした実績があり、作品内容にも安心感があるからトラブルも起こりづらい。出資も募りやすいのです。今どきのワードを使えば「既存コンテンツの有効活用」です。安定した収益を重視すれば、名作を復活させない理由はゼロです。

 ちなみに「ドラゴンボール」は、原作マンガもテレビアニメも1990年代後半に終了。しかし2009年にアニメが復活し、リメークにもかかわらず人気を博しました。2016年には集英社が「ドラゴンボール室」を設置。ドラゴンボールでビジネスを展開するバンダイナムコホールディングスの「統合レポート」によると、グループの同作の売上高は、2016年は約350億円、2021年は約1300億円に成長しています。

◇リメークは度が過ぎると“麻薬”に

 ただしどんなことでも、弱点はあります。ドラゴンボールのような成功例はありますが、リメークも度が過ぎると“麻薬”になります。なぜなら、メリットがありすぎて、苦労を避けるようになるからです。

 会社経営に例えると、収益性を重視して人気商品に偏った事業展開をすると、売れ行きが鈍った時に危機に陥ります。答えは、並行して数年先を見据えて次の商品を開発し、収益の柱を複数作ること。どんなに便利なことも頼りすぎると危機になるのです。「オリジナルもの」のアニメ制作、新しいコンセプトの作品作りを継続することで、苦労しないと制作力は確実に落ちます。

 ちなみに日本のアニメは海外で評価されている反面、今後も続く保証はありません。アニメを配信するプラットフォームで、日本アニメの評価が高いのは、会員獲得の武器になり、視聴されるからです。他の手法で効率的・安価に会員獲得を達成できるならば、代わられる危険性があると指摘する関係者もいました。「~頼み」ではダメなのですね。

◇「転ばぬ先の杖」

 今やアニメ映画「エヴァンゲリヲン」や「呪術廻戦」の興収が100億円を突破するなど、アニメビジネスは好調と言えるでしょう。だからこそ「転ばぬ先の杖」というべき、先を見据えた動きが重要になるのではないでしょうか。

 オリジナルものの長所は、作り手の思い通りに制作できることですが、リスクがあるのも確かです。ですが、オリジナルものや新機軸には、予想外の爆発的ヒット……“金脈”があるのです。

 マンガやゲームのビジネスは、オリジナルものを制作する意識が徹底しています。マンガは人件費の安さを武器に、新人の発掘と育成、新ジャンルの発掘の意識は高いと言えます。コストのかかるゲーム制作でも、リスクヘッジをしながらオリジナルものを作ろうとする意識があり、「インディーズゲーム」という小規模での制作にも取り組んでいます。

 爆発的に稼ぎづらいアニメビジネスの構造を考えると、収益が計算できるリメークにより力が入れるでしょうし、ビジネスとして正攻法です。何より名作の復活は、ファンが歓迎しています。しかし、どんなビジネスでも偏るのは危険なのです。新しい刺激や挑戦がなければ、マンネリになっていずれ壁に当たるのですから。