誕生35周年を迎えた国民的人気ゲーム「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」シリーズ。本編シリーズ最新作「12」や、「3」のリメーク版、「10」のオフライン版などが発表され、ゲームファンを喜ばせました。しかし、いずれも対応するゲーム機を伏せました。理由を考えてみます。

◇対応ハードを出す意味は

 「ドラクエ」の本編シリーズの発表で、対応するゲーム機に特別な意味がありました。スクウェア・エニックスの前身・エニックスのときから「ドラクエは最も売れているハードで出す」と明言してきました。その結果ドラクエの最新作の登場は、対応したゲーム機の「勝利宣言」のような面があったのです。

 「1」~「4」はファミコンで、「5」「6」はスーパーファミコン。「7」はPSで、「8」はPS2。「9」はニンテンドーDS。「11」はニンテンドー3DSとPS4でした(オンライン専用の「10」は除く)。「11」のような変則パターンもありますが、振り返ると確かに最も売れているハードで出しているのです。

 ドラクエは、コアなゲームファンはもちろん、「ドラクエだけは遊ぶ」というライトユーザーもいます。その特性を考えると、最も普及したゲーム機に満を持して出すのは合理的です。

 かつてゲーム機の普及のカギの一つは、人気ゲームの囲い込みでした。実際「ファイナルファンタジー7」は、対応ハードの移籍で、ゲーム業界の力関係を変えました。しかし時代は変わりました。高騰したソフトの開発費を回収するため、1人でも多くのユーザーに遊んでもらうために、複数のプラットフォームで展開することが「当たり前」になりつつあります。

 そもそも人気ゲームの囲い込みのメリットは、ハードメーカーにあっても、ソフトメーカーにはさほどありません。最初は独占供給のように見えても、ある時期に別のプラットフォームに出すこともあるように、「独占」も期間限定だったりするわけです。

 要するに、スクウェア・エニックスからすると、各ソフトの対応ゲーム機の発表を急がなくても良い……となります。対応ハード未発表でも、ネットの話題をさらえるほど「ドラクエ」にはコンテンツのパワーがあります。むしろ、後回しにしたほうが、ゲームファンも盛り上がるし、「話題作り」という意味ではむしろ良いのかもしれません。

◇「ドラクエ熱」を高める戦略

 今回のオンライン発表会を見て二つのことが浮かびました。一つは前述した通り、対応ハードの発表はもう必須ではないこと。もう一つは「12」をゴールに、ドラクエを遊びたくなる「ドラクエ熱」を高めるため、多くの「ドラクエ」コンテンツを投入したことでしょう。

 2009年発売の「ドラゴンクエスト9」(DS)ですが、スクウェア・エニックスは熱を高めるため、「ドラクエ4」(2007年11月発売)、「ドラクエ5」(2008年7月)、「ドラクエ6」(2010年1月)をDSでリメークしました。いずれもミリオン(100万本)を突破する人気になり、当時は「リメークでミリオンにいくのか……」の他のゲームメーカーが嫉妬するほどでした。

 そしてリメークは、コンテンツをリフレッシュする効果が見込めることです。「3」を遊んだ経験のある人は、多忙で「ゲーム離れ」をしたとしても、今回のリメークが目に飛び込んでくれば、感情を揺さぶられないはずはありません。オープニング曲の「ドラゴンクエストマーチ」もそうですが、かつて自分が熱狂した「思い出」こそ、強力な“プロモーション”になるからです。

 ドラクエシリーズは、ゲームとしての面白さはもちろん、初心者でもすぐ遊べるハードルの低さ、魅力的なキャラが織り成す物語が展開され、名作ぞろいです。そして今遊んでも面白いのですが、ライトユーザーからすれば、今のゲームと比べるとグラフィックで見劣りすることは避けられません。

 そこで有効なのが、昔の名作を今に合わせて、しっかり作り直す本腰を入れた「リメーク」です。ドラマも俳優を変えて放送したり、アニメでも過去の名作がリメークされる傾向が強まっています。

 リメークは大きく2種類あり、原作の要素や見た目をなるべく残す普通バージョンと、今回の「ドラクエ3」のリメーク版のように本腰を入れて大きく変えるバージョンがあります。昨年発売された「ファイナルファンタジー7リメイク」のような新作並みの力を入れたものあります。オンライン専用ゲームである「ドラゴンクエスト10」のオフライン版の開発も、コンテンツの有効活用と捉えても良いのではないでしょうか。

「ドラゴンクエスト10 目覚めし五つの種族 オフライン」のゲーム画面
「ドラゴンクエスト10 目覚めし五つの種族 オフライン」のゲーム画面

◇多面展開の課題

 現在は、ユーザーの好みがより保守的になり、SNSの影響もあってか人気作へ一極集中する傾向にあります。ネームバリューのあるドラクエは有利な立場にいるわけですから、活用しない手はありません。

 また「3」のリメーク版は、発表会でも触れたように「1」「2」も同じ手法でリメークできます。気の早い話ですが「天空」シリーズ、それ以降の展開も可能でしょう。

 無料のスマホゲームがうなるほどある今、人気コンテンツの有効活用は、これまで以上にカギを握るのではないでしょうか。コンテンツは継続的に出てこそ、後々に効果を発揮します。

 「ドラクエ」のコンテンツの大量投入ですが、唯一懸念があるとすれば、人材募集をしているように「作り手」の不足です。企画があっても、作る人がいなければ完成は遅れます。そしてゲーム業界に限らず、優秀な人材は誰もが欲しいのです。

 今回のオンライン発表会で各「ドラクエ」作品の対応ハードを伏せても、これだけ話題にできたことは、コンテンツの重要性がさらに高まったともいえます。発表の「一発目」は重要ですが、そこで対応ハードを言わなくても成り立ってしまう。これもまた「時代の変化」と捉えてよいのかもしれません。

◇ドラクエ35周年のオンライン発表会で出た6タイトル

「ドラゴンクエストけしケシ!」…スマホ向けのパズルゲーム。2021年配信予定。

「ドラゴンクエスト10 天星の英雄たち」…オンライン専用ゲーム「ドラクエ10」の新バージョン。

「ドラゴンクエスト10 目覚めし五つの種族 オフライン」…ネットに接続なしで遊べるドラクエ10。2022年発売予定で対応ハード未発表。

・「HD-2D版 ドラゴンクエスト3」…ドット絵をベースにした背景に、独特な立体感を演出するCGでリメーク。家庭用ゲーム機向け(対応ハード未発表)に全世界同時発売予定(発売時期未定)。

・「ドラゴンクエスト レンジャーズ」…「ドラクエ11」に登場したカミュと妹マヤの子供時代、世界で仲間たちと宝探しをするRPG。対応ハード未発表。なお「ドラクエ モンスターズ」シリーズは別に開発中であることも明かす。

・「ドラゴンクエスト12 選ばれし運命の炎」 「ダーク」「大人向け」で、いろいろな選択肢を迫られる内容になるという。対応ハード未発表、世界同時発売。