大手ゲームソフト会社の決算そろう 好調も「強み」が収益減に… 気になる三つのこと

大手ゲームソフト会社が出展した「東京ゲームショウ2019」の様子(写真:西村尚己/アフロ)

 バンダイナムコホールディングスやスクウェア・エニックス・ホールディングスなど、大手ゲームソフト会社の2020年度通期連結決算がこのほど出そろいました。新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり」需要が後押しして軒並み好調でしたが、「すげえ!」だけで終わらせず、もう少し掘り下げてみます。

◇主要6社のうち5社は「増収増益」

 ソニーグループのゲーム事業(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)と任天堂の決算については既に触れた通り絶好調です。また今後の展開に違いがあることも触れました。

【参考】恐ろしい任天堂の決算 スゴいゆえの「悩み」と次への一手

【参考】ソニーのゲーム事業 苦戦覚悟も終わってみれば絶好調 なぜ?

 そして両社のゲーム機に有力ソフトを供給する大手6社の業績ですが、一言で言えば「好調」で、セガサミーホールディングス以外は、前年度の業績を上回る「増収増益」でした。

<主要6社の2020年度通期連結決算>

※売上高順。カッコ内のパーセントは前年度比。▲は減少

【バンダイナムコホールディングス】

 売上高7409億円(2.3%) 営業利益847億円(同7.5%)

【スクウェア・エニックス・ホールディングス】

 売上高3325億円(27.6%) 営業利益472億円(44.2%)

【セガサミーホールディングス】

 売上高2777億円(▲24.2%) 営業利益66億円(▲76.3%)

【コナミホールディングス】

 売上高2727億円(3.7%) 営業利益642億円(44.8%)

【カプコン】

 売上高953億円(16.8%) 営業利益346億円(51.6%)

【コーエーテクモホールディングス】

 売上高604億円(41.6%) 営業利益244億円(73.0%)

 最も業績が厳しかったセガサミーも黒字でした。どの業界も総じて厳しい状況ですから、ゲーム業界は新型コロナがプラスに働いたのは否定できないところです。

 そして「その中でも勝ち組は?」とあえて“線引き”するなら、営業利益率の高いカプコンとコーエーテクモでしょう。特にコーエーテクモの営業利益率は4割を超えました。もちろんヒット作があってこそですが、家庭用ゲーム機用ソフトの事業比率が高い企業ほど、業績が良いという形になっています。

<主要6社の営業利益率>

【バンダイナムコホールディングス】 11.4%

【スクウェア・エニックス・ホールディングス】 14.2%

【セガサミーホールディングス】 2.4%

【コナミホールディングス】 23.5%

【カプコン】 36.3%

【コーエーテクモホールディングス】 40.4%

 好調だったカプコンとコーエーテクモ、そして苦戦したセガサミー以外の3社は、悪いわけではありません。しかし、アーケードゲーム事業や、スポーツ施設の事業は、厳しい数字が並びます。顧客との対面を必要とする事業は、コロナのダメージを少なからず受けているのです。

 とはいえ、特定の事業に頼らない「事業リスクの分散」という意味では、うまく働いたとも取れます。セガサミーも、パチスロなどの事業が前年度比で300億円以上の経常損益ダウンがありながらも、全体で黒字なのです。以前はパチスロなどの事業に助けられたこともあるので、今回はゲーム事業がカバーしたとも言えます。

 むしろ難しいのは、今後でしょう。特に、不振だった施設系の事業に対する経営判断です。もともとアーケードゲームの業界自体は右肩下がりだったのは確かで、決算の数字を見る限り、その流れに拍車がかかりそうです。

 「不採算事業を切る」というのも一つの選択肢で、時代の流れに合致しているかもしれませんが、「ゲーム文化」の一つが衰退することを意味します。ビジネスで考えると、短期的には不採算事業をカットできるのでプラスになるでしょうが、ゲームに触れる間口が減るわけで、将来的な産業の可能性もゼロになります。切るべきか、耐えるべきか……悩ましいところでしょう。

◇ゲーム事業以外での稼ぎも

 各社の決算短信で、三つのポイントを挙げます。

 一つ目は、コーエーテクモの本業以外での稼ぎの多さです。営業利益自体も好調ですが、本業以外のもうけを加えた経常利益は393億円です。投資有価証券売却益だけで106億円あり(売却損も25億円ありますが)、本業以外で約150億円を積んでいる計算になります。2019年度も営業外収益が多かったのですが、2020年度ははるかに上回る数字でした。

 なお同社は、2023年度に売上高900億円、営業利益300億円という目標を打ち出しています。パッケージゲームでは500万本級タイトルの実現、毎期200万本級タイトルの発売、スマートフォンゲームでは月商20億円タイトルへのチャレンジ、複数の月商10億円タイトルの創出を目指すそうです。野心を感じますし、中期目標を公言することは悪いことではありません。ゲーム業界は近年、業績の各種数字を伏せたがる傾向がありますから、ぜひとも頑張って欲しいところです。

 二つ目は、スクウェア・エニックスのゲーム以外の事業です。「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」などのビッグタイトルがあるだけにゲーム事業ばかり注目が集まりますが、ゲーム事業に比べて小規模ながらゲーム以外の二つの事業もかなり好調でした。

 同社の出版事業の売上高は268億円(前期比38.0%増)、営業利益も117億円(61.2%増)。二次的著作物の企画・販売を手掛けるライツ・プロパティ事業は、売上高95億円(8.2%増)、営業利益は22億円(120.2%増)。利益率の高さもポイントで、ライツ事業は成長の可能性も感じさせます。

 最後はコナミです。2021年度の通期予想について、新型コロナの影響を理由に開示を見合わせました。他社は開示していますから、その温度差を感じますね。2020年度の業績は好調だったのですが、同社はスポーツやカジノなどのゲーム以外の事業があり、その見通しが引き続き厳しいことも影響しているのでしょう。

 5月末時点で累計出荷数300万本を超えるなどヒットした「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」は2020年度の業績に貢献しました。重要な点はスマホゲームに力を入れていた同社が、家庭用ゲーム機用ソフトで同規模でないにせよ、相応のヒットを狙えるような有力タイトルを2021年度にも出せるかです(特に得意のスポーツゲーム以外で)。また力を入れているeスポーツには、収益面に加え、ゲーム業界の地位向上、イメージアップという意味でも重要と言えそうです。

◇業績悪化の運営系の事業は

 施設運営系などの事業を持つ、「収益の多様化」が収益減につながり、逆に家庭用ゲーム機用ソフトやスマホゲームの事業ウエイトが高い、モノカルチャー的な企業の方が収益を伸ばしたのが皮肉です。

 新型コロナの影響はまだ続きそうで、さらにアフターコロナへ向けての準備も重要でしょう。そしてコロナで苦しむ運営系の事業をどうするのか。今後の各社のかじ取りに注目したいところです。