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LiSAさんの10年前 アニメ「Angel Beats!」の「歌い手」のインパクト

河村鳴紘サブカル専門ライター
LiSAさんの公式サイト

 「第62回日本レコード大賞」の大賞に、LiSAさんが歌う「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」が選ばれました。ツイッターでは「LiSAさん」がトレンド入りし、アニメファンから祝福の声が寄せられています。

◇70歳代にも知名度浸透 劇場版効果

 「社会現象だから当然」という声、アニソンが権威あるレコ大を制したインパクトをたたえる声もある一方で、アニソンがレコ大を取ったことについて消極的なコメント、「誰が歌っても賞を取っていた」という厳しい書き込みも見ました。ただこうした声がある中だからこそ、大賞の価値はあると言えます。

 今の若い人は実感が薄く、空気も薄れつつありますが、サブカル業界を取材しても、アニメやゲームなどが一段低く見られている空気が依然として存在しています。世界的に人気を博している日本のアニメ、アニソンも、国内の評価でいえばそれより低いわけです。

 先日、70歳代の方から「LiSAという人は、『鬼滅の刃』で有名になったの?」と質問されました。アニメファンならご存じの通り、テレビアニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」の前から、LiSAさんは多くのアニソンを担当していました。だから答えは「もともと有名でした」なのですが、アニメに興味のない人からすると仕方のないところでしょう。去年、NHK紅白歌合戦に出場したときに「紅蓮華」が流れると、ネットは大盛り上がりでしたが、アニメに興味のない人は「?」的な反応でした。

 しかし、今では70歳の方のせりふからLiSAさんの名前が出るように、一般層に知名度が広がっています。レコ大については、例年ネットではなかなか厳しい言葉が飛び交っていましたが、今回のLiSAさんの受賞に関しては、社会的現象という実績もあるので、批判のトーンは明らかに少ないと言えます。

◇10年前から実力折り紙付き

 LiSAさんのレコ大受賞の決定時、「鬼滅の刃」ではない10年前のアニメを思い出しました。2010年4~6月に放送されたアニメ「Angel Beats!(エンジェルビーツ)」です。なお同作は、同時期に放送された中で最も人気を集めた(とされる)アニメで、歌がポイントになっています。

アニメ「Angel Beats!」公式サイト
アニメ「Angel Beats!」公式サイト

 公式のプロフィールにもある通り、LiSAさんはアニメの中に登場する劇中バンド「Girls Dead Monster(ガールズ・デッド・モンスター=通称ガルデモ)」の2代目ボーカルのユイの「歌い手」を担当したところから活動が始まっています。アニメでユイの声は基本的に人気声優の喜多村英梨さんが担当しますが、歌唱シーンはLiSAさんになるのですね。2人で1役を演じるというパターンで、当時驚いたことを覚えています。

 当時、アニメをリアルタイムで視聴していたのですが、このシステムを知ったとき「わざわざ2人で1役にするのか」と最初は思ったわけです。もちろん、曲を聞いたらそんなことはこれっぽっちも思わなかったわけですが……。実際、ガルデモ名義のシングルやアルバムも良く売れ、インパクトはありました。

 ちなみに「Angel Beats!」は、クリエーターのこだわりが相当強く制作に難航。そんな中でLiSAさんは、その厳しい眼に耐えて絶賛されており、実力が折り紙付きだったことが分かります。

【参考】アニメ「Angel Beats!」開発日記

【参考】アニメ「Angel Beats!」リレーコラム

 また当時、アニソンの売れ行きについて毎週のように大手販売店に取材していましたが、LiSAさんの名前が頻繁に出てくるようになり、担当の方から「この子は要注目!」と重ねて言われました。ちなみに同時期に「ボカロPのハチ(今の米津玄師さんのこと)もすごい。こちらも要チェックね!」と強く言われました。まさか2人とも日本を制するまで駆け上がるとは当時は想像しませんでしたが……。

 「Angel Beats!」の後、LiSAさんはアニメ「Fate/Zero」や「ソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生」など、アニプレックスが制作した人気アニメの主題歌を担当します。

 ……とはいえ、いくらアニメのタイトルを力説しても、アニメを見ない人には作品を知らないから「?」になります。そこで分からない方には「日本武道館や横浜アリーナなどでライブをして、観客が埋まるレベルの歌手」と説明すると「それはすごい」と納得してくれる次第です。

 第71回NHK紅白歌合戦で「鬼滅の刃」紅白SPメドレーを披露する予定のLiSAさんですが、ぜひアニソンの魅力を多くの人に伝えてほしいと思う次第です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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