PS5生産に“全集中”も品不足なぜ 初週出荷12万台は多い?少ない?

ソニーの新型ゲーム機「PS5」=筆者撮影

 ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の日本の初週販売数(12~15日、4日間)が約12万台だったことが明らかになりました。初年度の世界出荷数は「760万台以上」で“全集中”の生産を展開していますが、品不足になっています。なぜでしょうか。

◇日本で品不足なぜ

 日本の初週販売数の「12万台」の評価は難しいところです。5万円以上の高額商品であれば普通なら「多い」といえますが、ゲーム機は生産の難しい精密機械の上に発売開始から一気に売れる傾向があります。それを踏まえると「少ない」になります。PS2は、2日間で国内約100万台をほぼ売り切り、当時では珍しいネット販売をすると当選倍率が100倍を超え、当時は話題になりました。

 PS3(2006年発売)の初週販売は約9万台でPS5はそれを上回りましたが、PS4(2014年発売)の約32万台と比べるとほぼ3分の1です。PS2は日本市場最優先の時代でしたし、PS4は米国の発売から3カ月遅れなので、今とは単純比較できませんが、潤沢とはいえないのは一目瞭然です。

 ちなみにPS5の初回出荷数は公表されていませんが、調べる限りでは相応にそろえた様子がうかがえました。そもそもPS4の発売初期、欧米は半年以上品不足になった反省に加え、今回のPS5の前評判も高かったので、生産は最初から全力……“全集中”になっています。しかしPS5は、ECサイトではいつも売り切れ状態で、リアルの店に売っていません。予約すらも厳しいのが現状です。

 「なぜ数が少ないのか」と言えば、発売日から一気に売れる傾向があるのに加え、世界規模で売れる上に、世界同時期発売になると各地域に配分する必要があります。特に年末年始シーズンはゲームの売り時なので、さらに品不足は加速する傾向にあるわけです。

◇ライバルとの対決で北米優先

 そしてPS5は日本よりも欧米の方が売れる商材になります。昔は日本で売れていたから最優先の市場でしたか、今は世界各地で売れるのに加え、無料のスマホゲームの普及によって、「暇つぶし」ツールとしてのゲーム機の購入者が減っています。わざわざ高額なゲーム機を買わないという日本の消費者が増えたのですね。そのため相対的に日本市場の地位が低下したわけです。PS2の時代は国内で約2200万台を販売しましたが、PS4はPS4 Proを含めても約900万台にとどまっています。

 最優先は巨大市場の北米で、次が欧州でしょう。特に米国の売れ行きは、最も注目を集めます。何より、ライバルであるマイクロソフトの新型ゲーム機「Xbox Series X」との戦いで、出荷数や販売数で「ライバルより売れた」という事実が今後数年に及ぶ競争で大きな意味を持ちます。ビジネスの視点で言えば、現段階ではまず北米に1台でも多く供給したいところでしょう。どうしても日本は後回しにならざるを得ないのです。

 ただし、PS5の生産に関して、ソニーは現段階で全力なのは明らかです。7年前に発売されたPS4は当初、初年度の世界出荷数を500万台に設定していました。ところが欧米(日本ではない)での旺盛な需要を受けて、最終的に760万台を出荷しました。計画の1.5倍という大幅な上積みです。なぜ固く見積もったのかといえば、当時のPS3の売れ行きが苦戦したからです。PS4の商品発表翌日の2013年2月22日、朝日新聞の記事で、ソニーの平井一夫社長(当時)が「昔のように一つのゲーム機で1億台を売るのは難しい」というコメントが掲載されたぐらい、ゲーム事業を厳しく見ていたのです。

PS3は発売当初の約6万円という価格も響き、出足でWiiに付けられた差を埋められずにいる。PS4ではロケットスタートを狙うが、すでに「昔のように一つのゲーム機で1億台を売るのは難しい」(平井社長)と弱音も漏れる。

出典:朝日新聞(2013年02月22日掲載、東京朝刊8ページ1経済)

 とはいえ結果として、PS4は1億台以上を売り、PS4の発売から半年後の決算発表で、ソニーは実質的な勝利宣言をしましたが、欧米の品不足は半年以上続いています。そして今回のPS5では最初から出荷数を「760万台以上」と明言しています。増産も含めて全力で勝負をかけているのです。それでも不足しているほど人気なのですね。課題は、どこまで出荷数を上積みできるでしょう。上積みされたら、その分各地域……日本市場の割り当ても増えるわけです。

◇週あたりの出荷数予想は…

 初週販売数が出たことで、参考レベルですが、週あたりの出荷数予想が可能になりました。

 PS5の初年度(2021年3月末まで)の世界出荷数は「760万台以上」で、現行機のPS4の日本の推定シェアは1割弱ですから、そのまま当てはめると、日本の割り当て予想は70万台といったところでしょう。

 そこから初週販売数(12万台、完売状態)を引くと、「58万台」になります。それを来年3月末までの18週間で割ると、1週間当たり約3万台となります。月だと12万~15万台のペースですね。

 またPS4のとき、発売翌月の3月ごろには店頭に商品が陳列されていましたので、そのタイミングでの国内販売数は40万台前後と推定できます。PS5ではその数字は、来年1月下旬ごろに達する計算になります。

 またPS5の通常版は税込みで5万5000円弱の高額商品で、専用ソフトがそろうのもこれからなので、慌てて買うほどではありません。一方で、PS4用ソフトとの互換性がありますし、新型コロナウイルスの感染が再拡大する兆候もありますから、需要が上ブレする要素もあります。現段階の情報を整理すると、PS4よりも購入を希望する数が極端に増えるとは考えづらいところです。仮に「50万台前後」と見ても、来年2月には達する計算です。幸いにも日本は欧米ほどの市場はないので、欧米より落ち着くのは早いと予想しますが、果たしてどうなるでしょうか。

◇高額転売どうなる?

 品不足の原因の一つになっているのは、近年特に問題になっている高額転売です。業者だけでなく、フリーマーケット(フリマ)アプリなどの普及で、個人も買い手を見つけるのが簡単になったためでしょう。今回は販売店も購入履歴を利用するなど転売対策を取ったようですが、それでも多くのPS5がフリマアプリで転売されて問題になっています。

【参考】PS5高額転売問題 SIEの意見表明にどう対応?

 PS5が発売初日(正確には前日)から高額転売されている問題で、発売元のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がフリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリ社に対して「意見表明」として転売防止の理解と協力を呼びかけています。メルカリ社は、権利者から申し立てがあれば削除を検討することをメディア(ITmedia)の取材に対して明かしていました。

 もちろん「検討したが転売に対応しない」という可能性もあるわけですが、もしここで限定的でも何らかの対策を取れば、ガラリと変わる可能性もあります。さまざまなフリマアプリにも影響はあるでしょうし、対策を受けての転売相場が一気に崩れることを期待したいところです。

 しかし、転売をする人はゼロにはならないでしょう。根本的には、PS5の供給(出荷)が増えて、需要が満たされるのを待つことになります。遊びたいと思えるPS5の専用ソフトが出るまで様子見をするのも一つの選択です。また、高額商品であるPS5の転売には手を出さないという消費者の心がけも重要になります。

 PS5の購入を希望するゲーマーには、我慢の時が続くという結論になるのですが、PS2やPSPでも我慢をしていたことを考えると、恒例の“行事”ともいえそうです。

<補足>出荷数と販売数の違い

 ゲームの売れ行きを示す数字には、「販売数」と「出荷数」があります。

 販売数(セルスルー)は、メーカー以外の第三者が調査し、実際にユーザーの手元にわたった実売数で、かつ推計数となります。今回のデータは、ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWA Game Linkageが全国約3300の販売店と協力して算出したものです。

 出荷数(セルイン)は、店頭に商品が陳列される数で、メーカーが発表するのはこちらになります。PS5の初年度(2021年3月)の世界出荷計画数の「760万台以上」もこの数字にあたります。PS5は現時点には完売状態で店頭には並ばないほどなので、出荷数と販売数が近い状況といえます。