ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション5」の本体デザインを公開し、2タイプの商品を発表しました。従来のゲーム機と同じディスクドライブを装備した「スタンダードモデル」と、ディスクドライブがない「デジタル・エディション」です。

◇大胆なコストカット 中古ゲーム対策にも

 デジタル・エディションは、ディスクドライブがないためパッケージのゲームソフトが使えません。従ってダウンロード販売になります。ドライブに使うコストがカットできるので、PS5の最低価格は下がると予想されます。PS5の発表時のスペックを見て、4~5万円で出せるの?と疑問視していましたから、この大胆なコストカットの手法は見事です。

 一方で、ダウンロードしたソフトは、消費者が購入したソフトを中古市場に売却できないと見るのが順当です。ダウンロードソフトの価格は、販売コストも抑えられることから、パッケージソフトよりも安価に設定されるのが普通です。

 学生は特にそうですが、ソフトのお金を捻出するため、中古ゲームは手段として活用されています。ゲームをクリアした後に中古ゲーム店で売却し、次の新作ソフトの原資にする人にとっては、ダウンロード版は歓迎できないのは、その通りでしょう。多くのゲームを遊び、いかに安く遊ぶかの効率から言えば、デジタル・エディションは割高になります。

 そういう意味から見れば、デジタル・エディションは、中古ゲーム対策になっており、中古市場に影響を与える“刺客”という見方も成り立ちます。しかし、中古市場がなくなるとは考えづらいところです。ファミコンなど多くのゲーム機はレトロゲームとして、いまだに売買されています。一定規模の消費者が求める以上、その市場が消えることはありません。

◇ダウンロード販売の比率は増加の流れ

 とはいえ、中古ゲームがメーカーの敵とも限りません。玩具店などゲームを扱う店が減る中で、ゲーム好きの子供の情報拠点になる中古ゲーム店には、価値があるのもまた確かです。そして、PS5が2種類から選べる以上、中古ゲームの利用を考える人はスタンダードモデルを選択するでしょう。

 もちろんメーカーの本音としては、商品の欠品がなく、利益率の高いダウンロードソフトがメインに売れてほしいというのは、指摘するまでもありません。期間限定の値下げをしたり、価格を一手にコントロールできる面もあります。店頭で売ってないインディーズゲームをダウンロード販売していますし、中には100円でセールをすることもあります。既に中古ゲーム市場への“刺客”は放たれていると言っても良いかもしれません。

 そもそも、新型コロナウイルスの感染拡大で、ダウンロードのゲーム販売が伸びている実績があります。感染前、ゲームソフト全体の売り上げに対するダウンロード販売の比率は2~3割でした。しかし今年の1~3月の各ゲーム会社の決算を見ると5割前後、中には7割というケースもありました。多少の揺り戻しはあるかもしれませんが、ダウンロード販売に慣れてしまえば、そのまま定着する可能性も十分にあります。

◇中古ゲーム裁判の敗訴をバネに市場拡大

 2002年に判決の出た中古ゲーム裁判を取材した経験から言えば、裁判当時、ゲーム会社は中古ゲーム市場へ強い嫌悪感を持っていたのは確かで、だからこそ裁判を起こしたわけです。その論理は、自分たちが作ったゲームなのに、中古で売買されても直接の利益にならない……というものでした。結果として、ゲーム会社は裁判に敗れ、中古ゲームは合法となりました。

 しかし、その後ゲーム会社は、ネット認証の必要なオンラインゲームを推進したり、追加コンテンツの配信、アイテムコードの配信を駆使して、中古市場にゲームソフトが流れない工夫をします。そして裁判で勝ったはずのゲーム販売店は苦戦し、それを埋めるかのようにオンライン販売が伸びていきます。

 スマホゲームの流れも、ゲーム機を売るハードメーカーはさておき、ソフトメーカーにとっては、ソフトが中古に流れないから、歓迎できたでしょう。その結果、ゲーム市場は世界で15兆円(2019年)を超える巨大市場に成長しました。中古ゲーム裁判で負けたことが、業界の成長につながっているようにみえるのが興味深いところでもあります。

 2種類のPS5のうち、パッケージ派とダウンロード派、どちらに軍配があがるのか。注目したいところです。