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人員削減なのに売上高が過去最高の4兆円超え ソニーのゲーム事業で強いのは…

河村鳴紘サブカル専門ライター
(写真:ロイター/アフロ)

 ソニーグループの2024年3月期(2023年度)の連結決算が発表され、ゲーム事業(ゲーム&ネットワークサービス分野)の売上高が4兆2677億円となりました。ゲーム事業で4兆円の“大台”を突破するのは初めてで、つまり過去最高です。

 「数字が大きすぎて分からない」というのであれば、任天堂の売上高(1兆6718億円)の約2.5倍の金額……と言われると、イメージがつかめるでしょうか。まあ、期初の計画通りでもありますし、本業で効率よく稼ぐ指標「営業利益率」では、任天堂の方が圧倒的に上です。それでも10年前の売上高(約1兆円)から、ここまで伸びたことに驚かされます。

 ですが、ネットでは何かとPS5に対する批判が目立ちます。もちろん、2020年の発売から長期間にわたって高額転売にさらされたこと、さらに値上げなどに不満があるのでしょう。

 同時に、日本でのパッケージゲームソフトの販売ランキングを見ると、上位はニンテンドースイッチ用ソフトで埋め尽くされます。これだけを見たら「PS5のゲームがない=全然売れてない」となるでしょう。

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 となると、ソニーのゲーム事業の決算との整合性が取れず、不思議に思う人もいるでしょう。そこでソニーのゲーム事業の売上高(4兆2700億円)の内訳を見てみます。なお、カッコ内は前年度の数字です。

・ハードウェア 1兆2100億円(前年度1兆1200億円)

・ソフトウェア 2兆2200億円(1兆8000億円)

・ネットワーク 5500億円(4600億円)

・その他    2900億円(2700億円)

 「ハードウェア」はゲーム機(主にPS5本体)、「ネットワーク」は有料ネットワークサービスの「プレイステーションプラス」の収益、「その他」は、PSVRなど周辺機器になります。前年度と比べたとき、金額が大きく、最も伸びたのはソフトウェア(4000億円以上のプラス)です。

 もう少し知るために、ソフトウェアの売上高(2兆2200億円)の内訳も並べてみましょう。

パッケージソフト 1800億円(1900億円)

デジタルソフト 8500億円(6600億円)

アドオンコンテンツ 1兆800億円(8600億円)

その他のソフト 1100億円(700億円)

 デジタルソフトとは、ダウンロードでの販売のこと。アドオンコンテンツとは、ゲーム内通貨やゲーム内の課金アイテム、拡張パッケージなどです。アドオンコンテンツと、デジタルソフトの売上高を合わせると、ソフト全体の9割近く。つまり、好調の原動力は「デジタル」というわけです。

 そして話をややこしくするのは、このデジタルの好調ぶりは、パッケージゲームのランキングのように、ゲームファンの目に見えづらいことです。何せ、ソニーのゲーム事業で、パッケージソフトの売上高は、ソフトウェア全体の10%に届いていません。

 さらに言えば、決算では出ていませんが、日本のシェアは1割未満で、欧米を主戦場にしています。実際ソフトも、デザインを含めて欧米好みではあります。人間はイメージに振り回される面があり、日本市場から見た場合、目に見えるもの、自分の分かる範囲で判断すれば、「PS5は売れてない」となるのですが、世界で見ると違うことが、この決算からもハッキリ出ているわけです。

 そして今回は円安も追い風になりました。ソニーグループの決算でも、ゲーム事業の売上高で、為替の影響で約2800億円のプラスとありました。しかし新型コロナウイルスの巣ごもり効果が薄まるなど、ゲーム業界には逆風の要素もありますから、一概にすべてがプラスともいえません。そうした中での、売上高4兆円突破となるわけですね。

 ともあれ、パッケージと、デジタルの売れ方に、ここまでの差があると、メディア泣かせです。具体的に言えば、パッケージゲームのランキングを、記事で引用するときに、それが適当なのか悩むことになります。もちろんゲーム機本体のデータは変わらず役立つのですが……。

 そして、忘れている方もいるかもしれませんが、ソニーのゲーム事業は人員削減を打ち出しています。もちろん「利益率が良くない」といえば、その通りなのですが、考えさせられるものがありますね。

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 2025年3月期(2024年度)のゲーム事業の予想ですが、売上高は4兆2000億円、営業利益は3100億円です。この数字を上回ることができるか注目です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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