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FF7 リメーク批判ものともせず3日間で350万本出荷 人気の理由は

河村鳴紘サブカル専門ライター
「ファイナルファンタジー7リメイク」のゲーム画面

 ゲーム史に残る名作「ファイナルファンタジー(FF)7」のCGやシステムを一新した「FF7リメイク」(PS4)が、スクウェア・エニックスから世界同時に発売されました。出荷数は3日間で350万本と好調なスタートを切りました。発売前は、名作の大幅なリメークに加え、今回1回では完結しない分作方式、1万円近い強気の価格設定などに批判も少なくありませんでした。23年たっても陰らない人気の理由を探ります。

◇リメークゲームとしては驚異的売り上げ

 FF7の舞台は、生命エネルギーを資源に発展した超近代都市です。青年クラウドは、巨大企業「神羅カンパニー」に抵抗する組織の傭兵となり、自身がかつて所属していた神羅の施設へ潜入する……というストーリーです。

 リメーク版の出荷数350万本のうち、ダウンロード版の比率について、スクウェア・エニックスは「4~5割」と明かしており、ダウンロード版の比率が高いのが特徴です。23年前に発売され、結末(ネタ)が分かっているリメークゲームとしては驚異的な売れ行きで、FF7の人気の高さを改めて証明しました。ネットの反応を見ると、遊んだ人の反応は非常に好意的なものが多いようです。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の流れもありますから、さらにどこまで数字を伸ばせるか、期待できそうです。

◇名作のPS版 常識外の決断で大成功

 「FF7リメイク」の原作となるPS版「FF7」は1997年に発売されました。RPGの王道とされる中世ファンタジー世界ではなく、近未来のサイバー的な世界観も異質でした。そこに当時最先端の3DCGを駆使した映画的な演出手法と合わさって、インパクト抜群でした。

 数あるFFシリーズの中でも、FF7の人気は高いのですが、それはソフトの誕生がドラマチックであることと無縁ではありません。そもそもスーパーファミコンで1994年に発売された「FF6」は、200万本以上を売ったヒット作で、その段階で美しいドット画のCGは既に業界トップでした。

 しかし、スクウェア(現スクウェア・エニックス)は、その上を目指し、FFのフル3DCG化を実現するため、データ容量の大きいCD-ROMが使える初代PSで出す選択をしました。当時のゲーム業界の“盟主”だった任天堂を袖にする移籍は、ゲーム業界に衝撃を与えました。余談ですが、この“裏切り”の代償は大きく、後々スクウェアの経営を苦しめることになるのですが、詳しい話は別の機会にしましょう。

 ともあれ、当時のスクウェア社員にそのときの社内の空気感について聞いたことがあるのですが、「不安でしたよ」と苦笑いしていました。当時の任天堂は、今以上の存在感でしたから当然の答えです。

 常識外と言われた決断は、結論から言えば大成功でした。映画的な演出に当時のゲームファンは狂喜し、ライバル会社は「このゲームのグラフィックと戦うことになるのか」と震撼しました。PS版FF7は国内だけで300万本以上売れ、ゲーム機(PS)も一気に普及しました。FF7のヒットは、ソフトメーカーの地位を飛躍的に高めたのです。まさに伝説が生まれた瞬間でした。

◇ブランドの陰りを食い止める

 今回の「FF7リメイク」は、ただのリメークではなく、FFシリーズの今後の運命を握っていました。FFの“代名詞”と言えば「美麗なグラフィック」ですが、FF7の登場に刺激されて以降、各メーカーのCGは大きく進歩し、時代を追うにつれて以前ほどの決定的な差は感じられなくなりつつあります。それはFFシリーズの優位性を弱める一面もありました。

 それを示すため、FFシリーズ本編の国内の売れ行きを比べてみましょう。PS版FF7は、国内で約328万本(ファミ通調べ、以下同じ)を売りましたが、ハードがPS2に変わった「FF10」は約233万本、「FF12」も232万本に留まりました。そしてPS3で出た「FF13」は約191万本で、PS4の「FF15」は104万本に落ち込んでいます。ダウンロードの普及を加味しても、落ちすぎます。FF15は、さまざまなプラットフォームで世界展開することで900万本以上を出荷していますが、国内の販売数を見る限りでは、FFのブランドの陰りは明らかでした。

 それゆえに「FF7リメイク」の強気の価格、分作展開への懸念、開発に期間がかかりすぎる……という声があったのは確かです。しかも、いまだに何部作で完結するのかも発表されていませんから、印象は良くないと言えます。しかしわずか3日間で出荷350万本という事実は大きく、遊んだ人の高い評価に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛を織り込めば、今後の売れ行きにも期待できます。日本国内で既に100万本を出荷しており、今後の上乗せの見通しを織り込むと、日本でのブランドの陰りを食い止めることに成功したと言えるでしょう。

◇PS4でより輝くキャラ ギャルゲーの“賛辞”も

 FF7の魅力とは何でしょうか、PS版で言えば、(当時としては)高品質のCG、ファンが議論したくなる複雑なストーリー、システム、個々のキャラクターの魅力に加え、ゲームとして革新的なことに挑み、未知の世界を見せたゲームとしての総合力でしょう。

 しかしPS4版は、リメークだけにネタが割れていて、新作よりインパクトに欠けます。そんな中で実際にプレーして驚きを感じたのは、PS版以上にキャラクターの存在感があることでした。主人公のクラウドはもちろん、宿敵・セフィロス、ヒロインのエアリスとティファは、20年前のキャラクターとは思えませんでした。

 これもプレーすれば一目瞭然ですが、特にエアリスとティファの存在感は、突出しています。人気ゲーム「ドラゴンクエスト5」のビアンカ(幼なじみ派)とフローラ(お嬢様派)といった感じすらしました。プレーヤーの中には、二人のヒロインの輝きを見て「ギャルゲー」に例える“賛辞”もあったのですが、際立つキャラクターの魅力を見事に言い当てています。実際、ゲームではグラビア撮影のようにスクリーンショットを何度も撮ってしまいました。ヒロインとクラウドとのやり取りに一喜一憂し、ニヤニヤしてしまいました。とにかく演出面での出来がすごいのです。

 先ほど「FFは以前のようなグラフィックの優位性が失われた」と言ったのですが、「FF7リメイク」では、二人のヒロインにドキドキしっぱなしでしたから、グラフィックで魅せる、かつてのFFの底力を見せつけられた形です。

 映像の美しさは、ゲームの面白さに関係ないという業界の“格言”のはその通りです。ただしゲームが面白くて、映像の美しさを兼備していれば、ただ面白いゲームよりも、そちらの方が上なのは言うまでもないでしょう。

 PS4版は、ファンの心の中で美化されたPS版の思い出を壊すことなく、最新の技術を用いて、見事に再現しました。今回は、ゲームのボリュームを増やすためもあってか、クエスト的な要素が追加されています。意地悪に言えば、蛇足ともいえるのですが、プレーすると二人のヒロインと過ごす時間が増えたことで、個々にスポットがしっかり当たり、PS版より人物が深く描かれているのです。

 さらに、ゲームをプレーすると、PS版とPS4版で物語の展開に結構な違いがあることも驚きました。ネタバレになるので詳細は触れませんが、それが議論になっていて、その仕掛けを続編でどう着地させるのかも楽しみです。つまり、PS4版はPS版を単純にリメークしただけの作品ではない……という片鱗も見えました。この展開を見ると、PS版で多くのプレーヤーが嘆いたあの“悲劇”が回避できるのでは……という思いも、ちらついてきます。そう思わせるのも作戦なのかもしれませんが、細部にわたって計算されている印象を持ちました。

 まとめると人気の理由は、もともと完成度の高いゲームをベースに、キャラクターの魅力を高め、グラフィックなどの演出を細部にわたってしっかりパワーアップさせたことでした。

◇課題は続編の早期発売

 課題は、一刻も早い次回作の発売です。相応の時間とコストをかけて作っている証とも言えますが、次回作が遅れるほど、プレーヤーの熱はさめるでしょう。その要求は「FF7リメイク」シリーズが完結するまで続くでしょう。ただし、質量を維持できるのであれば、辛抱強く待つファンは案外多いかもしれません。それほどまでに、出来は良かったといえます。

 今作の出荷数がどこまで伸びるのか、そして次回作も売れるのか。ビジネスモデルの成否も含めて、「FF7リメイク」はファンと業界関係者の注目を引き続き集めそうです。

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CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI

LOGO ILLUSTRATION: (C) 1997 YOSHITAKA AMANO

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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