「ドラクエ」手厚く「サクラ大戦」はシンプル あいまいなコピーライト

=著者撮影

 ゲームや映画、アニメなどの記事では、画像と共に「(C)~」で始まるコピーライトを見かけます。このコピーライト、関係者はよく見ている……というのはご存知でしょうか? 

 コピーライトは、著作権のことです。記事中に著作物の画像を使う場合、入れるのが慣例になっています。しかしコピーライトの記載は、法的には必要ないのです。

 昔、あるゲームの記事を書いたときに担当者から「画像を使うとき、コピーライトの記載は法的にも必須」とすごい剣幕で言われたので、根拠を聞いたことがあります。その解答はなかったので調べるとともに、弁護士に問い合わせると「コピーライトの記載は法的なものではない」という回答でした。

 ただコピーライトは著作権のアピールでもありますし、著作権者からの要請です。写真を貸与する条件になっているわけですし、使う以上は承諾するのが慣例となっているわけです。またコピーライトが長すぎて困る場合、「紙面スペースがないので許して」「短縮バージョンはない?」と都度交渉し、メーカー側も事情を勘案してくれました。つまり融通が利くという証拠ですね。

 そして著作権者の要請だからと言って、何でも「イエス」と言うと妙なことになります。別件で、記事中で触れた作品についての問い合わせがあり、担当者から「ゲーム画面の写真を使ってなくても、記事に書いたのだからコピーライトを付けて」と言われたことがありました。また、私が撮影した景観の写真でも「作品が写り込んでいる場合はコピーライトを付けて」と主張されたケースもありました。

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 世の中には様々な著作物がありますが、せっかくですからゲームを題材にコピーライトの表記を見てみましょう。実はこの表記で作品の内情、関係者の力関係が浮かんできます。3月発売予定のゲーム「ファイナルファンタジー7リメイク」だと以下のような表記になっています。

(C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI

LOGO ILLUSTRATION: (C) 1997 YOSHITAKA AMANO

 まず最初にゲーム発売元のスクウェア・エニックスの社名。そしてキャラクターデザインを担当した野村哲也さんや、ロゴを担当した画家の天野喜孝さんらの名前が表記されています。

 続いて「ドラゴンクエストウォーク」の場合、時期によっては微妙に変わっているのですが、映像や音楽を含むバージョンは以下の通りになります。

(C)2019 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

(C)SUGIYAMA KOBO

『ドラゴンクエストウォーク』は、Google Maps Platform を使用しています

 最初に来るのは、ゲームクリエーターの堀井雄二さんの会社アーマープロジェクト。続いて鳥山明さんのバードスタジオ。そしてゲーム配信元のスクウェア・エニックス。ゲームの音楽を手掛けるすぎやまこういちさんのスギヤマ工房もありますね。コロプラの表記はありませんが、一方でグーグルマップのことは表記されていたりします。

 ただこの二つを比べると妙なことがあります。FFのコピーライトには、シリーズの“生みの親”である坂口博信さんの名前がありません。PS版FF7を作ったときは坂口さんはスクウェア(現スクウェア・エニックス)に所属していたからかもしれませんが、そうなると野村さんらキャラデザ担当者の名前が記されていることが不思議です。この点をスクウェア・エニックスに問い合わせてみましたが、明確な回答は得られませんでした。

 ちなみにドラクエのコピーライトの表記は、他のゲームと比べて長い部類になります。大半のゲームのコピーライトは、メーカーの名前だけのものが多く、開発会社の社名すらも入らないことも普通にあります。

 

 次の事例です。ゲーム「進撃の巨人2-Final Battle-」は以下のようになっています。

(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

(C)2018-2019 コーエーテクモゲームス

 マンガの作者名と出版社名と共に、アニメの製作委員会の文字も記載されています。なぜかといえば、マンガではなくアニメを元にゲームを作っているからです。つまりコピーライトを見ると、アニメとマンガのどちらを元にしているかも分かるのです。ほとんどはアニメが元なのですが、中にはマンガを原作にしているケースもあります。

 そして「新サクラ大戦」のコピーライトは以下のように表記されています。

(C)SEGA

 とてもシンプルですね。ところが2005年に発売された「サクラ大戦5」のコピーライトを見ると以下のようになっています。

(C)SEGA, 2005 (C)RED 2005

 数字はゲームが発売された年です。そしてREDとは、広井王子さんが経営していたレッド・エンタテインメントのことで、「サクラ大戦」シリーズを手掛けていました。「新サクラ大戦」で広井さんは監修に加わっていますが、著作権はあくまでセガのみにあることが分かります。そして「新サクラ大戦」のキャラクターデザインは、人気マンガ「BLEACH」の作者・久保帯人さんが担当してます。しかし「FF7リメイク」とは異なり、久保さんの名前はコピーライトにありません。FFやドラクエとは対照的です。

 そして海外のゲームは、コピーライトが長いものが多く、サッカーゲームやレースゲームは特に長くなる傾向にあります。日本のゲームはシンプルなのに、海外ゲームは長い。そして法則があるようでありません。これらの違いは何でしょうか。

 大手ゲーム会社で働き、自らもゲーム会社を経営した経験を持つ、コンテンツ研究家の黒川文雄さんは「コピーライトはあいまいで、クリエーターの力関係もあるし、慣例で記載している部分もあります。そして欧米のコピーライト表記が長いのは、欧米が権利社会で契約に非常に厳しいのが影響しています。日本は、ゲームの権利帰属を巡って裁判で争うようなケースは現在、ほぼ見当たりませんから、緩やかなのでしょう」と説明してくれました。

 逆に言えば、権利意識の意識がより高まれば、コピーライトの表記が長くなる可能性があるということですね。ビジネスは何事もそうですが、リスクを取った出資者(メーカー)の権利は第一ですが、現実に作ったクリエーターの権利は完全にゼロか?と言われると、見解は割れるでしょう。

 もちろん原則一人で作品を作り上げるマンガとは違って、ゲームは集団作業の著作物ですから単純比較はできません。しかし、ゲームはさまざまなバリエーションがあります。ゲームによっては、マンガのように特定クリエーターの哲学が色濃く反映されたものがありますから、そのクリエーターを外して続編を出しても、受け取るユーザーがそれに納得しないこともあるわけです。そしてこの手の著作権の議論は、ゲーム会社が触れられたくない部分だったりします。今はSNSで個人が簡単に情報を発信できる時代なので、当事者が内情を明かす可能性もありますし、中身次第ではユーザーを敵に回すこともありえますから、話がややこしくなります。

【解説】<黒川文雄のサブカル黙示録>ゲームの著作権問題 退職クリエーターに念書強要も

 ただ文字が並んでいるだけに見えるコピーライトですが、文字の並ぶ順番だけを見ても、関係者の思惑や力関係などを感じられずにはいられません。