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”森保ジャパン”23人のラストピースを個性と武器から考える。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

11月にアジア二次予選、年明けにアジアカップを戦う”森保ジャパン”はこれまで親善試合で6連勝を飾るなど、チーム力を上げてきています。ただ、”第二次・森保ジャパン”として仕上がりのサイクルも早いだけに、ここからメンバーが固定されていくと、3年後のW杯に向けて”先細り”というのは不安要素になります。

そうしたことも踏まえて「今”森保ジャパン”の23人を”国内組”だけで組んだらどうなるのか。」と「”森保ジャパン”元旦のタイ代表戦のメンバーを考える。」というテーマで選考してみましたが、今回は現在のフルメンバーにも無い個人のスペシャリティを基準に、23人のラストピースになりうる個性的なタレントをピックアップします。

チームの武器になることはもちろん、現時点ではA代表の基準に少し足りていなくても、招集されることで伸びる期待値も含まれています。前回の10月シリーズであればドイツ2部のニュルンベルクから追加招集されたMF奥抜侃志のようなイメージで見てもらえれば分かりやすいと思います。

久保藤次郎(名古屋グランパス)

Jリーグで今観ていて一番面白い選手。アウトサイドでボールを持った時の打開力はもちろん、オフでも前に出ていく感覚が独特で、右ウイングバックというポジションにありながら、シャドーのような印象を受けるシーンが多い。J2の藤枝から名古屋に来て間もないので、アベレージの基準で見ればまだまだこれからの選手だが、伊東純也(スタッド・ランス)が甲府から柏に来た当時のようなワクワク感がある。例えばヨーロッパの環境ではなかなか出てこないような型にハマらないタレントなので、さらにフィジカル面などをアップさせていけば、国際的なステージで活躍できる選手になりうる。

山根陸(横浜F・マリノス)

学習能力の高さと臨機応変に状況を見極める目というのが一番のスペシャリティだ。試合ごとに情報と経験をアップデートして、次に生かしていく能力と意識は川崎時代の守田英正(スポルティングCP)を想起させる。トップチームで出始めた当初は軽量型という印象が否めなかったが、岩田智輝(セルティック)や松木玖生(FC東京)などと組んだり、時にはサイドバックも経験しながら、課題意識を持って地道に積み上げている。何か1つの武器で試合を変えられるわけではないが、こぼさずに水を運ぶという仕事に関してはA代表の基準でも高いものがある。大岩剛監督にはなかなか招集されないが、ACLなどでチームを勝利に導く働きができれば、かつての柴崎岳(鹿島アントラーズ)のように、五輪代表を飛び越えてA代表に呼ばれるような飛躍もあり得る。

中野就斗(サンフレッチェ広島)

広島では右ウイングバックのポジションでフィジカル的な強さと推進力を生かしており、4バックであれば攻撃的なサイドバックという位置付けになるかもしれない。ボールを奪ってグイグイと進んでいくパワーというのは代表レベルでも異彩を放てるポテンシャルはある。「今”森保ジャパン”の23人を”国内組”だけで組んだらどうなるのか。」でも選ぼうとして、迷った末に外したが、縦の迫力は毎熊晟矢(セレッソ大阪)にも負けていない。その毎熊がサイドハーフでも起用されるなど、複数ポジションを求める傾向にあって、さらに食い込む余地が出てきたと言える。

三戸舜介(アルビレックス新潟)

パリ五輪世代の”国内組”では細谷真大(柏レイソル)に次ぐ、”A代表経由パリ行き”の可能性があるアタッカーだ。攻撃的なポジションなら、どこでもこなせるセンスは23人というメンバー構成で重要になるが、久保建英(レアル・ソシエダ)など”欧州組”で占められる二列目にも無い武器が、相手ディフェンスに1対1すら許さない機敏性だ。しかも狭いエリアでも躊躇せずに侵入していけるので、相手ディフェンスは揃っていても対応しにくい。シュートに持ち込む積極性も魅力だ。高木善朗の戦線復帰で、新潟でもスタメンが安泰ではないが、逆にこの状況をバネに飛躍してもらいたい。

三竿健斗(ルーヴェン)

移籍した当初はなかなか苦しんでいたようだが、念願のボランチでスタメンに定着すると、多くの日本人を擁するシント=トロイデン戦でアシストなど、4−0の勝利に導く活躍を見せた。鹿島ではセンターバックとして重宝されたが、日本代表や国際舞台で飛躍するには中盤の方が適している。守備ではボールを奪う能力に加えて、跳ね返す能力も中盤では特筆に値する。ロングレンジのキックや機を見た攻め上がりのセンスは備えており、高強度の中でどれだけ精度とクオリティを出せるかという課題を克服していけば、十分に日本代表のボランチ争いに割って入れる選手だ。

紺野和也(アビスパ福岡)

ボールを持たせると本当に怖い左利きの俊英だ。161cmというサイズをむしろ最大限に活かして相手ディフェンスの懐に潜ってくるので、大型な選手であるほど対応に苦しむ傾向が見られる。FC東京でも期待していただけに、福岡に移籍がリリースされた時は正直驚いたが、堅守速攻をベースとする福岡に明確なアクセントを加える存在に。また”重馬場”に強いタイプでもある。存在感の割に3得点3アシストという結果はそのまま課題を表しているが、Jリーグよりも国際舞台の方が輝きを増すかもしれない。

藤本寛也(ジル・ヴィセンテ)

現在の”森保ジャパン”にもいないタイプのタレントで、普通の選手だったら選択しないようなパスで局面をガラリと変えることができる。中央でプレーしながら遠くが見えている選手でもあり、高精度の左足でサイドアタッカーをうまく引き出せるので、伊東純也(スタッド・ランス)や三笘薫(ブライトン)がさらに効果的になりそうだ。現在は10番の役割が定着しているが、元々ボランチの選手でもあり、4ー4ー3であればインサイドハーフでも十分にプレーできる。セットプレーのキッカーも魅力的だ。

大橋祐紀(湘南ベルマーレ)

今シーズンの開幕戦で衝撃のハットトリック。大きな注目を浴びたが、第三節の川崎戦で負傷し、3ヶ月の離脱を余儀なくされた。しかし、相棒的な存在だった町野修斗がドイツ2部のキールに移籍した状況で奮起し、復帰から8ゴールを積み上げるなど、湘南の頼れるエースに。神戸戦でゴールを決めたことはもちろん、前線から持ち前の推進力でグイグイと引っ張り、首位を走るチームを苦しめた。181cmだが、170cm前後の選手のような機敏性とやり切る馬力がJリーグでは突出したものがある。

野澤大志ブランドン(FC東京)

パリ五輪を目指す”大岩ジャパン”のメンバーで、スケール感は鈴木彩艶(シント=トロイデン)にも迫るものがある。若くして岩手で経験を積むなど、国内では厳しい環境で揉まれながら東京の守護神として君臨しており、メンタリティの部分でも期待が持てる。おそらく本格的にA代表を狙うのはパリ五輪後になるが、ここから1、2年で大きく飛躍する可能性も。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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